第15話 日本最強の召喚術士
「彼の本名は
「……名家って凄いんだな」
「まぁ叔父は龍川家を出て行ったのだけどね」
「何でだ?」
降魔からすれば、才能があるなら名家に居れば様々な恩恵があるのだからわざわざ出なくてもいいのにと思うのだが、そんなに簡単ではないようだ。
「叔父は名家と言う重圧が嫌いだったらしいの。自由に生きたいらしいわ。まぁ父上とは仲違いをしてしまったようだけど」
「ああ、なるほどな……」
(意外にも理由はシンプルな物だったな。確かに重圧を背負うよりも自由に生きたいと思うのはごく当然のことだろう。権力欲がよほど強くない限りは……)
現にこの世界には自由に生きるよりも名声や権力が欲しいと思う奴は沢山いる。
しかし空虚はそうではなかったと言うだけだろう。
「しかしなら何故家を出た空虚がわざわざ家に戻ってまで龍川を教えたんだ?」
降魔の1番わからないことがここだ。
何故自由を求めて出て行った家に再び戻ってくるのか。
しかも仲違いした兄の娘を教えるためにだ。
(俺なら絶対に戻らない。もし戻るとしてもそれが自分の子供のためならまだわかる。しかし理由は仲の悪い兄の娘だ。はぁ……ダメだ。全く分からない)
降魔はここで自分で考えるのを諦めて双葉の答えを待つ。
「詳しくは分からないのだけれど、2人の間で何かあったらしいわ。正直強さで言ったら叔父さんの方が強いし、権力もSSS級召喚術士ということで名家と同等くらいは持っているけど、父上が言うには『交渉でなんとかなった』らしいわ」
「交渉ねぇ……何が裏が幾つもありそうな言葉だな」
「でも叔父さんは特に嫌がったりはしていなかったわよ? 私には自分の娘が出来たみたいだって可愛がってくれたもの」
どうやら空虚は嫌々双葉に魔術を教えているわけではないようだ。
降魔にとってはそれだけでも聞く価値があった。
「教えてくれてありがとうな龍川」
降魔が少し笑顔でお礼を言うと、双葉はプイッと横を向いて、
「こ、これは貴方の訓練を勝手に見ていた時の借りを返しただけよ!」
早口で言っていた。
降魔はそんな姿に少し子供っぽいなと思ってしまったが、機嫌を損ねそうだったので何とか口に出さなかった。
しかしそれに気付いたようで双葉は頬を膨らませる。
「何でそんな年下を見るような目で見るのよ」
「いやお前年下じゃん」
「あ、そっか……そう言えば八条って先輩だったね。今度から先輩って呼ぼうかしら?」
そう言って悪戯を楽しんでいるように笑う。
降魔はそんな双葉に苦笑いしながらやめてくれと言い、話を変えるようにして口を開く。
「それで空虚は今も家にいるのか?」
「いや今は何処かに行っているわよ。多分北海道辺りじゃないかしら?」
双葉が言うには北海道でS級ダンジョンが発生したため、攻略に向かったらしい。
「S級ダンジョンか……なら当分は教えてもらうのは無理だな」
降魔は残念そうに少し声のテンションを落とす。
「私は……貴方に格闘術を教えて欲しいのだけれど……」
双葉がそう言うと降魔は目をパチクリとさせて双葉を見る。
双葉は不審に思い『どうしたの?』と問いかけると、降魔は『ああ、すまん……』と言い、頭をかく。
「いや、まさか俺に格闘術を教えてと言われるとは思っていなかったんだ」
「じゃあ何言われると思ったの?」
「うーん……結界は?」
「ギリギリ出来るわね」
「飛翔」
「余裕ね」
「幻影」
「それは少し教わりたいわ」
「身体強化」
「それは全然大丈夫」
降魔は少しの間黙り込んで頷く。
「うん、俺が教えることは格闘術しかないな」
「だからそう言ったんじゃない。それで、教えてくれるの?」
双葉は少し不安げに聞いてくる。
(こいつ……俺が断ると思ってんのか? 俺は召喚魔術を教わろうとしているのに? こいつのこともまだまだ分からないことだらけだな)
「ああ、俺はお前に召喚魔術を教えてもらいたいからな。任せろ、俺並みにはしてやるから」
降魔が安心させるように少し優しげに言うと双葉は、
「ありがとうっ!!」
パァァァと顔に嬉しそうな笑みを浮かべた。
降魔はその姿に一瞬見惚れる。
「あ、ああ任せておけ。明日から始めるぞ」
「うんっ」
明日から2人だけの秘密の特訓が始まる———
(いかがわしいことなんてしないからな?)
--------------------------------
読者の皆様へ
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
面白い! まぁまぁかな? 続きが読みたい! などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!
また、フォロー、応援コメントなどを頂けると作者の励みになります。
ではではまた次話で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます