第5話 太陽の死後
石がこすれあい、砂となっても、家はまだそこにあった。地球にまだ小さく潜んでいるのは小さな虫や微生物だけになった。
もはや立っているものは家だけだった。庭に生えた木もそのままだったが、次第に焼け焦げていった。太陽が死を迎えるにあたって膨張しはじめ、その熱のために生物や植物が死滅したのだ。
太陽は水星や金星を呑み込みはじめ、やがて地球に近づいてきた。
太陽を太陽たらしめる炎は、かつて人間という生物が存在したころ、神聖なものであり、そして地獄を地獄たらしめる業火でもあった。地球は地獄になりつつあった。だがそれを地獄と形容するものはもういなかった。
地球は滅びた。
それでもまだ呪いの家はそこにあった。
宇宙を漂い、もはや誰も観測する者がいなくなった空間をただ流れていた。
さらに途方もない年月が流れ、やがて太陽系が死を迎えた。エネルギーが一気に膨張してから、今度は収縮していく。あたりの星々は潰れて粉々になり、粒子にかえっていく。それでもまだ呪いの家はそこにあった。
とうとう収縮が呪いの家にまで届いたとき、呪いの家は誰も聞くはずの無い音を立ててプチッと潰れ、ただの何かになった。
宇宙は死んだ。
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