第4話 4杯目


 最近の僕は、ハイボールしか飲まなくなった。

 ウイスキーの中でも、スコッチが好きだ。

 相変わらず、水のように酒をがぶ飲みしては泥酔し、朝起きると記憶が飛んでいる。


 酒の話とは変わりますが、これを読んでくれている皆さんは、眉毛をいじっていますか?

 男性で眉毛をいじられる方は少ないと聞きます。


 僕は今の妻と付き合うまで、専用のカミソリで剃っていました。

 しかし、毎朝剃っていたらヤンキーのように、”鬼眉”になってしまい……。

 当時の彼女から「キモい」と言われました。


 ですので、以来。僕は妻に専用のピンセットで抜いてもらうようになりました。

 自分で抜くとまた抜きすぎて、細すぎると怒られるので……。

 あと最初の頃は抜くと痛みがあるのですが、慣れてくるとすごく気持ち良いです。

 僕だけかもしれませんが、眉毛を触られることでリラックスでき、寝ちゃうほど。



 話がかなり脱線しました。

 時代は変わり、僕がおっさんになった現在。

 泥酔した僕は毎晩のように、妻へ言うそうです。


「妻子ちゃん、抜いて~ ねぇ、抜いてよぉ~ 溜まってるって~」


 それを聞いた妻は呆れた顔で、こう言います。


「昨日、抜いたばっかじゃん……今日は抜けないよ」


 妻の言う通り、昨晩も同じやり取りをしているのに、記憶が飛んでいるので。

 話が嚙み合いません。


 その次の日も、僕は言います。


「今日こそ、抜いてよ~」

「はぁ……」


 ボケた老人を相手しているように感じるそうで、疲れるそうです。

 仕方なく、数本抜くためにベッドへ向かいます。


 ベッドの上で大の字に寝る僕は、既に夢の中。

 しかし、呪文のような同じ言葉を繰り返すそうです。


「抜いて……早く抜いて……」

「もうわかったから」


 そして数本、抜き終わったあと妻は僕に言います。


「ほら、抜いたけど。全然生えてないって」

 そう言って、抜いた眉毛を見せますが。僕はもう記憶が飛んでいます。

「ああ……」


 急に立ち上がったと思うと、トイレに向かうそうです。

 ここがとても大事なポイントです。

 僕の記憶はリセットされているようで、部屋に戻ってきて妻の顔を見ると、こう言います。


「妻子ちゃん、抜いてぇ……」

「は? さっき抜いたじゃん!?」

「あ、そう……」


 そして眠りについたと思った妻は、電気を消してリビングに向かい。

 マンガアプリを開いて、読書を楽しんでいると……。

 ゆらゆらと身体を揺らせた僕がまたトイレへ入ったと思ったら。

 再度、妻の顔を見てこう言うのです。


「ねぇ……眉毛、抜いてぇ」

「な、なに言ってるの? さっき抜いたじゃん」

「そっか……」


 これがしばらく繰り返されるのです。

 毎晩、毎日。

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