七竜世界の神話

神話より ~創世から人間の誕生まで


 遙かな昔混沌が充ちていた空間がありました。

 そこに神が降り立ち、神は混沌から七柱の竜を生み出します。

 次に神は混沌から六柱の精霊を生み出しました。


 神は残った混沌を一つの丸い塊へと練り固めて、七柱の竜に言いました。


「これは世界ハルメニアと言う。お前たちはこの世界を管理せよ」


 次に神は六柱の精霊に言います。


「お前たちは、この世界の調和を保て」


 そう言うと神は去って行きました。


 世界の管理を任された七柱の竜は、未だ大地に混沌がドロドロと揺蕩たゆたう世界に降り立ちました。

 竜たちはそれぞれに考えます。

 この混沌をどうしたものか。


 一柱の竜、白竜は、その口から凍える息吹を浴びせ、その混沌を凍らせてしまいます。

 一柱の竜、赤竜は、その口から炎を吐き出し、大地を炎で満たして、混沌を干上がらせてしまいます。

 一柱の竜、青竜は、その口から大量の水を吐き出し、大地を水没させて混沌を細かく散らしてしまいます。

 一柱の竜、緑竜は、その口から生命の息吹を浴びせ、混沌を養分に大地から草木を芽吹かせます。

 一柱の竜、金竜は、その混沌をさけて、天空へと飛び立ちました。


 それを見た、白、赤、青、緑の竜は怒りだし、手近にあった混沌を丸めると、力一杯に金竜に向かって投げつけます。赤竜はよほど頭にきたのか、とても大きな塊を作り出して投げつけ、さらにそれに炎を吹きかけました。

 金竜はそれらの混沌の塊をひらりひらりとよけてしまいます。


 力一杯投げられた混沌の塊は遙か遠くまで飛んでゆき惑星となりました。

 さらに赤竜が投げた巨大な火球は太陽となったのです。


 その間に一柱の竜、銀竜は、その大地の地下深くへと潜り込んでしまいました。


 一柱の竜、黒竜は、残った混沌をすべて飲み込み、その身に取り込んでしまいます。しかし混沌はあまりに多く、黒竜はゲップをしました。そのゲップはふらふらと飛んでゆき、ハルメニアの周りを回る月となりました。


 精霊たちは、竜たちの行いで急変したハルメニアを駆けずり回りその気候を、生命が生まれ出すにたる環境へと整えます。


 やがて、ハルメニアの気候は安定してゆき、大地から様々な生命が生まれ出します。


 しかし、ハルメニアには多様な動植物が生まれますが、いつまでたっても竜たちと対話のできる存在は生まれません。精霊にも知性はありますが、彼らはその存在があまりにも違いすぎて、竜たちはかれらのことは理解できません。


 七柱の竜たちは、寂しさのあまり。 

 まず自分たちと同じ存在を生み出せないかと試行錯誤します。

 竜たちは、親しい竜と交わり合い子を成します。ですが彼らの成長はあまりにも遅く、知性が芽生えるには遙かな時間が掛かってしまいます。

 しかも、まったく自分たちと同じ存在になるわけではないと分かりました。

 竜たちは我慢できなくなってしまいます。


 白竜は考えました。

 神は混沌から我らを生み出した。ここにある混沌を使えば知性ある生命を作り出せるのではないか?


 白竜は他の竜たちと話し合い、凍らせておいた混沌の一部を取り出して、地上に生まれたいくつかの生命に与えました。

 白竜の試みはうまく行き、ひとつの生命が知性を得て人間が生まれたのです。


 七柱の竜たちは、それはそれは喜びました。

 けれど人間はあまりにもひ弱く、放っておくとすぐに死んでしまいます。

 それを憂いた竜たちは、それぞれが人間に祝福と加護を与えます。


 白竜は、信念を貫き通す「正義」の心を人間に与えました。

 赤竜は、困難を打ち破る「勇気」の心を人間に与えました。

 青竜は、その身を慎みなさいと「純潔」と「貞節」を守る心を人間に与えました。

 緑竜は、驕ることのないように「慈愛」と「寛容」の心を人間に与えました。

 金竜は、この過酷な大地で絶望しないようにと「希望」の心を人間に与えました。

 銀竜は、この過酷な大地で生きてゆけるようにと「忍耐」の心と、「知識」を得る力を人間に与えました。

 黒竜は、欲しいものをつかみ取る「欲望」を与えようとしますが、他の竜たちは皆止めました。しかし黒竜は強引に「欲望」を人間に与えてしまったのです。


 六大精霊たちはそれを見て、ならば自分たちも、司る力の中からこの世界の調和を守る一助となる加護の力を人間に与えようとします。


 それを知った七柱の竜は気分を悪くしてしまいました。


 なので六大精霊は、彼らの与えた加護の力を竜たちからは見えないようにと、人間の心の中に勝手に与えてしまったのです。


 それから人間の髪は、竜の祝福と加護の影響を大きく受けて、その色が変わることとなりました。

 そして、心の内を表す瞳には、精霊の与えた加護の色が強く現われるようになったのです。

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