第24話 優等生の両親との対面②
突然双葉の父親が絶叫をしたため、今度は降魔も双葉や双葉の母親と一緒に耳をふさいでしまった。
「双葉!! これは一体どういうことなんだ!? なぜ男を連れてきた!?」
(ああ……結局こうなるのか……。双葉から聞いていて絶対こんな感じだろうとある程度予測していたんだが……まさか俺が男だと言っていなかったとは……。だから俺が男なのにすんなり許可が出たわけだ。ずっと友達は女だと思っていたから)
降魔はVIPルームに呼ばれてからずっと謎だったことが解けて少しスッキリするが、これから何が起きるのだろうかと、珍しくビクビクしていた。
しかしそれもしょうがないことだろう。
何せ怒らせた気はなくても相手は名家の当主で、降魔はただの庶民。
双葉の父親がその気になれば降魔の人生など一瞬で終わってしまうのだから。
降魔が1人自身の将来について青ざめている横で、双葉とその父親が言い合いをしていた。
「どうして男なら男だと言わなかったんだ! ……男なら絶対に許可なんてしなかったのに……」
「だから言わなかったの!! 降魔は私の大事な人だからっ!!」
「「だ、大事な人……」」
大事な人の所を思わず復唱してしまう降魔と双葉の父親。
降魔は『何でそんな違う意味として捉えられそうな言葉を選んだ……』という意味を込めて。
そして双葉の父親は『双葉に彼氏だと……』という意味を込めて。
しかしこの言葉に反応したのは2人だけではなかった。
「キャー、とうとううちの子が恋をしたのね!! いいわ、お母さんであるこの
「ちょっ、ママ、ち、違う! そんな意味で言ったんじゃないの! 私は降魔が大事な友達って意味で言ったの!」
小百合が興奮気味に言うと、双葉は頬を真っ赤に染めながら捲し立てるようにして言う。
そのせいで余計に興奮して騒ぎ出す小百合。
とても仲睦まじい限りである。
一方で男子組は、そんな女子組とは対象的に地獄の雰囲気になっていた。
気まずそうな降魔を、双葉の父がずっと睨むと言ったものだ。
しかしその沈黙を破ったのは、以外にも双葉の父親だった。
「……突然叫んでしまって済まなかったな……。遅れて申し訳ないが、私は
もはや威圧感まで出ているのではないかと思うほどに降魔を睨む総司。
しかし降魔はその目を逸らすことなく答える。
「はい、私は双葉さんと友人として接しています」
「……そうか。なら私の早とちりだったな……。――済まない、いきなり大の大人が怒鳴ったり睨んだりして」
ホントそうだよ、と一瞬口からでかけた降魔だったが、何とか飲み込んで言葉を紡ぐ。
「い、いえ、俺が男だと言わなかった双葉にも非があると思うので……」
「やはり降魔君もそう思うかね? はぁ……最近双葉は私に全く甘えなくなってしまったし、学園でのこともどうやら私に内緒で小百合に相談しているようなんだ……」
降魔は総司の愚痴を聞いて、将来自分も娘が出来たらこんな事になってしまうのかと、少し悲しくなってしまった。
「そ、それで、私はここに居ても大丈夫なのでしょうか……?」
降魔がそう聞くと、その言葉を聞いていたらしい小百合が反応する。
「いいわよ! 是非とも普段の双葉ちゃんとの会話も聞かせてほしいわぁ」
「ちょっ、小百合! 俺はまだいいなどと言っていないぞ!」
「そんなこと言っていると双葉ちゃんに嫌われるわよ! 見てみなさい、この双葉ちゃんの表情を!」
小百合がそう言うと、降魔と総司の目線が双葉に移る。
そこには、頬をめい一杯まで膨らまして何故か不機嫌そうにしている双葉がいた。
「ふ、双葉……パパのこと嫌いにならないでくれ……」
総司が若干泣きそうになりながら言う。
そんな総司に双葉は目を向けると、
「いいのよ、パパ。でも絶対に降魔にはここに居てもらうから。じゃないとパパのこと嫌いになりそう」
「わ、分かった! よし、降魔君の同席を許可するよ!」
「ありがとうパパっ!!」
総司が許可した途端、嬉しそうに顔を綻ばせる双葉。
しかし降魔の方を見た瞬間、また不機嫌そうな顔に戻った。
「ど、どうしたんだ、双葉? 俺、何かしたか?」
降魔は自身が双葉が不機嫌になる事を言った覚えもした覚えもない。
しかし現に双葉は総司の時よりも眉間に皺を寄せ、頬を膨らませている。
「分からないの……?」
「あ、ああ……」
「…………ふんっ、ならもういいし。(友人ってはっきり言わなくてもいいのに……)」
ボソッと何かを呟いた双葉だったが、自分が何を言っているのか気付き、自分の言葉に驚いている。
(あ、あれ? 私なんでそんなことで怒ってるんだろう……? 私も友達って言ったのに……)
そんな風に双葉も分からないことを降魔が解るはずもなく、首を傾げている。
しかしそんな2人のやり取りを見ていた総司と小百合は、
「……総司さん、私目の前でイチャイチャしている娘を見ていると嬉しくなるわ」
「俺のメンタルはもうボロボロだ……双葉が……男を……」
「そうねぇ……あれは完全に彼に恋してるわねー。まっ、まだ気付いていなさそうだけど、その内気付いたらすぐにくっつきそうね」
「そ、そんなこと、俺が許さん……!」
「なら私は降魔君の味方するわね。あんなにイケメンの義息子……いいわぁ……」
「ママもパパも五月蝿い! もうっ! 今から私競技に出るからもう行くね! 降魔は絶対見ててよ!」
2人でコソコソと話していたら、どうやら双葉と降魔にも聞こえていたらしく、双葉が大声でそう言う。
「ああ、特訓の成果見せてやれ。俺も召喚魔術見たいしな」
「勿論よ。絶対優勝してみせるわ! そ、それと……」
「ん?」
双葉は恥ずかしそうに一度口を閉じたが、勇気を出して言う。
「も、もし優勝できたら……こ、今度、い、一緒に美味しいケーキ屋さんに行かない?」
その言葉に総司と小百合はそれぞれ違う意味で興奮するが、降魔は笑顔で頷く。
「ああ、そうだな。双葉が優勝できたら一緒に行こうか」
「ぁ………ぅん………そ、それじゃあ行ってくるね!」
双葉はそう言うとVIPルームから急いで出て行ってしまった。
降魔は双葉を見届けると、後ろを振り向き、
「私は双葉さんの友達なのです」
「信じられるかぁ!!」
総司への弁明を始めた。
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