第26話 結果発表

 降魔は双葉の試合を見て、『ん? いつもと何か違うな』と感じていた。

 いつもはもっと丁寧な感じなのだが、今回は荒々しく、降魔には何か起こっているように見える。

 小百合も総司も今まで見たことのない戦いだったからなのか、少し呆けていた。

 降魔は『何が一体あったのか……』と思っていると、その理由はすぐに分かった。

 VIPルームに双葉が飛び込んできたのだ。

 それも、


「降魔! 早く降魔が凄いところ皆んなに見せてあげて!」


 と言う言葉を発しながら。

 これにはずっとから主導権を握っていた小百合も『はぁ?』と言った表情になっていた。

 勿論降魔と総司もだが。


「ふ、双葉ちゃん、もしかして降魔君について何か言われたの……?」

「そうなのよ! あのクソ野郎がね、降魔がゴミとか言い出したんだよ! だからボコボコにしてやったわ!」


 そう言って胸を張る双葉に降魔はポカンとする。

 そして小百合は再びニヤニヤ顔に戻り、双葉に聞き出した。


「あら、もしかして降魔君が貴女に相応しくないとか言われたんじゃないの?」

「そ、そうだけど……」

「ふふっ、そうなのねぇ……」


 小百合は珍しくこの先を話すことはなかった。

 ただ顔は先程よりも更にニヤニヤしているが。

 双葉は降魔の方に向き、


「どうだった……?」


 と聞いてきた。

 降魔は先程の一瞬の戦闘を思い出して改善点といい所を述べる。


「まず、総合的に言うと……少し乱暴すぎだ」

「うっ……」

「それにあの程度の召喚獣にあんな大技を使わせなくてもよかったはずだ。相性も良かったんだしな」

「ううっ……」


 降魔に自分でも思っていたことをズバズバ言われた双葉は、胸を押さえて後ずさった。

 しかし降魔は容赦しない。


「あと何でファフニールを召喚したんだ? ついこの前に契約した召喚獣でも良かったはずだ。と言うか、始めはそいつで戦うと言っていなかったか?」

「そ、それは……イラっときてたから……特に何も考えずに……」


 双葉は目を逸らし、胸の前で指を絡ませながらゴニョゴニョと呟く。

 それを見た降魔はため息を吐く。

 更にそれを見た双葉は、全て自分が悪いと思っていたが少し不機嫌になる。


(私は降魔のことを思って怒ったのに……)


 元はと言えば降魔のためにああなったため、褒められると思っていたからか、少々納得言っていないようだ。


「わ、私は……」

「―――まぁだが……」


 双葉が事情を説明しようと口を開くが、そんな双葉の言葉を遮って、降魔はふっと少し嬉しそうに笑いながら双葉に近づいて頭を撫でる。


「ありがとな、俺のために怒ってくれて。今までそんな事なかったから嬉しいよ」

「えっ、や、あの……どうしてそのこと……」


 降魔の感謝の言葉を聞いて、双葉は色んな感情が押し寄せてきた。

 それは、降魔に感謝された喜びと安堵。

 そして怒った理由を降魔に知られていることに対しての困惑と羞恥。

 そのため返答でどもってしまった。

 頭を撫でられていると言うのも1つの要因であるが。

 そのため外野の小百合と総司が五月蝿くなるが、驚きなことに降魔も双葉も大して気にしていなかったのでそのまま話が続く。

 

「だって双葉が誰かに言われて怒りそうなのって自分のことか、両親、そして自分で言うのは恥ずかしいが……俺のことだろ?」

「…………ぅん……」


 双葉は全てを見透かされていたことに羞恥心が爆発し、頭を撫でられながら手で自分の顔を隠してしまった。

 それにより更に五月蝿くなる大人2人。

 流石に気付いた双葉が急いで降魔から離れて、


「ま、まだ自分の番が残っているから行くわね!! 降魔もちゃんと見ておいてよ!!」


 それだけ言うと再びVIPルームを飛び出していった。

 



「俺だけ話せなかった……」

「「…………」」


 そんな総司の嘆きに、降魔と小百合は何も返すことが出来なかった。






~~~~~





「勝者———龍川双葉あああああ!!」

「「「「「うぉおおおおお!! すげぇぇ!!」」」」」

「ヤベェよ! 準決勝でもワンパンとかハンパねぇ!!」

「これは優勝間違いなしだろ!」


 と言う言葉の通り、双葉は決勝で、相手は5年生だったが、ワンパンとはいかないものの、危なげなく勝ちをもぎ取った。


「やりなさい、ファフニール!」

『了解した。―――グルァアアアアア!!』

『ギャアアアアア!?!?』


 ファフニールの『消滅』のマナを纏った鉤爪が、相手の最上位召喚獣であり、ファイアドラゴンの上位種、ブレイズドラゴンの体の3分の1を消滅させて消えてしまった。


「勝者―――龍川双葉あああああ!! よって、優勝は―――圧倒的な力で対戦相手を駆逐した龍川双葉で決定だああああああ!!」


 その言葉で会場全体の熱狂が更に増した。

 しかしその中で1番喜んでいたのは……


「やったわ! これで降魔とお出かけよ! 1度でいいから友達と行ってみたかったのっ!!」


 当たり前と言えば当たり前だが、優勝した本人である双葉であった。

 その理由は少しズレていると思われるが。


 

 ―――次はいよいよ降魔の総合・・部門が始まる。

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