【27】スバラシイ


 ――街を出てから、ようやく説明があった。


 アムルちゃんはいわゆる良家のお嬢様で、踊りで効果を発動させる珍しい魔法の使い手らしい。冒険者さんたちは彼女の家に雇われた人たち。付き合いはかなり長いそうだ。

 なまじ小さいときからアムルちゃんの性格、言動を見てきたためか、「もうこうなったら止まらないとき」を熟知していた。


 で、それが今――と。

 やめてくださいませ。


 冒険者さんが言うには、アムルちゃんは人一倍踊りが好きで、「この力を使って皆の役に立つんだ!」と常々周囲に宣言していた。

 素晴らしい。


 同時に、「ひとりでも多くこの素晴らしい踊りの世界に引き込みたい! 沼に引きずり込んでやりますわ!」とも宣言していた。

 沼……。


「で、お嬢の眼鏡にかなった第一号があんたってわけだ。カナデのお嬢さん」

「スバラシイ」

「報酬は俺から旦那に言ってはずんでもらうから……どうか付き合ってやってくれ」

「スバラシイ」


 バグったレトロゲームのように同じ文言を繰り返す私に、冒険者さんはひたすら頭を下げた。


 私はふうと大きく息を吐いた。

 あんまりな展開だけど、まあ一応、理解はできた。


 自分のやりたいことに熱中すること、誇りを持つことは、大事だ。

 やり方は強引だが、私はアムルちゃんのまっすぐさがまぶしく、ちょっと羨ましい。


 ――私は。カナディア様に顔向けできるような生き方ができているのかな?


「ところでカナデのお嬢さん。あんた、どっから来たんだ? 巡礼者にしてはちょっと世間知らずが過ぎるように思えるが」

「スバラシイ」


 ジト目で見られた。

 すみません。姑息な女ですみません。


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