第125話

 橙夜は彼女から離れた。

 まだふらついていたが、もう手は借りれない。

 決意していた。

 もしマリューン伯の軍隊なら、自分が出て何とか戦いを回避しようと。

 方法は分からない。

 が、そうしないと橙夜自身が自分を裏切る事なる。

 彼は早足で外に出る。

 その前に火球が落ちた。

「わあ!」

「気を付けろ小僧!」

 ルドが様子に叫ぶ。

「敵はマリューン伯爵の軍隊じゃない! 冒険者の集団だ」

「は?」

 見回す橙夜の目に映るのは、確かに統一の鎧を着た騎士や兵士達ではなく、バラバラの装備、バラバラの編成の男女達だ。

「恐らく我等への追っ手だろう……しかし考えたな、確かにギルドへの依頼となれば領主とて異を唱えられない」

 襲いかかって着たのは、マルク達が逃亡した領地からの刺客らしい。 

「なら!」

 橙夜は武器を探す。

 敵がマリューン伯の軍でないなら、彼も戦える。

 そこに矛盾や齟齬はない。

「馬鹿者! 逃げろ!」

 長身のファースが忠告するが、橙夜は従わない。

 もう知ってしまった。

 敵だと思っていた人々が、ただ自分達の不当な苦痛の改善を望んでいる弱者達だと。

 逃げられない。

 ここで逃げるなら、恐らく彼はこの先この世界で自分を通さなくなる。

「俺も戦う!」

「何の故あってだ? もし我等に同情したのなら、それは侮辱だぞ」

 マルクの問いは厳しい。

 橙夜は一度奥歯を噛みしめ答える。

「俺は自分の正しさを求める! それ意外にない」

「……そうか」

 マルクはもう何も言わない。

 だが彼は最後に唇を綻ばせた。

 橙夜と冒険者達の戦いが始まる。


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