BUG RICH(バグリッチ)〜バグだらけの日常〜

あーく

第1話 BUG RICH

バグ。コンピュータを操作したときの意図しない動作を指す。


ある日、研究者が現実世界にもバグがあることを発見した。


現在、現実世界でもバグを利用する者が増えてきている。




「おはよう。」


「ハチ!何が『おはよう』よ!学校に遅れるわよ!早くご飯食べてしまいなさい!」


食パンをかじり、時計を見る。


時計の針は7時40分を指している。


ここから小学校まで20分はかかる。


これから歯磨きと着替えもしなければならない。


完全に遅刻だ。


の話だ。


歯磨きを終え、パジャマを着替え、ランドセルを背負う。


「行ってきます。」


「行ってらっしゃい!」


玄関を出ると、すぐ近くの電柱へ向かった。


「今日も頼むぜ。」


学校の方角を指差し、くるりと180°背中を向ける。


そのまま後ろに向かって歩くが、電柱と塀の間にランドセルが挟まってうまく進めない。


「準備オッケー。」


その瞬間、引っかかっていたランドセルが外れ、八はパチンコ玉のように学校めがけて高速で移動し始めた。


脚も動かさず、後ろ向きで移動している。


むしろ本人は涼しい顔をしている。


「ここからが少し難しいんだよな。」


校門を目の前――いや、背後にしたとき、少し体を斜めに傾けた。


やがて校門に当たり、止まってしまった。


「あちゃー、失敗か。学校までは一直線なんだけど、校門は少しずれてるから難しいんだよなー。校門も抜けるつもりだったんだけど、もうちょっと練習がいるな。」


校門の前には生活指導の先生が立っていた。


子供たちからはシドー先生と呼ばれ、慕われている。


うん、慕われている。多分。


「こら!熊田くまだ!バグは校則違反だって言ってるだろ!」


「せんせー、バグじゃありませーん。グリッチでーす。」


グリッチとは、バグを意図的に利用することだ。


バグは意図しないエラーのことであり、グリッチはそのエラーを利用すること、という違いがある。


「屁理屈はいい!あと5分だぞ!早く教室に入れ!」


シドー先生はくるりと向きを変えた。


「あ、先生、そっちは……」


すると、シドー先生は校庭に空いた穴に引っかかって動けなくなってしまった。


「なんでこんなところに穴が!くそ!動けない!」


「そこ引っかかってバグる人多いんですよね。早く直さないからですよ。」


数分後、応援にかけつけた先生たちによってシドー先生は救助された。


この世界はバグが豊富richである。

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