第34話 登校日
登校日
1階に下りると外には当然のことながら自衛隊の軽装甲車が一台止まっていた。
「おはようございます岩田陸尉」
「おはよう宗助君」
「おはようございますお父様」
「おはようございます、じゃあ私は先に行くからな」
「分かった」
父は少しビビッたのか足早にその場を後にする、このマンションからなら駅まで歩いて5分
「すまないね、学校まで送っていこうか?」
「いえまだそこまで時間が無いわけではないので、USBの件ですよね」
「すまないね、そうなんだよ上の方がうるさくてね」
「こちらです」
「有難うこれで予算が通るだろう」
「じゃあ僕はこれで、今日は学校の登校日なので午前中は学校に居ます」
「分かった、何か有ったら連絡するよ」
USBを手渡すと挨拶をして父の後を追う、マンションから駅へはほぼまっすぐに向かうだけでよい、坂も交差点も無く普段の朝の通勤風景だ。
朝8時7分の電車に乗ると俺は三鷹で降りる、父はその先の新宿まで行く予定だという。
電車はさほど混んでは居なかった、宇宙人の襲来後半分の企業がお休みを決めたとラジオやテレビで言っていたのでそのせいではと思った。
従業員の確認や店舗の片付け、新しい事務所への移転などなど仕事は増えたがそこへ向かう社員がどのくらい残っているのかそしてちゃんと会社に出社できるのか。
2時間にも満たない攻撃だったがその傷跡がまだ生々しく残っている。
電車の路線が壊されれば今日の全校集会も無かっただろう、中には校舎を壊された学校も有るのだから。
「父さん又ね」
「おお又な」
俺は電車から降りるとホームを歩く、高校は三鷹駅の北口から徒歩で10分。
歩いていると同じ制服を着た生徒達が同じ方向に歩いていく。
「おい呂方!」オタクに引き込んだ張本人の米田
「おお~米田、久しぶり」
「何だよ怪我したんじゃなかったのか?」
「したよ、それほどひどくなかただけだよ」
「そうかそうか、これでわがオタクサークルは安泰だな」
「おれはそんなサークルに入ったつもりは無いのだが」
「何を言いますやら、君は立派なオタクじゃないですか?」
「まあ入り口は越した気はするが…」
「まあそんなに嫌うなよ、どうせ俺たちと大して違わないだろ」
「おおロボ生きてたか」なんとなくオタク気質な東山
「勝手に殺すなよ!」
「東山、仲間に言う言葉じゃないぞ」
「わり~わり~退院おめでとう」
「おう、有難う」
「退院祝いは無いけどな」
「そんなもの最初から期待してないぜ」
「所でおまえんとこはどうだった?」
「家をつぶされたよ」
「マジか!」
「そっちは?」
「うちは団地だからな、俺の住んでる棟は免れたけど、10棟あるうち1棟が半壊したよ」
「俺んとこは親の会社が壊されたぜ、親父は無事だったけどな」
この3人、気が会う仲間と言って良い、米田に誘われアニメからフィギュアへとのめりこむきっかけになった、そこへ同じアニメのファンだという東山が参加してきたのだ。
「そうだ事故の日限定フィギュアの販売日だったと聞いたのだが」
目ざといやつだ、さすがに俺より早くオタクになったやつは限定フィギュアをちゃんとチェックしていたようだ。
「ああ手に入れたよ」
「マジか!後で見せてくれ」
「それはかまわないが、おまえは買わなかったのか?」
「う そ それはさすがに無理だよ、5万だろ同じ価格でPCかもしくは新型のスマホが手に入るんだ、そんなもの買ったら親にどやされる」
「そこは俺も同意だな、毎月の小遣いもようやく5千円になったばかりだ、俺らには無理だよ」
「でも家を壊されたんじゃ、よくフィギュアが無事だったな」
「ああ奇跡に近い状態だったよ」
学校への道を歩きながらそんな話で盛り上がる、クラスメイトと話しているとつい先日まで俺の身の回りに起こったことが嘘のように思えてくるが。
何とかこの日までに体の動作を司るモジュールの調整が間に合ったのが幸いだった。
「お 学校は無事だったんだな」
「無事じゃなきゃ登校日なんて作んないだろ」
「確かにそうだな」
校門には先生が数人立っていて生徒達を見守っている、都立三乃鷹高校は一応進学校であり割と偏差値の高い学校でもある。
毎年数人は東大にも進学する、ちなみに俺は6大学とまでいかかないけど、そのすぐ下ぐらいの大学を狙っていたりした。
まだ高校2年なので最終的に何処へ行くかは決まってはいないが、できれば父のようなエレクトロニクス関係の会社へ就職できるような大学へ進学したいと思っていたのだが、そうすると理工学部のある大学と言う事になり、結構ハードルは高くなるだろう。
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