造花

 造花ぞうかは言わずもがな、偽物にせものの花だ。

 水をやる必要もなく、れることもない、作り物の花。

 だが、確かに美しい。

 人によっては、本物よりも好きという場合もあるだろう。

 そして、人によっては、偽物だから嫌いだという場合もあるだろう。

 造花のような偽物たちが、この世界にはいくつもある。

 それらを「偽物だから」という理由で毛嫌いする人もいるはずだ。

 あるいは、「偽物はやはり本物におとる」と思う人もいる。

 ブランド品の偽物は、確かに嫌われるものだろう。

 でも、造花は偽物だからこそ本物なのではないだろうか。

 本物ではない付加価値を求めた偽物。

 それは、本物と比べれば相違があり、偽物かもしれない。

 だが、その付加価値を求めている人は本物ではない偽物を求めている。

 偽物だからこその良さがあるのだ。

 その良さを求める人にとっては、偽物こそ求めている本物ではないだろうか。

 私は、そんなよく分からないことを思いながら、枯れることのない造花を手に取る。

 水やりが面倒な私にとっては、造花は本物よりもすぐれているのだ。

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