第2話


そこに居たのは大学のマドンナと言われる、星見酒ほしみざけ 歌夜かやでは無いか。




一体どうしてこんな辺鄙へんぴな地獄一歩手前みたいな場所に居るのだろうか。場違いにも程がある。


しかし、立ち去る気配もなし。


仕方ない、意を決してドアを開ける。




「あら、ちゃんとご存命でしたね」


「あ、ああ」




……どうか今のこの状況の説明をさせてはもらえないだろうか。


まず、歌夜さんは大学で見かけることは殆どないく、また、見かけたとしても私みたいな下級市民めは遠目からそのご尊顔を拝啓致すしか無いのである。故に美人への免疫は無いに等しいのである。




そして、目の前にその件の御人、歌夜さんが居るのである。この時の私の緊張状態は日韓における国家間の間柄くらいなものである。




まず、声が綺麗であった。いや、可愛いと称してもよいのではなかろうか。


この矮小な脳みそでは言語化致しかねるのが口悔しい。こんな事態になるくらいならば声に対する一般評価論と声質における他者に与える影響について研究し論文を書けるようにしておくべきだった。




「おーい、聞こえているかい?」




私が第一声について熱く、失敗の弁明と反省をしていたらどうやら少ないない時を使って沈黙という自分にとっても相手にとっても不利益を被る行為になってしまった。




小首を傾げて私の顔の前で手を振る仕草は動画化して全世界へ送信すれば世界の統一ができる気がする。




「え、ええ。突然の事でビックリしてしまいました」


「なるほど、人はビックリしてしまうと黙ってしまうのですね。勉強になります」




おっと、これは皮肉だろうか。いや、歌夜さんに限って相手を貶おとしめる言動を為さるはずはない。


よって歌夜さんは番面を素直に受け取る純粋なお方である事が察しられる。


若干頬が引きっっている感覚を覚えるが話を進めようと思う。




「ええと、それでこんな雨の中でどうしてここへ?」


「あ、そうでしたね。えっと……私はどうしてここにいるのでしょーか」




ザーと雨が降りしきる中私は小馬鹿にしてした『モテる男はこうするべし』のサムネのYouTubeを見て置かなかった事をここに後悔した。

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妄想ラブコメ @sinkisiki

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