【47】マジ天使!
「あぅあぅ」
「ど、どうしよう……」
事態がよりややこしくなってしまった。
呪いのオーラを抑え込むことに成功したと思ったら、オーラが子どもの姿に変わった。
二歳児、くらいかな。
黒髪、黒目。小さな手足にぴったりの黒い服を着ている。黒いオーラが消えた呪いの本を、大事そうに抱っこしている。
「……」
一歩、一歩、吸い寄せられるように近づく。
黒髪。黒目。丸いほっぺ。
男の子、かな。
テーブルの上にぺたんと座った坊やに視線を合わせる。
そーっと……手を振った。
「……あー!」
にぱぁっと擬音が付きそうな満面の笑みで右手を振り返してくれた。
私はぐっと唇を噛みしめた。
「どうしようディル君この子めっっちゃカワイイ!!」
「落ち着いてください主様」
ええい止めるな。
しばらく激カワの坊やとたわむれる私。
意を決して抱っこすると、ぐずることもなく大人しくしてくれる。目が合うと、また笑った。
「どうしようディル君この子めっっちゃカワイイ!!!」
「落ち着いてください主様。いくら俺と主様の共同作業で生まれた子だから――ってそんな死んだような目で見ないでください。さすがの俺も傷付く」
ディル君が尻尾をぺたんとする。
ごめん。ちょっと動揺してしまった。
改めて、男の子を見る。大人しく抱っこされているが、本は決して手放そうとしない。
「この子、どう思う?」
「主様の力で呪いが昇華され、人の姿を取ったのでしょう。人化そのものは珍しくありませんが、元が呪いのオーラというのは俺も記憶がありません」
「そっか……とにかく、この子を生み出したのは私、ってことだよね。それならちゃんと責任取らないとね……」
「見たところ、呪いは完全に制御されているようです。これなら、他人に悪影響を与えることはないでしょう」
「良かった。でも、本当に可愛い。天使みたい」
頬ずりする。柔らかい。
ちょっと本が邪魔だけど……。
「失礼」
ディル君が本を覗き込む。
「主様。この子は無害そうなのですが、この本から妙な気配が」
「え?」
「本を開いてくれるか?」
ディル君が男の子に言う。こんな小さな子にこちらの意図が伝わるかな。
「う!」
返事ひとつ。「よいしょ」って掛け声が聞こえてきそうな仕草で本を開く男の子。
かしこい! えらい! マジ天使!
本の中は真っ白だった。ディル君は言った。
「おそらくこれ、名前書いたら呪殺できますね」
「天使のデスノート!!??」
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