第74話

「あのねぇ」とアイオーンが呆れ気味に口を開く。

「ジュリちゃんはねぇ、強い振りぃをしてぇ実はぁよわよわなのぉ、ダメじゃなぁぃ、何でも出来そうでぇ、実はぁ何も出来ないぃ、ジュリちゃんをぉ、いじめたらぁ」

 ……アイオーンはアイオーンで酷くない?

 訝る橙夜の首が絞まる。

 澄香に胸ぐらを掴まれていた。

「ジュリエッタが何も出来ないですってぇ? 今まで世話になったのになんて言葉!」

 ……違うよー、言ったのは俺じゃないよー。

 口にはしない。

 先程からどんな抗弁をしても澄香のビンダを喰らうから。

 報はとっくに真っ赤でひりひりしている。

「さあ! ジュリエッタに謝って! 劣情から覗いてしまいましたって」

 橙夜は素直に、蓑虫ガタブル状態のジュリエッタに膝を突いたまま近付く。

 額を床に着けると涙で視界が曇る。

 こうまで一方的に女性に責められた男は泣くしかない。

「じ、ジュリエッタさん……レツジョウからノゾいてしまってモウシワケありません」

 どうしようもなかった。

 悪魔マーゴットに嵌められた時点で、この事態は避けられない。

 ……鬼女や、この世には鬼女しかおらんでー!

 叫び出したいが、ぐっと堪える。

「……ト、ウヤ…………」

 篠が触れ合うような小さな声に顔を上げると、蓑虫ジュリエッタが突如襲いかかって来た。

「きゃあああっ!」

 澄香が叫ぶ。

 ジュリエッタは毛布を捨て、全裸になり……噛みつくように橙夜に口づけしていた。

 橙夜の口内一杯にジュリエッタの匂いと唾液が流れ込む。

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