第2話

 外からは藪、内からは小骨。心のどこかがちくちくと刺さる感覚が気になって、響介はその日、夕方になるまで落ち着かないまま過ごしていた。たった二日目にも関わらず、早くも授業が頭に入ってこない。気づけば日は傾き始め、放課後になってしまっていた。

 その日の沢根は部長や神絵師達と遊ぶ予定があったらしく、響介がようやく帰り支度を済ませる頃には先に帰宅していた。響介は沢根に、溶計Pという人物についてもう少し話を聞きたかったが、彼の予定を崩してまで急ぐ用事でもないと思い、ひとまず飲み込んだ。

 薮も小骨も一旦置いておいて、先に今日の授業の遅れた部分を取り戻すべきだ。それならさっさと帰るべきだろう。響介はやや乱雑に教科書やノートを詰め込んだ、学生鞄を手に取った。ちょうどその時だった。

「君、成谷くんだよね。ちょっといい?」

 聞き慣れない声に振り向くと、同じクラスの生徒だろうか、どこか見覚えのあるポニーテールの髪型をした少女が立っていた。彼女は顔こそ笑みを浮かべているものの、両手には柄の長い自在箒とちりとりを持ち、堂々とした出立ちをしていた。少女の様子に嫌な予感がしたのも束の間、響介は有無を言わさず彼女から箒とちりとりを手渡された。

「昨日は遅刻の罰掃除、さぼって帰っちゃったでしょ。今日の帰り、掃除してから帰ってね」

「ええっ?」

 遅刻の罰掃除だなんて、そんなものあっただろうか。そういえば登校初日の朝に、担任からホームルームの直後にそんな校則があると声をかけられたような──気がしなくもない。少なくとも、全く心当たりがないわけではなかった。

 響介はあの日、昼から後は音楽のことで頭がいっぱいになっていて、罰掃除があったなんてことはそのまますっかり忘れてしまっていたのだ。渡された箒とちりとりを握ったまま呆然とする響介に、ポニーテールの少女は改めて微笑んだ。ただし、どちらかというと苦笑している様子だった。

「先生、怒ってはいなかったけど心配してたよ。成谷くんうっかり屋さんみたいだし」

 悲しいことに、響介は登校二日目にして既にうっかり屋さんという印象で認知されているらしい。それも、まだこちらは名前すら覚えていない教師やクラスメイトからだ。泣きっ面に蜂とはこのことである。

 ポニーテールの少女からは「黒板掃除くらいは手伝うよ」と提案されたが、響介は「罰掃除なんだから一人でやるよ」と拒否した。うっかり屋な上に、人に失態を拭ってもらうような人物とまでは思われたくなかった。響介はこういうとき、案外意地を張る性格だった。

 こうして響介は、夕日が差し込む静かな校舎の中、一人虚しく居残り掃除をすることになってしまったのである。まずは七限目の数学教師が雑に字を消したため、却って跡がついた黒板を、丁寧に消し直す。黒板消しを窓辺で叩いて綺麗にしてから、今度は黒板下のチョークボックスに溜まった粉を雑巾で拭き、その雑巾も洗い直す。

 黒板を掃除するだけで随分と時間がかかってしまったので、響介は洗った雑巾を物干しスタンドにかけながら『やっぱり手伝って貰えば良かった』と後悔していた。あのポニーテールの少女は、響介が手伝いを断るとそのまま先に帰ってしまっていた。時すでに遅しである。

 罰掃除は、黒板と机の拭き掃除と、それから床の掃き掃除をしてから帰るのが規則らしい。次は机を拭こう。“黒板用”と黒の油性ペンで書かれている雑巾の隣に、“机用”と同じ黒字で書かれている雑巾が干されている。響介は雑巾を手に取って、廊下の水道で濡らしてから水を絞ると、また教室へと戻り、廊下側の机から後ろへ順番に拭こうとした。

 そうして教室の後方を見渡して、ようやく気がついた。とっくに下校時刻を迎えた後だというのに、自分以外にも未だに教室に残っている人物がいたのだ。

 廊下側、一番後ろの席で、少年は一人で読書をしている。彼はよほど本に夢中になっているのか、気配すら感じないほど静かに読み耽っていた。

 少年は目立つ暗灰色の髪をしていた。響介の髪も生まれつきの明るい赤毛で、日本人としてはそこそこ目立つ色をしていたが、少年の髪のアッシュグレーは、まるで異邦からやってきたかのような風貌だった。その上整った顔立ちもあり、静かに本に目を落とす少年の姿は、さながら西洋人形のようだ。逆に言えば、その感情の見えない仏頂面もまた、西洋人形のような不気味さを孕んでいた。

 響介はそんな少年の姿を見ただけで、まずは近寄り難いという印象を抱いていた。できれば話しかけることがないよう、こちらの掃除よりも先に、彼の読書が終わってほしい。そう思いながら机を拭いていったが、やはり少年は本を読み終える気配がなかった。

 結局、少年の座る後ろ隅の席以外は全て拭き終わってしまい、仕方がないので彼に話しかけることとなった。

「ごめん、そこ拭きたいんだけど」

 少年は響介を一瞥すると、本を閉じ、手に持ったまま黙って席を立った。一言すら挨拶も交わさず、ただ一瞬響介を見やっただけで席を離れたのだ。失礼なやつだな、と響介は口にしかけて堪えた。こういう手合いの人物に、余計なことを言って良かったためしがない。不服だが、我慢するべきだ。

 相変わらずの仏頂面で、今度は教室の隅で立ったまま読書を始めた人形少年を横目に、拭き掃除を終えた響介は箒を手に取った。後は床を適当に掃いて、こんな人形少年のことは忘れてさっさと帰ろう。そう意気込む響介の足どりは、むしろ軽くなっていくようだった。

 何しろ響介は母に似たのか、嫌な出来事があると報いるように意欲が湧く心柄だった。響介の英雄は母の英雄でもある。あの闘争的とも言える伝説の一曲が、彼らへと与えた影響はそれほど大きいものだった。響介は早くも帰宅後のことと、明日からのことを考え始めていた。まずは勉強だ。それから音楽だ。

 電子音楽の世界は、確かに魅力的ではあった。しかしどちらにせよ、電子音楽を作るためには、コンピュータとソフトウェアが必要になる。やはりまずはお金が欲しい。沢根の言っていたアルバイトは、コンピュータを買えるほどの金額を稼げるのだろうか。様々な計画、または予定という名の妄想が、響介の頭の中を巡り始めた。

 気づけば人形少年のことなんかは頭からすっぽり抜けていき、響介は持っている自在箒の長い柄が、まるで英雄のスタンドマイクのように思えてきた。これからの自分の人生は、絶対にうまくいくはずだ。いや、絶対にそうしてみせる。俺たちの戦いはこれからなのだ。そんな想いが胸に込み上げてきて、響介は反射的に息を深く吸った。

 “俺たちは皆が勝者、負け犬なんかに構う暇はない”──

「ずいぶん古い曲を知ってるんだね」

「えっ⁉︎」

 後ろの方から声が聞こえ、とっさに振り向いた。西洋人形が喋ったのだ。自分でも気づかないうちに、無意識にあの歌を口ずさんでいたことに気づき、響介は慌てて口を塞いだ。そんな部分まで母に似ていた、という事実はさておき、響介は人形少年の言葉にも驚きを感じていた。

 先ほどまでは喋り方を知らないかのように黙っていた彼が、急に話しかけてきたことも意外だった。しかし何より響介は、この少年が自分たちの英雄のことを知っている口ぶりをしたことに驚いたのだ。

「……知ってるのか?」

 唖然とするあまり、少し遅れてから響介はそう応えた。少年は頷いた。そのとき、魂すらなさそうだった人形の顔に、僅かに好奇の色が灯ったのが見えた。

「主に七十年代後期を風靡した、イギリスのロックバンド……だよね。中でもその曲は、ピアニストとしての才能もあった、天才ボーカリストの作った曲だ」

 本当によく知っている、と響介は感心した。あのロックバンドは、メンバーの全員が作曲をし、それぞれがヒット曲を生み出している。それも、自分たちが生まれるより三十年も前の音楽だ。どの曲を、誰が作曲を担当したかまで把握しているのは珍しい。響介は無意識に頷いていた。

 首を縦に振る響介を見て、暗灰色の髪の少年は気を良くしたようだった。彼の口角が僅かに上がったのを見て、響介はやっと少年が人形ではなく、紛れもない人だったと気がついた。

「僕は生憎、ロックにはそこまで詳しくないけれど……ピアノが好きなんだ。良い趣味だと思う」

 響介はまたも驚嘆した。先ほどまでは教室の隅で、土の塊のように静かに読書に耽っていた彼が、響介たちの英雄について活き活きと語り始めたのだ。英雄のことを良い趣味だと言われて、悪い気はしなかった。

「まあ、僕はどちらかというと“放浪者の狂詩曲”のほうが好きだけどね」

 聞かれてもいないのに、ついさっきまで人形だった少年は、流暢に言葉を並べていった。

 放浪者の狂詩曲は、英雄の代表曲の中でも転調が激しく、ピアノの伴奏が目立つ幻想的な曲だ。この少年は、あの狂詩曲の難解な歌詞を理解しているのだろうか。“スカラムーシュよ、ファンダンゴを踊ってくれ”──彼を英雄として尊敬している響介にすら、スカラムーシュが誰なのか、ファンダンゴが何なのかすらわからないのだ。

 響介は次第に暗灰色の髪の少年に興味を持ち始めていた。彼が纏う雰囲気は、放浪者の狂詩曲の歌詞のごとくミステリアスで、思わず興味を惹かれる何かを孕んでいるのだ。

「なあ、スカラムーシュって何かわかるか?」

 響介は単刀直入に尋ねてみた。

「十七世紀イタリアの、臆病者の道化役のことだよ。ちなみに、ファンダンゴはスペインの陽気な踊りのことだ」

 こちらが聞きたいことを見透かされているかのような返答だった。あまりの博識ぶりに響介は驚いた。響介はさらに有名な“ガリレオ”と“フィガロ”のフレーズについても尋ねた。少年は脳みそに辞書がそのまま入っているのかのように、すんなりと答えてみせた。

「恐らくガリレオは地動説の提唱者、フィガロはオペラの登場人物。どちらも異端者の象徴とされる説が一般的だけど……」

 しかし、流暢な説明を述べていた少年は、何故か唐突に表情を曇らせ始めた。その後ややあって、彼はほんの少し苦々しい顔でかぶりを振った。

「多分、彼はこうやって解説されることは、望んでいないと思うな」

 彼、とは作詞した英雄本人のことだろう。響介は思わず口をつぐんでしまった。この少年は、下手をすれば自分よりも、英雄のことをよく知っている。響介が幼い頃からずっと憧れていた彼のことを、この少年はその博識さで、自分よりも深く理解しているのだ。その事実が、響介の心の中に僅かに燻るような気持ちを湧かせ始めていた。嬉しさのある一方で、悔しさが身を焦すという、不可解な気分だった。

 話を変えよう、と響介は思った。このまま英雄についてこの少年と語らうと、彼の知識量にこちらの熱意が負けてしまう気がしたのだ。

 響介が返答に迷って言葉を詰まらせていると、少年はまたも響介を無視するかのように本に目を落とし始めた。やっぱり失礼なやつだ! 響介は再び怒りを感じた。

 それとも少年の読み耽っている本は、響介との会話なんかを無視したくなるほど魅力的な内容なのだろうか。響介は気になってちらりと表紙を覗き見た。背表紙には“人間失格”と書かれている。題名だけなら響介も知っていた。明治生まれの文豪、太宰治の代表作だ。

「その本、そんなに面白いのかよ?」

 響介は僅かに苛立ちを隠しきれない様子で話しかけた。半ば当て付けのつもりだったが、当の少年の返答は簡素なものだった。

「別に、面白くはないかな」

「じゃあ、なんでそんなに一生懸命読んでるんだよ。もう下校時刻過ぎてるぞ」

 響介の言う通り、時刻は午後六時に差し掛かろうとしていた。窓辺を見やると、日は既に暮れており、部活動を終えた先輩たちが帰宅していくのが見えた。

「もう少しで読み終わるから。施錠時刻にはまだ余裕があるでしょ」

 それでもやはり、少年の返答は簡素なままだった。響介はもうたまらなくなって、思わず嫌味を直球に口に出した。

「放課後に太宰なんか読んでるなんて、お前変なやつだな」

 少年は僅かに眉をひそめた。響介は、内心『やってやった』と思った。頑なに動かない博識少年を、僅かにでも動揺させてやったのだ。

「“太宰なんか”って、君は太宰治の何を知っているの?」

 どうやら少年が怒りを感じた点は、『変なやつ』のところではなく、『太宰なんか』の部分らしい。想定とは少し違ったが、響介はとにかく少年の鼻をあかしたい一心で捲し立てた。

「太宰治くらい俺だって知ってるぜ、国語の授業で習ったからな。心中するフリして女の人を何人も殺した、ろくでなしだろ」

 少年の表情がますます険しくなった。それ見たことか、と思いかけた響介に返ってきたのは、またも不意をつく返答だった。

「君、“津軽”は読んだことある? “パンドラの匣”は?」

「なんだよ急に。話を変えんなよ」

「話は変わってないよ」

 どこがだ。こちらは太宰の人間性の話を上げたのに、作品名を連ねて返されてもわけがわからない。響介は少年の意図がわからず、ただ不愉快そうに顔をしかめるしかなかった。

 ならば、と言わんばかりに少年は話を続けた。

「もっとわかりやすく言えばいい? それを言うなら君の憧れの人は、婚約者がいるのに同性に浮気をして、その後も性に溺れて乱交を繰り返した淫らな人だ」

「作家の私情と作品の良さは関係ないだろ!」

 思わず怒りが口をついて出た。少年はあろうことか、響介の英雄の人間性を引き合いに出したのだ。しかし声を張り上げた響介に対し、少年はあくまでも冷静に答えを説いた。

「僕が言いたいのはそういうことだよ」

 痛いところを突かれるとは、まさにこのことだった。少年は初めから、響介が太宰治の作品ではなく、本人の人間性を引き合いに出して『変だ』と述べたことを諭していたのだ。それも自分の言った言葉をそのまま返される形で嗜められてしまっては、あまりにも格好がつかなかった。

 負けず嫌いの響介はそれでも何かを言い返したくて、暫く口をもごもごとさせたり、手を握ったり開いたりなどをしていたが、そうしているうちにも少年は、またも本へと目を逸らしてしまった。

 悔しい。今度は響介の心の中で、はっきりとした苛立ちが煮えたぎっていた。しかし、今はこの少年を打ち負かす術がないのも事実だった。

 響介はため息をつきながら箒を手にとり直し、そのまま掃き掃除に戻ることにした。向こうだって、挨拶すらしないようなやつだ。こちらも挨拶なんかせずに、黙って離れれば良いだけだ。そうわかっていながらも、彼の頭の中には後ろ暗い靄のようなものが渦を巻いていた。

 その感情が口喧嘩に負けて悔しかったせいだとわかったのは、帰宅後にシャワーを浴びて、文字通り頭を冷やした後のことだった。

 薮も小骨も灰になるほどの屈辱感は、代わりに響介の心に火傷の痕を残すこととなった。


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 恥の多い生涯を送って来ました。第一の手記はこうして幕を開ける。人間失格者の彼は、『自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安のために、発狂しかけた事さえあります』と述べている。椀田律は、“世と自分が食い違っている不安”という言葉に似た心持ちを感じる一方で、道化と成ってまで人との繋がりを求めた彼を、最後まで理解することができなかった。

 人間失格の彼が、恥の多い生涯を送って来たというのなら、自分なんかはもはや、生まれて来たこと自体が恥だったのではないだろうか。多くの人が恐らく嫌悪感や軽蔑、または昭和初期という時代への同情、といった機微を感じるであろう名作を読んでも、なお律の心は微動だにしない。あるのは中途半端な微々たる共感と、無理解という解釈だけだった。そんな自分を、律は“人間未満”か、“人間失敗作”のどちらかだと思った。

 女は引き寄せて、つっ放す、とはよく言ったものだ。令和の時代に生きている律には、それは時代錯誤な表現だった。しかし女性に限らなければ、引き寄せてつっ放すという表現は言い得て妙だ。他人は皆、波の押し引き、または潮の満ち干きのようなものだった。

 急にやってきたかと思えば、瞬く間に引いていく。そうして波に揉まれた流木のように、だんだんと干からびて乾いていったのが今の自分だろうか。そんなことを考えてから、律はそもそも自分には、生きた木だった時期すら無かったな、と思い改めた。

 幼い頃から律は、家族から、親戚から、そして周囲からも、賢いと褒めそやされて生きていた。確かに彼は賢かった。そろばん、書道、絵画、プログラミング、そしてピアノなど、大抵の習い事は始めてわずか二、三日で、人並み程度にこなせるようになる程だった。

 しかし、ただそれだけだった。それ以上でも以下でもなかった。律は確かに賢かったが、それはただ賢いだけだった。書道も絵画もプログラミングも、数日で上手くなり、こなせるようになったその瞬間は、周囲の注目を一身に集めた。だが、常にその瞬間だけが頂点だった。人より少し上手い、いつもその程度で律の上達は止まってしまう。上達が止まったとわかれば、集まった者たちは皆興味を失って引いていくのだ。

 だから習い事なんてものは、大抵が続かなかった。人並み程度に出来るようになって、そこで止まり、終わる。その繰り返しだ。律は生まれつき体力がなく、病弱だったこともあり、両親は共に彼に甘かった。そのため律が『やりたくない』と言えば、稽古はそこで終わるのだった。

 ただ一つ、ピアノを除いて。

 律は、ピアノが好きだった。ピアノは鍵盤を叩けば音が出る、至ってシンプルな楽器だ。しかしその音は同じ鍵盤を叩いても、指に込める力や、ペダルの踏み方一つでたちまち表情を変えていく。ピアノは繊細な楽器でもあった。ピアノを弾くときの律は、まるでもう一人の自分と談笑を交わしているかのようだった。見えやしない自分の内側が、音となって目の前に現れているかに思えたのだ。

 そうして奏でた旋律を、周囲から褒められれば、律は満たされた気持ちになった。他の稽古と同様に上達の頂点が見えてしまっても、律はピアノを弾くことだけはやめなかった。たとえ人からの評価が衰えようと、ピアノを奏でること自体が好きだった彼は、弾き続けることができたのだ。

 しかし、それすらも挫折した。あれは小学校の四年生、いわゆる二分の一成人式と呼ばれる、十歳の門出を祝われた時期のことだ。

 当時の律は、まだ九歳だった。律は入学前から弾き続けていたピアノを、ついに発表会という舞台で初めて披露することになっていた。演目は、ショパンの革命だった。小学生にはやや難易度の高い譜だったが、律は弾きこなせる自信があった。革命のエチュードは、たとえ練習の時間でなくとも、自ら何度も弾き、楽譜を覚えてしまうほど好きな曲だったのだ。

 それ程慣れ親しんだはずの譜であったにも関わらず、律の革命は失敗に終わった。あの舞台での失態は、乱にすら満たない無様なものだった。練習のときは、楽譜など殆ど見ずとも流れるようにユニゾンをこなしたはずの手が、人前に出た途端、思うように動かなくなってしまったのだ。革命は左手の動きが激しい曲だ。左手がうまく動かないことに動揺し、右手の主旋律も乱れていった。

 結局、最後までまともに弾くことすらできずに、律は舞台から下りることとなった。周囲の人々はそんな彼のことを、『たった九歳の少年が、革命のエチュードを初の舞台で披露しようとした』ことを褒め称えた。その必要最低限とも言える賞賛は、却って律のプライドを粉々に砕いてしまった。

 律はそれから、ピアノだけでなく何に対しても、挑戦するということ自体を恐れるようになっていった。上達しても頂点が見える。楽しんでも失敗をする。期待されればその分失望される。律は、自分自身に対して失望しきっていた。

 当時の彼は、ピアノを弾くこと以外の趣味と言える趣味を持っていなかった。律は賢い少年だったが、他者の気持ちには鈍感で、交友は常に上手くいかなかった。時にはクラスメイトの一人と口論になり、律は持ち前の賢さと共感性の無さを以って、相手を正論で打ち負かし、却って周囲から避けられることすらあった。そんなふうに他者と衝突するたびに、律は自分自身にますます失望していった。失望はやがて空虚となって、律の中身を空白で満たしていった。

 そうして律は、表情を失っていった。やがて感情を表に出すどころか、感じることそのものを忘れるようになっていった。時折、律のことをよく知らない人物が、彼の表向きの賢さと、整った容姿に惹かれてやってくることがあった。しかし、人というのは案外聡いものだ。すぐに彼の空虚さを見抜き、皆すぐに離れていってしまう。その繰り返しだった。

 人に好かれる事は知っていても、人を愛する能力に於いては欠けている。人間失格者の言葉は、またも中途半端に律に当て嵌まってしまうのだった。ただ律の場合は、そこに彼の思う恐怖や道化といった芝居じみた想いはない。只々、空洞ばかりが大口を開けているのだ。何もなかった。何もないということだけが、彼の内側の全てを支配していた。


 電子歌姫に出会ったのは、それから中学へと進学した後のことだった。当時の律はインターネットを、勉学に必要な情報を得るもの程度にしか利用していなかった。ソーシャルネットワーキングサービスといったものには、あまり興味が湧かなかったのだ。電子歌姫が歌う音楽に出会ったのも、たまたま動画の広告で聴いたから、という粗朴なものだった。

 他に趣味はなく、貯めていた小遣いにも余裕があった。また音楽がやりたい、というほどの熱意があったわけではなかったが、仮想現実の空間で、架空のボーカリストが歌う電子音楽の世界は、律が貯めた小遣いを崩してみようかと思う程度に、興味を惹くものがあったのは確かだった。

 律は自らソフトウェアを購入し、自ら電子音楽の作り方を学んだ。他に趣味を持たず、部活動にも通っていなかった彼は、持ち前の賢さでわずか一週間後には初めての楽曲を作り上げていた。

 律は周囲の電子歌姫作家に倣い、ネット上では仮名ハンドルネームを名乗って活動を始めた。本名から二文字を取り、ダリ(シュルレアリスムの画家、サルバドール・ダリのことである)の代表作をもじった単語をアーティスト名として掲げ、初の楽曲を音楽アプリケーションへ投稿した。

 初めはそれ程反応があったわけではなかった。しかし、地味ではあったがコメントが付くこともあった。『次回作に期待』、などという言葉は少々皮肉めいていたが、律の動機を煽るには十分だった。それならもっと上手くなってやろう。律は仮想現実という海へ自ら飛び込んで行ったのである。

 そうして一年ほどが経ち、律が数曲目を投稿した頃に、ある事件が起こった。事件といっても大したものではない。しかし当時、地味ではあったが着実に愛好者を獲得していた律にとって、それは彼のアイデンティティを揺るがす出来事だった。

 何者かが、律が現役の中学生であることを漏洩したのだ。律ははじめ、年齢程度は特に取るも足らない、否定する必要もない情報だろうと思い、黙認していた。しかしその情報は瞬く間に拡散され、そして律の想像を遥かに上回る勢いの反響を呼んだ。律の音楽は、彼が自分で思っているよりも、過大に評価されることになったのである。

 良くも悪くも賢い律は、すぐにその理由を理解した。若さだ。彼がまだ、中学生であることが評価されたのだ。それは音楽への絶対的な評価ではなく、彼の幼さへ対する相対的な評価だった。律は焦った。彼の空虚でありながら尊大なプライドは、その相対的な評価を絶対的なものに覆したくてたまらなかった。しかしまたも、彼のその尊厳さが、彼自身の好奇を打ち砕くことになってしまった。

 どうあがいても、律の幼さへの相対的な評価を、律の音楽の絶対的な才能が上回ることはなかった。律は大衆が好くジャンルを懸命に研究し励んだが、それでも再生数、評価の数は伸び悩んだ。やがて中学生のアーティストなんていう、現代において特段珍しくもない冠は、濁流の如く速い流行の前には瞬く間に飽きられていき、評価の数は右肩に下がっていった。

 律は中学生という若さを評価された。それが電子音楽における彼の頂点であり、彼はついにその頂点を、実力で破ることはできなかった。仮想現実の世界でさえ、結局は現実の延長でしかなかったのだ。波はまたも引いていき、律は砂の上へと打ち上げられるように現実を叩きつけられた。

 結局はどこへ行こうと、何をしようと、彼が彼である限りは、全て同じ結末になってしまうのだ。波打ち際で無気力に転がる、木片のような無惨な状態になって、律はようやく悟った。

 だから彼は、音楽という形で全てに別れを告げることにした。もちろん、自決などという馬鹿げたことをするつもりではない。遺作を作ることにしたのだ。自分の全てにおける頂点、天井が見えてしまった今、できることはもう、この哀れなアーティスト気取りの屍の後始末くらいしかなかったのだ。

 せめて、あの青い蓴菜模様の椀へと積もった、みぞれのように。この渇ききった心にさえ、びちゃびちゃと降り続けるどうしようもない気持ちが、どんな形でもいいから誰かへと伝わって、それが“さいわい”となるように。律は最後の一曲に、かの詩人の言葉を借りて、わずかに残った想いを詰め込んだ。

 彼は、本当は誰かの役に立ちたくて仕方がなかったのだ。褒めて欲しかったのではなく、認められたかったのでもなく、ただ自分が何か良いことをして、誰かに喜んでほしいだけだった。体が弱い彼は、人より出来ないことも多かった。けれど別の何かが上手くできたとき──書道も、絵画も、プログラミングも、そしてピアノを弾けたときも──あの瞬間は確かに、嬉しそうに笑う母が、父が、そして自分のことが、好きだった。

 ただ、その生き方を続けるには、彼はあまりにも不器用だった。詰め込みすぎた永訣は、みぞれの白さにはほど遠い混沌とした楽曲になってしまった。やはりこれが自分の天井なのだろう。そう理解した律は、永訣を遺作に、音楽を辞めたのである。


 あれからまた、幾つかの年月が過ぎた。高校一年の春は、生温い通り雨が過ぎていくのを、ぼんやりしながら待つように迎えた。共立高等学校は、県内では有数の進学校だ。恐らく入学者の殆どが、都内や国立の大学への進学を目指しており、何らかの夢や目標を持っているはずだ。

 入学式当日、そうして思い思いに迎えただろう周囲のざわめきが、律には雨音か何かのように聞こえていた。律は賢くはあったが、もはや夢も目標もない。ただ単に偏差値が高いという理由で、この共高を選んでいただけだった。

 その後のロングホームルームの自己紹介で、口をつくようにして出た『特に何もないです』という言葉は、半ば自分自身への当て付けだった。彼には趣味も特技も夢も希望も、本当に何もなかったのだ。真の意味で己を紹介するのならば、何もないと言う他はなかった。

 初対面の自己紹介という場で、それも一番際立つだろう最後の席で、一人だけそんなひねくれたことを口走ったものだから、律は入学早々悪い意味で目立つこととなった。とはいえ律本人は、椀田という苗字が常に五十音順で最後の方になるため、悪目立ちをすることには慣れきっていた。

 高校入学という節目だろうと、所詮はただ波の大きさが少し変わるくらいである。悪目立ちしようと、黙っていればそのうち波はまた引いていく。そうしてまた一人になる。こうして自分の一生は、流されるままの流木のようにつまらなく終えるのだろう。

 その日も律は、の入った枯れ木のような気持ちで放課後を過ごしていた。今朝図書室で借りた本を読み終えそうだったので、今日のうちに返してから帰ろうと思っていたのだ。

「ごめん、そこ拭きたいんだけど」

 前方から聞こえてきたのは、不機嫌なのを隠す気すらない疲れた声だった。律は仕方なく一旦本を閉じ、席を離れた。机の前に立っていた赤毛の少年は、まるで面倒だというしかめ面で、律の机をやや乱雑に拭き始めた。

 なるほど、読書に夢中で気がつかなかったが、彼がどうやら“うっか成谷くん”の成谷らしい。初日から遅刻をし、遅刻の罰掃除の校則に気づかずに帰宅したことを揶揄して、クラスメイトの一部がそう呼び始めていたのだ。成谷のあだ名だけは律も知っていた。一方、自分が彼らからつけられていたあだ名は、“孤立くん”だ。うっか成谷くんのほうがまだマシだろうか、とつい不毛なことを考えた。

 そんなうっか成谷くんこと成谷は、机を拭き終えるとさっさと雑巾を片付けて、そのまま流れるように床の掃き掃除へと取り掛かり始めていた。まるで律のことなんか、はじめから存在していないと思っているような手際の良さだった。

 それでいい、と律は思った。読書の邪魔をされるくらいなら、自分のことなど無視してくれた方が好都合だ。再び視線を本に落とす。人間失格者の男は、薬物中毒に溺れ、脳病院へと強制入院させられたところだった。哀れな男は父の重圧に怯え、世間に怯え、異性に怯え、友人にすら怯え、ついに自身に失格の烙印を押したのだ。律はそんな葉蔵の人生を、他人事のように読み流した。

 やがて日は沈んでいく。人間失格者が、廃人という烙印を喜劇名詞に例えたところだった。ふと、斜陽の放課後には似合わない、陽気な鼻歌が耳に入ってきた。顔を上げると、成谷が自在箒を振りながら歌を歌っていたのだ。

「ウィーアーザチャンピョンズ──」

成谷の英語の発音は、とてもじゃないが褒められたものではなかった。海の向こうの人たちが聞けば、『Eng“r”ish』と揶揄するだろう拙さだ。

 しかしその声量は、沈みゆく陽を押し上げるかのごとく熱を増していく。「ウィーアーザチャンピョンズ、ウィーアーザチャンピョンズ」……気づけば四十畳ほどの教室は、彼の単独ライブ会場となっていた。

 歌いながら彼自身も熱を上げたのだろう、箒はスタンドマイクへと変わり、成谷は拳を掲げて熱唱し始めた。若くして天へと旅立った、かのボーカリストの如く。

 律は、何もないはずの自分の内側が震えているように感じた。理由はわからないが、この少年の恥も世間体もかき捨てた大胆な歌声が、振動となって自分へ伝わっているように思えたのだ。もしも律が楽器だったなら、共に音を鳴らしただろう。律は成谷の歌う姿に見惚れていた。

「オーブザヴァール……」

 教室中に、拙い英語の熱いファルセットが轟いた。もしも律がアリーナ席の観客だったなら、このうら青きボーカリストに歓声と拍手を浴びせたはずだ。しかし教室の隅で小さく佇んでいた彼は、代わりに一言の感想を発するのみだった。

「ずいぶん古い曲を知ってるんだね」

 熱くなった胸の内からでさえ、そんなありふれた言葉しか出てこなかった。律は空っぽの胸中から、やっとの思いで声を吐き出した。自分から他人へと話しかけるのなんて、随分と久しぶりのことだった。

「えっ⁉︎」

 成谷はよほど驚いたのか、素っ頓狂な声をあげてこちらを向くと、そのまま黙りこくってしまった。なるほど、確かに彼はカナリヤだ、と律は思った。成谷の隣の席の、ザネリの野郎──沢根英里のことだ。律は彼を心の中でザネリと呼んでいた──がそう言っていたのを、盗み聞いていたのだ。

 炭鉱のカナリヤは、有毒ガスの発生を感じると鳴くのをやめ、周囲に危機を知らせるという。ならば彼の美しい鳴き声を止めてしまった自分は、メタンか一酸化炭素といったところだろうか。律は自嘲した。

 一方成谷は、自分でも人前で歌っていた自覚がなかったのだろう、慌てて口を塞ぎながら視線を泳がせ、狼狽えている様子だった。どうやら彼は、思っていることをそのまま顔に出してしまう性合いらしい。まるで顔に動揺という字が書いてあるかのような、わかりやすい仕草だった。

「……知ってるのか?」

 少しして、落ち着いたらしい成谷がそう言った。彼の表情にかすかに嬉しげな赤みが差したのを見て、律はひとまず安堵した。

 彼の歌っていた“伝説の勝者”という楽曲について、律は知っていることを語った。律や成谷の年齢からすれば、それは少々古い世代の曲だ。しかし一時的とはいえ音楽を趣味にしていた律にとっては、十分すぎるほどメジャーなロックバンドだった。クラシックや電子音楽に傾倒しがちだった彼でも、ジャンルを越えた魅力を感じるほどだったのだ。

「僕は生憎、ロックにはそこまで詳しくないけれど……ピアノが好きなんだ。良い趣味だと思う」

 律は空っぽだと思っていた自分の内側から、湧き出るように言葉が溢れてくることに驚いていた。作曲者のボーカリストはピアノが好きで、律が幾度も焦がれていた“革命”のショパンからも影響を受けていたという。音楽というものは、思わぬところに接点ルーツがあるものだ。律は語りながら、音楽の世界に感服していた。

 気づけば律の口から、自然と“放浪者の狂詩曲”という題名が出ていた。あの曲は前奏からオペラを彷彿とさせるコーラスと、ゆったりとしたピアノの旋律が流れ、その後もさらに激しい転調を繰り返す革新的な楽曲だった。律は、伝説の勝者達の作品では、あの曲が一番好きだった。

 一方成谷は、急に増水した川のように話す律に対し、少し驚いた様子だった。しかし暫くすると彼はだんだんと懇意的な表情になり、「“スカラムーシュ”って何かわかるか?」と尋ねてきた。放浪者の狂詩曲の、歌詞に登場する単語だ。成谷もあの楽曲が好きで、その難解な歌詞の意味を尋ねているのだろう。律は知っていることを答えた。

 “スカラムーシュ”、“ファンダンゴ”、“ガリレオ”、“フィガロ”……どの単語の意味も、知識としては知っていた。しかし律はそれらを語りながらも、こうして説明すればするほど、成谷が却ってあの熱い青さを失ってしまうのではないかと、徐々に不安になっていった。

 先程彼を響かせた成谷の歌声には、意味も知識もかなぐり捨てた魅力があったのだ。このまま無粋な解説なんかを続けたら、彼の吹き抜ける空のような青さに、曇りが掛かりそうに思えてならなかった。

「……多分、彼はこうやって解説されることは、望んでいないと思うな」

 律は作詞したボーカリストの言葉を借りながら、やんわりと成谷の探究心を止めようとした。しかし、どうやら言葉の選び方を間違えたらしい。成谷は額に皺を寄せ、憤りを感じている様子だった。

 また間違えてしまった。律は本当に、他人と会話を交わすということが大の苦手だった。今までの人生経験で、それは嫌というほどわかっていたはずなのに、自分のような毒ガスなんかが、カナリヤくんに話しかけるべきではなかった。律は後悔した。

 彼の後悔もむなしく、成谷は既に不機嫌そうな顔で俯いたり仰いだり、何やら考えあぐねている様子だった。彼の方も、もう何を言えばいいのかわからないのだろう。気まずくなって、律は読書を再開するふりをして、本に目を落とした。ただ、一さいは過ぎていく。

 すると成谷は何を思ったのか、律が読んでいる本について尋ねてきた。面白いのかよ、と聞かれたので、面白くはない、と簡潔に答えた。しかしどうやら、その返答も彼の気に障ってしまったらしい。

 その後も成谷は律の読む人間失格に難癖をつけたので、律は仕方なく正論を述べて彼を説き伏せた。そうして毒を突きつけられた成谷は、やっぱりまた黙ってしまい、それからはもう、引き潮のように律から離れていってしまった。

 あとがき。人間失格者の手記は、他者の視点で傍観され、彼のことは『神様みたいないい子でした』と表現されていた。律は葉蔵の手記をもう一度斜め読んでみたが、彼が神様みたいないい子と表現された所以は理解できなかった。どうやら案外、自分は読解力に欠けていて、あまり賢くもないらしい。

 律は帰り際に、既に無人となっていた図書室へと寄り、貸出台帳に名前を記入してから、人間失格を返却棚へと戻した。そうしてその本を手放したとき律の脳裏をよぎっていたのは、昭和初期の薄ら曇った光景ではなく、令和今日の斜陽の教室だった。

 一応律は、その後もう一度教室を覗いてみた。しかし夕陽が落ちてすっかり暗くなった教室に、やはり成谷の姿は見当たらなかった。


 それから律は、さっきは成谷と何を話したのかもわからない、混乱したとも腑抜けたとも言えそうに渦巻く空っぽの体を、なんとか自宅へと歩いて運んだのだった。後に残ったのは、『話しかけるんじゃなかった』という、未練がましい後悔だけだった。

 例えるなら、毒ガスは間違いなく悲劇名詞だろう。カナリヤは、対義語アントニムだ。先の夕方のゲリラライブは、惑星直列のような偶然の奇跡で、自分はこの先もう二度と、あの青い歌は聞けないのだろう。悲しい、寂しい、というよりは、只々残念、という気分だった。

 波というものは、押し寄せるときよりも引き返すときのほうが強く感じるものだ。流木は、またも砂地に転がった。

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