ピアノじゃないよ

バブみ道日丿宮組

お題:斬新なピアノ 制限時間:15分

 最近駅前にピアノが設置された。

 共有なもので、だれでもいつひいてもいいらしい。

 学校の登下校、休日の買い物でピアノを確認しても、誰もひいてないというか、ひいた形跡がない。

 そこだけ切り取られたかのような錯覚さえある寂しさ。

 ものがいけないのかもしれない。

 設置されたのは、パイプオルガン。

 テレビで教会に設置されてるのを見るぐらいの大きさだ。

 写真はよく撮られてるみたいだが、接近しようとしてる誰もいない。

 こうなれば、自分がひくしかないと学校の帰りに友だちを誘って、ピアノの前に一緒に座る。

 友だちはなんだか恥ずかしいと頬を赤らめた。可愛いお持ち帰りしたいという感情をひっこめて、手と足を動かす。

 普段ひきなれてるものとは違った音と、感触だった。

 オルガンとはいえ、コツを掴めばピアノと同じだ。

 友だちはたまにそれっぽい鍵盤を押す。

 演奏形式は連番。

 まだ一緒にひいてる時間は少ないけれど、お互い顔を鍵盤を見て、進めてく。

 メロディが奏でられると、私たちの演奏を聞いて立ち止まってる人が増えてきた。

 友だちは、どうしよう、どうしようと少し困った感じを出してたが、私は止まらなかった。

 私が止まらなきゃ友だちも止められない。

 そうして何分間ひきおわり、立ち上がるとたくさんの拍手が私たちを迎えた。

 友だちはやっぱり恥ずかしいらしく私の後ろに隠れて、駅へと引っ張ってたのでトイレに誘導した。

 不特定多数がひいてるわけじゃないけど、きちんと手は消毒する必要がある。

 友だちはふにゃふにゃになってたので、私が手を洗ってあげた。

 友だちが正気に戻ったのは、最寄り駅に到着した頃ですっごく興奮しだした。あんなに恥ずかしがってたのになと思いつつ、私はそれに耳を貸した。


 次の日からは駅前の雰囲気が変わってた。

 小さい子からお年寄りまでがピアノの前に座るようになった。

 きっかけ。

 そう私たちはきっかけになれたのだ。

 人とピアノの仲介人に。

 友だちはまたひきたいねと笑ってたが、また恥ずかしがるんだろうと頭を撫でた。可愛いこはいつまでも可愛くいてほしい。

 それが叶わぬ恋であろうとも、私はピアノの旋律のように関係を続けてく。

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ピアノじゃないよ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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