デスゲームへようこそ

 少年は、真っ暗な部屋で目覚めた。

 ここがどこで、なんでこんな所にいるのか。記憶をさかのぼっていっても、思い出せなかった。

「誘拐……か?」

 少年は、ポツリとこぼす。考えられる可能性としては、それが一番高いだろう。

 だが、奇妙なこともあった。

 拘束されていないのだ。

 もしかしたら、この真っ暗な部屋に鍵でもかかっているのかも知れないが、少なくとも現状は、制限らしい制限は何も無い。

 ここから、どうするべきか考えていると、突然部屋に光がともった。

 まぶしさに顔をしかめる。わずかな時間で目が慣れて、部屋の中が見えるようになった。

 部屋の中央のテーブルに、ナイフや拳銃など様々な凶器が並べられていた。モーニングスターまである。

 そして、壁には巨大なモニターがあった。

 部屋の異質さに戸惑っていると、モニターに何かが映った。

 黒いローブを深く被った人物だった。

「くっくっくっ……、ようこそデスゲームへ」

「デ、デスゲーム?」

「そうだ。今から君には、殺し合いをしてもらう……」

 殺し合い。

 冗談で使うことはあっても、本気で使うことがない言葉だ。

 少年の背中に冷や汗が伝う。

「殺し合いをしてもらうのだが……、ちょっと待っててくれないか?」

「は?」

 黒いローブの男は、わずかに見える頬をいた。

「いや、スタッフの集まりが悪くて、このままだと進行に影響が出そうで……」

「そんな状態で人をさらうな」

「それに今のところ、君しか参加者いないし」

「そんな状態でゲームを始めようと思うな」

「あと、ゲームのルールも見直したいし……」

「そんな状態でゲームを開催するな」

「とにかく、ちょっと待ってて! すぐに何とかするから!」

「……はぁ」

 モニターが再び暗くなる。なんというか、色々とガバガバだった。

 その中でも特に、だ。

「携帯電話、回収しとけよ……」

 少年は、迷わず警察に通報した。

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