第8話 シュベェルツ部隊

都内某所。

日本に入国したシュヴェルツ部隊の5人が集まっていた。


「レオン王子の居場所はわかったか?」


部隊を率いるシュヴェルツ大将が部下に聞いた。


「はい。帝都ホテルに滞在しているようです。」


「帝都ホテルか。わかった。監視を怠るな。」


「はっ。」


「ふん。わざわざ、平和ボケした日本に来るとはな。殺してくれと言ってるようなものだな。」


シュヴェルツはニヤリと笑い手元にあるウィスキーを飲み干した。





帝都ホテルをチェックアウトしたレオン達は葵の用意した車に乗り込み移動をはじめた。

後続には司の車が続く。

高速に乗るとルームミラーを見た。


「・・・。」


パーキングエリアを見付けるとウィンカーを出す。

司の車に続き一台の車がパーキングに入ってきた。


「アオイ?どうしたんだ?」


「ごめん、レオン。ちょっと喉が渇いちゃってここでお茶しない?」


「・・・。ああ、いいよ。」


葵は車を降りると後ろに車を停めた司に近づく。


「桜葉さん。先にレオン達とコーヒーショップでお茶しててください。私は後から行くので。」


「えっ?世良さんは?」


「私はちょっとあそこに。」


屋外に併設された喫煙所を指差す。


「レオン達の事お願いしますね。」


葵が司の横を通り過ぎると甘い匂いが司の鼻腔をくすぐった。


「世良さん?」


「ああ、私の事は葵で良いですよ。」


振り返ると笑顔で司に言った。

葵は、喫煙所に向かいながら後を付けてきた車をチラリと見る。

一人の男が降りてきて、レオン達の後を追う様にコーヒーショップへ入っていった。

それを確認すると、煙草を吸うことなく尾行してきた車に近付いた。




「待たせてごめんね。」


葵は司の隣の席に座る。相変わらず甘い匂いがした。


「ふん。女連れで観光とは良いご身分だな。」


男は鋭い目付きでレオン達を捕らえていた。

暫く談笑していたが席を立ちコーヒーショップを出ていった。


「やっと出発か・・」


レオン達と司の車がパーキングを出ていく。

男も車に乗り込みエンジンをかけるが何故かエンジンがかからない。

男は焦って何度もエンジンをかけようとするが全く反応しない。

そうしているうちにレオン達の車は見えなくなってしまった。


「くそっ!どうなってるんだ!!」


男は悔しそうに言い放つ。




「ふふっ。」


葵は運転しながら機嫌が良さそうだった。


「アオイ?どうかしたの?何だか楽しそうだけど。」


「何でもないよ、レオン。」





********





レオン達は郊外の別荘に到着した。

洋風の大きな屋敷に目の前には湖がある。


「ここですか?」


「そう。部屋数もあるから桜葉さんも泊まっていけるよ?」


「・・・。」


「どうかした?」


小首をかしげて葵が見つめてきた。


「いや、何でもないよ。」


「そう?」




荷物を別荘に入れると各々割当てられた部屋へ別れた。

司は別荘周辺を一通り見て回り戻って来るとリビングには葵が居た。


「お帰りなさい。どうだった?」


「ああ、怪しい所は無かったよ。」


「そっか。良かった。」


安心した様に微笑んだ。


「みんなは?」


「うん。皆自分の部屋に居るよ。桜葉さんはレオンの隣の部屋を使って?」


「わかった。その、あ、葵の部屋は?」


ただ名前を呼ぶだけで胸が高鳴る。


「私は1階の部屋を使うから。そういえば、今日は橘さんは一緒じゃないの?」


「あいつは調べものがあるみたいで、後から合流する予定だよ。」


「・・・。そうなんだ。桜葉さんも今日はもう休んだら?疲れたでしょ?」


「じゃあ、そうさせてもらうよ。」





********





「どういう事だ!?」


シュヴェルツは苛立ち声を荒げた。


「申し訳ありません。車に細工されてしまい見失ってしまいました。」


「お前は満足に尾行も出来ないのか!?そんな奴は俺の部隊にはいらん!」


「そんな・・」


「だがお前に名誉挽回のチャンスをやろう。明日の夜までにレオンを始末しろ。それがお前が生き残る唯一の方法だ!いいな!」


シュヴェルツは乱暴に電話を切ると、近くにあったグラスを床に叩きつけた。


「小細工しおって!許さんぞレオン!!」




「くそっ、誰がこんなことを!!」


男の車はバッテリーの配線がプラス・マイナス逆に繋がれていたのだった。

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