残念クラスの文具使い

 突然だが、俺の学園生活はどん底からのスタートとなった。


「……えーっと、君さ、何で入学しようと思ったの」


「冒険者になる為です!」


 店長の計らいによって、入学の手続き等、面倒な事は全てやってもらった。


 未来の冒険者を育成する為の学園。

 ワールドエクスプローラー学園……


 長いな、以後、ワープロ学園とする。


「う、うーん……確かに君の様な若者を育成する為にこの学園はあるんだがね――」


 面接担当の教師だろうか。

 何やら書類を見ている様だ。


「悪い事は言わないから、君の様な平凡な若者は、故郷で平和に暮らした方が――」


「今、何と言いましたか? 俺が、平凡? 神から与えられし加護を持つ俺が、平凡であると。そう言ったんですね?」


「ひぃっ。キレる若者怖い……」


 何という事だ。

 まさか作家神ともあろう神から与えられた加護があっても、俺の力は平凡であると、そう言われてしまったのか。


 俺はこの学園で、愛と友情のリア充学園生活を楽しむ筈だったのに。


 その為に、徹夜で異世界初心者スターターキットの内容と、文術の指南書を全て頭に叩き込んだと言うのに!


「君の能力値を見させて貰ったんだよね。この紙に書いてあるんだけど」


 面接教師から手渡された紙には、俺の能力値に対する評価が書かれていた。


 筋力、ペンより重い武器を扱えない。

 体力、普段着より重い防具は着用出来ない。

 知力、良くも悪くも普通、ただの一般人レベル。

 器用、一般人以下。

 敏捷、亀。

 幸運、そんなものに頼る程良くは無い。

 精神、アダマンタイトクラス。破壊不能。

 魅力、望めばハーレムも可能。


「これは酷いですね……戦闘で役に立ちそうな要素ってあるんですか? これ」


「精神操作魔法に対しては、ほぼ無敵じゃないかね……後は魅力を活かせるとしたら、逆に精神操作魔法を使うとか」


 絶対嫌だ。


 精神操作で戦う冒険者とか絶対嫌だ!

 悪役ポジションにも程があるだろう。


 大体何なんだ、この魅力ってのは。

 俺はハーレムを望んでいるんじゃなくて、運命の女性と添い遂げる純愛を望んで居るんだぞ!?


「悪い事は言わない。故郷に帰って、平穏に暮らしなさい」


「……俺には、帰る場所なんてありませんよ。本来この世界には、俺が居るべきじゃ無いんですから」


 だって異世界人だもん。

 日本から来たってのに何処に帰れと言うんだ!?


「そうか、若いのに、苦労したんだねぇ……強く生きたんだねぇ……」


 何で泣いてるんだこの面接教師。


 別に苦労も何もしてないが。


 むしろ平和に生き過ぎた結果がこの救いようも無い能力値なんだが。


「そうだね、君はあの作家神の一族から推薦されているからね、君の為に、特別クラスを用意しよう」


 特別クラス?

 よく分からんが、この状況でも入れるクラスがあると言う事か。


「君は、どのクラスの適正にも当てはまらない特別なクラスとなった。自分の望むままにこの学園を楽しむと良い!」


 どの適正にも当てはまらないって、それ遠回しにお前は残念って言われてないか?


 まぁいいや、俺はこの文術を使って戦う、俺だけのクラス。

 文具使いとして、冒険者の歴史に名を残してやる!




 こうして、俺の学園生活は、可もなく不可もなく、平凡に過ぎて行った。


 何かが違う。

 これでは前世と何も変わらないじゃないか!?


 俺はまた、平凡で陰キャ学生のまま人生を終えるのか!?


「あっ、やっと見つけた~! お~いブンドゥク~! 久しぶり~!」


 ブンドゥク、イズ、誰?


 俺の事言ってるのか?


 俺に向かって走ってくる、金髪褐色の派手な美少女。

 ダークエルフって感じでは無いな。

 耳は人間の物だ。


 俺はこんなギャルっぽい見た目の女子と、何処かで会った事があるのか?


 その金髪ギャルは俺に抱き着いてきた。

 胸が当たる。


 そう、この運命の出会いから、俺の学園生活が変わっていったんだ。

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