第34話 空間魔術を習得する劣等生①

 降魔は双葉と少し出店を楽しんだ後、何故か双葉に第3練習場に連れてこられた。

 第3練習場は第1や第2よりは小さいものの、そのお陰で滅多に人が出入りすることがないため貸切状態だった。

 そこに何も知らされずに呼び出された降魔は双葉にその顔に困惑を宿しながら聞く。


「なぁ……どうしてここに俺を連れて来たんだ? ダイエットなら1人でやってくれよ」

「そんなのでこんな時に呼ぶ訳ないでしょうが! と言うかダイエットしないといけないほど太ってないわよ!」

 

 そう言って顔を赤くしながら怒る双葉。

 それを見て降魔は結構本気で言ったことを隠そうと思った。


「ならどうして俺を呼んだんだ?」


 降魔にはその理由が分からなかった。

 そんな降魔を他所に双葉は何故か誇らしそうに胸を張り言う。


「聞いて見て驚きなさい。——これはなんでしょうか?」


 双葉は肩にかけていたショルダーハックの様なものから1つの本を取り出した。

 その本はボロボロで、誰が見ても価値のなさそうな本である。

 しかし降魔の反応は違った。

 降魔は目をキラキラと輝かせて顔には歓喜が宿っている。


「こ、こここれは……!」

「そうよ、これは今回の私の優勝景品——空間魔術の指南書よ!」

「お、おおおおお!!」


 降魔は過去一の声を上げる。

 それほどに興奮しており気付けば双葉の手を握っていた。


「ありがとう。本当にありがとう。これで一歩近づいた気がする」

「わ、分かったから話してくれないかしら……手——」


 双葉は少し頬を赤らめながらそう言うと、降魔は『悪い悪い』と言いながら手を離す。

 それに少し残念そうにする双葉だったが、すぐに気を取り直して話し出した。


「この本を読む前に1つ忠告しておくわ」

「なんだ?」


 突然真剣な趣になった双葉に一体何を言われるのかと不思議な緊張をする降魔。

 だがその口から出たのは意外な言葉だった。


「———多分これは降魔も理解できないかもしれないわ」

「———どう言うことだ?」


 降魔はこれでも現存魔術は全て仕組みまで理解している。

 そして喪失魔術はたいていがその現存魔術の上位互換だ。

 なら多少は理解できるはずなのだが……


「双葉は俺がこの魔術を理解できないと言うのか?」

「……ええ。まぁあくまでも予想ではあるのだけれど。ただ何か1つ気づけば解けそうなのだけど、それが出るかが問題ね」

「……忠告ありがとう。ならそれをぶっ壊して見せるよ」

「ええ、頑張ってね。それじゃあ私はもう行くわ。そろそろパパと出店回らないと流石に可哀想だもの」


 双葉はそう言って第3練習場を出て行った。

 降魔は双葉が見えなくなると視線を本に向ける。

 そして1ページ目を開く。

 するとそこに一文書いてあった。


「——どう言うことだ?」


 降魔が首を捻ったその言葉は、



 ———空間とは宇宙であり世界でありことわりであり、人間の扱える物ではない———


 

(指南書のはずなのに初めに扱えないと言うのはどう言うことだ? もしかして指南書じゃないのか? だが、読んだ双葉が指南書だと言うのだから指南書なのは間違いないだろう。早く次のページを読むか)


 降魔は特にその言葉の意味を考えることなく次のページを開く。

 最初の1ページ目が空間魔術の全てと知らずに。

 そして最後に知ることとなる。



 空間魔術の真の名と意味を———



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 この度作者の処女作である『異界の覇者〜【不適合者】になった転生者は、銃と無属性魔法で異世界を生き抜く〜』のリメイク版、


『属性魔法が至上の世界に転生したけど不適合者だったので、無属性魔法と魔導銃で異世界を生き抜く』https://kakuyomu.jp/works/16817330648990201382


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