僕(犬)と主(人間)のお話

MZ

第1話 出会い

僕は犬だ。

至って、そこら辺にいるただの犬。

ただ一つ、違うところがあるとすれば...


僕は、主に恋をしている。

おかしいでしょ?他種族、それも、あの【人間】に恋だなんて。僕だって変なのは分かってる。

でも、どうしようもないくらい大好きなんだ。

好きで、好きで、大好きで...だから主、そんな...そんな......そんな............





泣きそうな顔しないでよ...



_________________________________________

『はぁぁぁ学校づーがーれ゛ーたー』


俺の名前は犬飼 翼(いぬかい つばさ)、今年から高校2年生になる。


『もぅ、なに間抜けな声出してんの。ほらっ、早く洗濯物を出すっ!』


『わーってるって!...たくっ、帰ってきたばかりなんだから少しは休ませろよ...これだから最近のおばさんは『あ゛?』麗しきお嬢様、今すぐお洗濯物をお出します』


この怖いおば...

...え?...睨まれてる...えっ、心読めんの???嘘だろ...?

...この美しき女性は犬飼 茜(いぬかい あかね)、俺の母だ。


『あのねぇ、“お゛を付ければ良いってもんじゃないのよ?...はぁ、全く、誰に似たんだか』


心外だ、僕の性格は母譲りだというのに...。


『...ま、いいわ、それより、早く着替えて来なさい、今日は外食よ』


『え?マジ?』


初耳だ。


『マジマジ、父さんが帰ってきたら直ぐにお店に向かうからね』


『ちなみにどこいくの?』


『ほらっ、近くに新しくお店できたじゃない?なんて言ったかしら...確か、ドット...ドッチ...』


『もしかして、ドッグ&キャット?』


ドッグ&キャットとは、最近新しく出来た定食屋である。ペットショップみたいな名前なのにこれで飲食店というから驚きである。


『そうそう!そこね、とーっても美味しいらしいの!!折角だから、家族で行ってみたくって!』


なるほど、それは楽しみだ。


『んじゃあ、父さんが帰ってくるまで、俺は寝るわ』


『はいはい、寝過ごすんじゃないわよー』


母の忠告を聞きながら、自分の部屋のある二階にあがる。





ピピピピ ピピピピ ピピピピ

俺が、あらかじめスマホでかけておいたタイマーのなる音が聞こえて、眠たい目を擦りながら起床する。


『んー...今何時だ?』

《23:46》


...あ、寝過ごした。


『...母さんも起こしてくれりゃあ良いのに...』


そんな文句を言いながら、リビングのある一階へと足を運ぶ。


すると、そこには落ち着きのない母の姿があった。


母はこちらに気付いて

『ん?あぁ、翼じゃない、やっと起きたのね』


『おはようさん、で、どしたん?なんか変にソワソワして...そういや、父さんは?』


父の姿が見えなかったので、俺は咄嗟に思った疑問を口にした。


『それがねぇ...まだ帰ってこないのよ...連絡もつかないし、心配でねぇ...』


父は普段、遅くとも22時までには必ず帰宅する人だ。確かにこんな遅くまで帰ってこないのは珍しい。


ガチャ キー

玄関の扉の開く音が聞こえた。


『もしかして父さんじゃないかしら?全く!!こんな時間に帰ってきて!文句の一つや二つ言わないと気が済まないわ!』


ありゃりゃ...こりゃ母から父へのどやされコース決定だな。


そんな事を思って俺も玄関に向かう。


するとそこには、母が"何か"を覗き込んでいる姿が見えた。

一体何を見ているのだろう。


気になって俺は母の後ろに立ち、横から覗き込むように姿勢を変えた。

するとそこには


『.........きゅーん...』


ちょっと汚い、黒い毛並みをした子犬の姿があった。

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僕(犬)と主(人間)のお話 MZ @makkuri

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