【17】小さなイノシシですね
――と、いうわけで生長させた。
種籾にやった要領で魔力をふりかけると、わりと簡単にできた。できてしまった。
最近、こういうの多くない? 私。
何かこう、大事な過程って奴をすっ飛ばしすぎのような。
まあいいか。楽で楽しいし。
これからは一日の終わりにカナディア様に懺悔するようにしよう。そうしよう。
人としてのギリギリラインを見失わないように……。
「主様? どうされたのですか、そんな追い詰められたお顔をして」
「ううん。何でもないのよ。強いて言うなら、自分と戦っているの」
「? そうですか。敵がいたら遠慮なく言ってくださいね。
パワーワード。
何はともあれ、作業が一段落ついて休憩する私。田んぼの傍らに腰掛け、ただ風を感じるだけの時間だ。
はー……やっぱいいわ。落ち着く。
そのとき、一羽の鳥が私の肩に留まってきた。手のひらよりも小さい、綺麗な緑の鳥だ。
ずいぶん人懐っこく、私が指を差し出すとその上にぴょんと飛び乗る。
くるくると首を傾げる様子がとても可愛らしい。
ああ、癒やされる。
「それ食べますか?」
「台無しだよ」
ディル君の台詞に驚いたのか、小鳥は一目散に飛んでいった。あー、残念。
飼ったことはないけど、鳥と暮らす人たちの気持ちがちょっとわかった。
「主様、主様」
「ん、どうしたのディル君」
「イノシシが近づいているみたいです」
「ほんと? そうか……害獣対策、考えないといけないね」
「対策、ですか。あ、来ました」
軽くディル君が報告した直後。
――地響きで私のお尻が五センチくらい宙に浮いた。
きしみを上げながらそちらの方に顔を向ける。
確かにイノシシがいた。牙二本、真っ赤な目、毛むくじゃらな身体、体高――およそ三メートル。
「小さなイノシシですね」
「小さなイノシシですね!?!??」
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