第3話

 ぼくは牧人と言います、現在32歳のニートで引きこもりです。これは私が10年以上前の学生の頃に経験した恐怖の心霊体験です。当時、僕はある大学の理工学部に通っていましたが、2年生だった夏休みのある日に突然教授から電話がありました。

「君の研究テーマについて論文を書かなければいけないのだが、君の研究している内容には倫理規定があってね。」

「え? そんなものありました?」

「まあ普通はないんだけどね。しかし、研究というのは倫理的な問題と常に隣り合わせなんだよ。」

「そうなんですか。じゃあ仕方ないですね。で、どうすればいいですか?」

「そうだね。君の専攻分野である機械工学系では倫理規定に関する規定があるだろうけど、他の学問領域だとそういうのはあまりなくてね。まあでも、倫理規定に違反したってことで懲戒処分になることはないと思うよ。ただ、研究費の申請が出来なくなるくらいかな。」「ああ、そういえば僕のところもそうでした。というわけで、さっき言ったように、論文を書くためにその日一日だけ協力してくれませんか?」

「わかった。ところで君は今どこにいるんだい?」

「大学近くのアパートです。」

「じゃあ、そこに行ってもいいかい?」

「はい、大丈夫ですよ。」

というわけで、教授は僕の部屋までやってきたのですが……ここでちょっと気になったことがあったので、教授に聞いてみました。

「あのー、今日は何の実験をするんでしょう?」

「ああ、それについては私にもわからないんだ。これから実験する場所に行くことになっているんだよ。」

「え!? なんですかそれ! 危なくないですか!」

「まあまあ、落ち着いて。ほら、もう着いたぞ。」

そこは、何の変哲もないワンルームマンションの一室でした。僕が住んでいるこのアパートは、1Kで家賃6万円。決して高級物件ではありません。それに、当時の僕は実家暮らしだったので、あまりお金がなかったんですよね……。ちなみに、僕の両親は共働きで、母さんが専業主婦、父さんが会社員でした。

「お邪魔します……」と言って部屋に入ってきた教授を出迎えたのは、なぜか僕のパソコン画面でした。

「あれ? どうしてここにノートパソコンがあるんですかね?」

「あぁ、それはだな……ん? あれ?……おかしいな。私は確かにここに来たはずだが……ここはどこなんだ?」

教授が困惑しています。無理もありませんよね。いきなり知らない場所に飛ばされたら誰だってこうなります。

「とりあえず落ち着きましょう。コーヒー飲みますか?」

「ありがとう。すまないね。」

コーヒーを飲みながら、お互いの状況を確認しました。まず、教授の方から話を聞きました。「君の研究テーマはなんだい?」

「ロボット工学です。」

「ほう、君はロボットに興味があったのか。」

「はい。小さい頃からずっと興味がありました。」

「なるほどねえ。それで、君はどんなロボットを作りたいんだい?」「そうですね。やはり最初は二足歩行型で、次に自立型のロボットを作ってみたいですね。」

「へえ~。なかなか面白いことを考えているじゃないか。」

「ありがとうございます。」

「あと、君の研究テーマに関連することだけど、実は私もロボットを研究していてね。」

「え!? 本当ですか!」

まさかこんなところで同志に出会うとは思ってませんでした。しかし、なぜでしょう。このときの教授の顔からは、少し焦りのようなものを感じた気がしました。

「うん。まあ、まだ全然研究段階だし、完成してるわけじゃないんだけどね。」

「そうなんですか。じゃあ、もし完成したら見せてくださいよ!」

「ああ、もちろんだよ。ところで、君は今いくつだい?」

「24歳ですけど……」「ふむ、ということは大学4年生か。」

「はい。そうです。」

「じゃあさ、就職活動とかしなくてもいいのかい?」

「ああ、まあ一応やってはいますけど、あんまり上手くいってなくて。」「そっか。じゃあ、ちょうど良かったかもしれないな。」

「はい?」

「いや、なんでもないんだ。こっちの話だから気にしないでくれ。それより、今は論文のためにロボットを作っているんだろ?」

「そうですね。」「じゃあ、早速作業に取りかかってみようか。」

「わかりました。」

僕はパソコンを操作して、ロボットの設計を行いました。

「ところでさ、君は人工知能とかって興味あるかい?」

「ありますよ。」

「じゃあ、ちょっとだけ教えてあげるよ。」

教授の話はすごくためになりました。どうも、彼は人工知能の研究者だったようなのです。僕は普段からプログラミングの勉強をしているので、ある程度のことは理解できていました。でも、それでも教授の話を理解できるようになったのは結構時間がかかりました。でも、教授の教え方が上手かったおかげでなんとか理解できたんです。

「よし、これで設計図ができたぞ。」

「すごいですね。これならすぐ作れそうです。」

「ああ、そうだな。じゃあ早速組み立てを始めてくれないか?」「はい、分かりました。」

そして、僕は教授と一緒にロボットの組立作業をすることになりました。

「ところで、さっきは質問しなかったけど、君はどうして引きこもりになってしまったんだい?」

「あー、それは、まあいろいろありまして……。」

「そうか。まあ言いたくないこともあるだろうし、深くは聞かないことにするよ。」「ありがとうございます。」

「じゃあ、今から部品の説明をするから、よく聞いておいてくれたまえ。」「はい!……って、あれ?」

ここで、僕の記憶が途切れました。

目が覚めると、そこはベッドの上でした。どうやら寝ていたらしいのですが……教授の姿が見当たりません。部屋を見渡すと、部屋の隅っこに教授が倒れているのを発見しました。急いで駆け寄ったのですが、すでに手遅れのようでした。教授は完全に息を引き取っていたのです。

その後、警察に通報したところ、すぐに警察官たちが駆けつけてきました。しかし、彼らは僕の話を信じようとはせず、現場検証をさせてくれないばかりか、僕のことを精神異常者扱いする始末でした。なので、仕方なく僕は自分で自分のアリバイを証明することにしました。

僕の記憶では、ロボットを組み立てた直後に意識を失ってしまったはずです。しかし、その記憶が正しいかどうかを確認する術はありません。そこで僕は、「教授は僕の部屋に入ってきたときにはすでに死んでいた」という仮説を立ててみました。そうすると、教授が僕の部屋に入ってきた時間について説明がつきます。つまり、僕は教授の死体を発見した後、警察が到着するまでの時間を利用して、一人でロボットを完成させたということなんです。

警察は最初、僕が犯人だと思っていたみたいなんですが、結局、教授を殺したのは別の人物だということで落ち着いたみたいです。ただ、警察の捜査により、教授の部屋から大量の血痕が発見されたことから、殺人事件として捜査されているようです。

教授を殺害したのは一体誰なんでしょうか? 教授を殺す動機を持っていた人物は誰なのか? それがわかれば事件の真相が見えてくるかもしれません。

この事件をきっかけに、僕は引きこもってしまいました。もともと、人と話すことが苦手だったので、人と接する機会が減るというのは都合が良いことだと思いました。それに、両親にも心配をかけてしまいましたしね。でも、どうしても解決したい謎があったんですよね。

それから2年くらい経って、僕は大学を卒業しました。卒業したといっても、大学院に進んだだけですけどね。さて、これから何をしようかと考えていたとき、僕はあるニュースを知りました。それは、ある大学の教授が自宅で殺害されたというものでした。殺されたのは、人工知能の研究の第一人者だった教授でした。

そのとき、僕は思ったんです。もしかすると、教授を殺したのは、あのときの僕のように、誰かの役に立ちたいと思って行動していた人間かもしれないって……。

この話はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

また、特定の個人または組織を非難する意図を持って書かれたものではありません。

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