俺は君のことを忘れない ~俺の忘れられない2週間の話~
柊 つゆ
第1話 出会い
俺は、母親の都合で高校1年生の8月1日から15日までの約2週間両親の都合で日本の東の方にある小さな島に来ていた。
当然、友達のいない俺は1人で家にいる。
1人でいることは嫌いじゃない。
でも、娯楽はほとんどないし、外の景色は海か山の二択でたまに民家や人があるくらい。
俺は、来てから2日目で家にいることに飽きてしまって外へと探検にでることにした。
目的地は家から歩いて30分くらいのところにある崖だ。
暇つぶしくらいにはなるだろう。
俺は、水筒と財布をバッグに入れて家を出た。
ちょうど30分くらいだろうか。
少し疲労が溜まったので休憩をしようとベンチを探していたら、近くで波の音が聞こえた。
周り少しをうろついてみると、崖のようなものを見つけた。
俺は、疲れを忘れてさっそく目当ての崖へと行くと、そこにはエメラルド色に輝いて波を打つきれいな海が広がっている。
周りには誰もいない。
以外に悪くないな。
この島に来て初めて良かったと思った瞬間かもしれない。
そう思った俺は、気持ちに身を任せて柵に手を当てて身を半分乗り出した。
そして、ここに来るまでの疲れもあって全体重をかけた。
ぎしり
柵の右側にある柱が倒れるのが見えた。
やばい。
でも、気づいた時には既に遅かった。
崖下にあるごつごつとした岩が正面に見える。
このまま落ちれば死ぬかもしれない。
俺は重力に身をゆだねるという形でそのまま岩のあるところへと落下していった。
波音がかすかに聞こえてゆっくりと目を開けるとそこには洞窟のような場所だった。
助かったのか。
「良かった。やっと起きたね」
声の聞こえた方を振り返ってみると、そこには自分と同じくらいの年をした女の子がいた。
「大丈夫?痛いところはない?」
目を開けると女の子がこちらをのぞき込みながら話かけてきた。
声をかけてきた女の子は俺と同い年くらいで髪は長く腰のあたりまではあり、体は女の子であるということを差し引いても華奢と呼べるくらいだった。
「ここはどこ?」
崖から落ちてからの記憶が一切ない。
どうしてこんな洞窟にいるのか。
どうやって俺を助けたのか。
「崖の下にある洞窟。さっき君が落ちてきたからそこに横に寝せておいたんだよ」
「そうだったんだ。ありがとう。」
俺は素直にお礼を言った。
「せっかく来たんだから私の探し物に付き合ってよ」
この女の子は純粋な笑顔でお願いをした。
まるで、俺の返事が分かっているかのように。
「探し物?」
まずは話を聞く。
「ブローチを無くしちゃったんだ。ちょっとそこら辺を一緒に探してくれない?」
少し、軽口を叩いてみた。
「意外とおっちょこちょいなんだね」
「そういう女の子のほうがかわいいでしょ」
夕日に照らされて笑顔でお願いをするこの子は自信に満ち溢れていた。
そして、それと同時に凄く可愛かった。
まあ、助けてくれた恩もあるしこれくらいのことはするべきだろう。
俺は、幸いにも洞窟はそこまで奥まで続いていなかったため、すぐに見つかると考えて探した。
そして、探し始めてから15分くらいたってから岩の影にそれらしきものがあるのを発見した。
俺はあったよと声をかけようとすると、先に奥の方から女の子の声が聞こえてきた。
「ないねー。もうそろそろ日が落ちるから今日はこれくらいにしようか。明日も探すから来てくれるよね」
その女の子は朱色に染まった顔に満面の笑みを浮かべて聞いてきた。
それに対して俺は無意識のうちに右手に握っていたブローチをポケットの中に隠した。
自分でもどうして探し物を隠したのか分からない。
そして、ぎこちない笑顔で振り向きながら答えた。
「いいよ」
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