【 かず姉 】

 笑いながら、僕の短い黒髪を乱暴にワシャワシャする。


「か、かずねえ。ちょっと苦しい……」


「あっ、ごめん。苦しかった? 久しぶりだったから、懐かしくってつい」


 彼女は、そう言いながら、嬉しそうに舌を出す。


 1年前に見るよりも、かずねえの体は一段と大人びていた。


 今年で中学3年生になる年だ。

 僕は今、小学5年生だから、『4つ』かず姉の方が年上。


 背も大きくなり、僕の顔が丁度、かず姉の大きくなった胸にまっていた。

 離れても、まだその感触が頬に残る。


 照れながら斜め下の方を向き、熱くなったその頬を両手で冷ました。

 そんな僕の顔を見たからか、かず姉はこう言う。


「暑かったでしょ? ボクちゃん、スイカでも食べる?」

「あっ、う、うん……」

「よし! じゃあ、縁側えんがわで座ってて。今、切って持って行くから」


 僕は、かず姉から『』と呼ばれていた。


 それは、お祖母ちゃんがいつも僕のことを『ボクちゃん』と呼ぶからだ。



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