【66】完全防備した一行
『あの、聖女様。人間たちはその……あのままでよいのですか?』
「君は気にしなくて大丈夫だからね」
にっこり笑って枯れ木人形に答える。
それから同行者一行を振り返る。
言われたとおりお行儀良く正座しているアムルちゃんたちに言った。
「反省した?」
こくこく。
「もうこの子たちいじめない?」
こくこく。
「私が止めたらちゃんと我慢する?」
こくこくこく。
「よし。じゃあ一緒に行こう」
「やったあ! お姉様大好き!」
アムルちゃんが立ち上がり、真っ先に抱きついてくる。
「さすが聖女カナデ様。懐が深くていらっしゃる」
「だなー。こりゃますます腕の振るいがいがある」
「主様、今度はどんな面白いことをされますか?」
ん? 君たち、もしかして私の言いたいことが半分も伝わってないのかな?
枯れ木人形が私の袖を引く。
『聖女様……本当に、我らは無事に、生きて……』
「大丈夫! 安心してこいつらは私が止める!」
――そんなこんなで。
枯れ木人形の案内で、私たちは洞窟の奥へと進んでいった。
洞窟は予想以上に入り組んでいた。どうやらいくつも分岐があって、その先々に大小の水場――幻の毒沼が点在しているらしい。
今、案内してもらっているのは、その中でも最も大きな沼地。彼らの集落があるところだ。
「……けほ」
少し咳き込む。
換気されない洞窟奥、毒の沼から放たれる瘴気は、さすがの私でも眉をひそめるものだった。
大丈夫ですかと枯れ木人形が気遣ってくる。私は心配ないよと手を振る。
それよりも、気になるのは仲間たちの方だ。ディル君、そして覚醒したアムルちゃんはともかく、ご両親は普通の人間のはず。
「皆、平気?」
「はい。まったく問題ありません」
くぐもったお父様の声。
――ガスマスクで完全防備した一行が雁首揃えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます