第3話
麻紀は塵取りを片付けると、洗濯物を畳んでいく。
それが終わると、吐き気を抑えながら社長夫人と麻紀の分以外のコーヒーを入れる用意をする。
放っておけばコーヒーが出来上がるように準備をし、倉庫に入りほうきを持って外へ出た。
ぎらぎらと太陽が照り付ける。
墓石の間に張られている蜘蛛の巣を取り除きながらコンクリートを掃く。
それもそこそこに、外に吊るしてあるタオルに水を含ませると、固く絞って墓石を拭く。
汗が伝ってコンクリートに染みを作る。
二つほど拭き終わったところで、タオルを持って店に入る。
涼しい店では、出勤したての社長がパソコンの前で電子たばこを吸っている。
嫌な臭いが麻紀の吐き気を悪化させる。
「おはようございます」
「……おう」
麻紀はそのまま休憩室に入る。
タオルを洗濯機から出る水で洗って物干し台に掛けると、手を洗ってコーヒーを入れる。
誰も居ないのをいいことに、一度えづいてしまった。
麻紀はコーヒーが飲めない。
匂いを嗅いだだけでも胃が痛くなってしまうのだ。
この会社は朝、必ずみんなでコーヒーを飲む。
麻紀しか飲まない紅茶は、少なくなれば麻紀が隣のスーパーまで買いに行く。
本当のところ、麻紀は飲み物さえも欲しくなかったが、一緒の時間に何か飲んでいないと、文句を言われるので仕方なく用意する。
社長夫人専用のカップを、専用お盆に伏せて置くと、麻紀は別のお盆にコーヒーを用意する。
そこでようやく、樽のような巨体を動かしながら店長が出勤してきた。
「おはよぅ」
「おはようございます、コーヒー持って行っときますね」
「ほいほーい」
慌ててコーヒーを集めてお盆に乗せると、汗とカビの臭いがしてくる前に休憩室を出た。
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