第4話
社長、店長、園田、麻紀の順番に飲み物を所定の位置へ置くと、店の奥で騒いでいる一角へ声を掛けに行く。
社長夫人たちがそろう前に座っていてはいけないので、麻紀は日めくりカレンダーを今日の日付にして、郵便受けへ向かう。
新聞を持って店に入ろうとしたところで園田にぶつかりそうになった。
「ごめんごめん、ありがと」
麻紀の手から新聞を受け取ると、園田は店に入る。
それに続いて麻紀も店に入ると、まだ社長夫人は座っていない。
困った麻紀は、園田と社長が電子たばこをふかしているのを横目に見ながら、先にお盆の特別展示を片付け始めた。
今日は八月十三日。
お盆の初日である。
ここは仏壇仏具販売店の支店で、麻紀は入社四年目だ。
お盆までの書き入れ時は、七月から今日まで、本当ならば定休日である月曜日も店を開け、無休で営業していた会社は、明日から三日間お盆休みに入るということで、今日は一日かけてお盆の特別展示を片付けるというのが、主な仕事になるだろう。
従業員の休みは本来交代制のはずだが、麻紀は今日で十三連勤目だ。
最終日の今日はほぼ開店休業状態で、お盆の特別展示やら盆提灯の売り場やら、外に展示されている墓石の清掃に加えて、店の中から倉庫まで、ありとあらゆる場所の片付けに追われる。
それでも営業中ではあるので客は来る。
何かしら買い忘れた者、物珍しさと慌ただしさから冷やかしに来る者、その他さまざまな用件で訪れる客の相手をしながら、片付けに追われなければならない。
在庫の提灯やら展示机やらを、本店の倉庫にしまうのには男手がいる。
ちょうど夏休みということで、東京の大学に通っている社長夫婦の息子が帰省しているようだ。
家から一緒に連れてくればいいものを、人手が必要になったらわざわざ社長夫人が迎えに行くつもりだと、先程コーヒーが入ったと声を掛けに行ったときに、社長夫人と園田の会話で聞いた。
大層大事になされているらしい。
麻紀が三つ目の小さな飾り提灯を箱に収めたところで、店長が休憩室から店へ出てきた。
「おうおう、早くから片付けありがとな。今年はさっさと片付けて早く帰ろうな」
にこにこと笑いながら定位置につき、もうすっかり冷たくなったコーヒーをすする店長を尻目に、麻紀は愛想笑いを浮かべる。
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