異世界転生した俺の武器は文暴愚!?~ペンは剣よりも強しってそう言う意味じゃないからな!?~

@sekitun

当たり前だが剣の方が強い

 突然だが、俺は一度死んだらしい。


 そして、異世界に転生した。


 今はただの学生だ。


 未来の冒険者を育成するこの学校で、目立たない普通の学生、前世の世界で言う陰キャってヤツだ。


 もちろんこのまま陰キャのまま人生を終えるつもりはない。

 前世はそのまま死んだがな!


「ブンドゥク~今日の課外活動のバディ、あたしと組もうよ~どうせ一人でしょ?」


 やめろ、その名前で俺を呼ぶな。

 俺には前世での名前、文堂紅狼ぶんどうくろうって言う立派な名前が……


 キラキラ輝く俺の名前があるんだぞ!?


 普通異世界でこんなキラキラした名前だったら、違和感なく、クロウとか呼べるだろうが。


「あ……えと、はい。俺で良ければ」


「やった~! ブンドゥクはあたしの物~!」


 やめろ、その胸を押し付ける行為はやめろと言っている。


 いや、言ってない。

 声に出していないからだ。


 大体なんなんだこの金髪褐色ギャルは。

 なれなれしく俺に抱き着くな。


 お前の物になったつもりはない。


 そもそも誰だコイツ、こんなヤツこの学校に居たか?

 何故俺の名前を知っている?


 お前の言う課外活動ってのはあれか。


 俺に対しての加害活動って事なのか!?


「今日の課外活動は、村に出没した魔物の討伐だから! あたし後衛クラスだから前衛よろしく~!」


「あっはい。えっと、一応俺も文具使いってクラスで後衛なんですけど……」


「武具使い? それって戦士系最強クラスのウェポンマスターの事!?」


 何なんだその聞き間違いは。

 俺が言ったのは文具使いぶんぐつかい

 文具を操り戦うクラスだ。


 もっとも、これは俺が転生した時の特典として与えられた物で、正式にはこんな能力は存在しない。


 とてもじゃないがウェポンマスターなんて大したクラスでも、能力なんかでも無いからな。


「よく分かんないけど、ウェポンマスターだったら丁度良いじゃん! あたしクレリックだし! ヒーラークラスだし!」


 何が丁度いいのかは分からんが、確かに回復魔法が使えるヒーラーは貴重だ。


 しかしコイツが使う回復魔法ってヒール回復、じゃなくてヒール悪役を使う方じゃないのか?


「えっと……あの、先生からあなた達と組めって、三人になっちゃうけど余っちゃうからって……」


 眼鏡を掛けた大人しそうな女の子が俺達の元に来てしまった。


「ん? あ、サーヤじゃん! やっほ~! 元気してた?」


「うん、カンナちゃんも、元気そうで良かった」


 この眼鏡の大人しそうな子がサーヤで、こっちの金髪褐色ギャルがカンナって言うのか。


 思いっきり日本名に聞こえるが気のせいか?

 いや、ここは異世界だぞ。

 名前だって何でもありなふざけた世界だ。


 俺だってこっちじゃブンドゥクだしな!


 クロウじゃなくてブンドゥクだしな!


 ふざけるな、こんな名前俺は認めないぞ。

 絶対に分からせてやる。


「は、初めまして、サーヤさん。お、俺、文堂紅狼って言います。よ、よろしくお願いしまっ!?」


 クッソ、折角の自己紹介で噛んでしまった。

 仕方ないんだ。

 陰キャのまま死んだ俺の学生時代なんて、こんな美少女達との会話イベントなんて存在しなかった。


 緊張する俺を、誰が責める事が出来ようか!?


「文堂紅狼? クロウ君って呼べばいいかな」


 そう、それで良いんだ。

 俺の名前は文堂紅狼、この世界では文具使いのクロウとして生きていくんだ!


「違う違う、クロウじゃなくて、ブンドゥク! あたしが付けた!」


「そ、そうなんだ。大変だったね……これからよろしく、ブンドゥク君」


 やめろ、その呼び名を広めるのをやめろと言って……いないが、やめてくれ。


 こうして、カンナと言う金髪褐色ギャルに、加害活動に巻き込まれた。

 いや、課外活動だけども、俺は被害者なんだから別に良いだろう。


 討伐対象の魔物はスライムだ。

 王道雑魚モンスター第一位。


 問題はそこじゃない。


 カンナはクレリック。

 回復魔法を得意とする後衛回復クラス。


 サーヤはウィザード。

 攻撃魔法を得意とする後衛魔法クラス。


 そして俺、クロウは文具使い。

 文具を操り戦う、一応後衛物理攻撃クラスだ。


 この三人の問題点、見事に後衛クラスしか居ない。


 流石にスライムなら大丈夫だろう。

 そう思った人も居ると思う。

 だが、俺は知っている。


 この手の王道最弱モンスターこそが、最強となり得るポテンシャルを秘めているのだと!


「そりゃっ!」


 手に持ったメイスで、一撃でスライムを粉砕してしまった。

 クレリックが。


 コイツ本当にヒール悪役の方だったのか。


「燃え上がれ、ファイアストーム!」


 流石ウィザードだ。

 魔法で簡単にスライムを一掃してしまった。


 そして流石俺、何もしなくても戦闘が終わった。


 と、思っていたんだが。


 砕け散ったスライムの破片が集まり、巨大なスライムになってしまった。


 スライムが粘液を飛ばし、女子達が攻撃を受けてしまった。


「う~ヌルヌルで気持ち悪い~いったん脱いどこうかな」


「わ、私も脱いでおく……」


 戦闘中に脱ぐなよ。

 これ一応ボス戦みたいなもんだよな?


 不味いな、この場には俺一人しか戦える者が居ない。


 文具使いなんて、こんなふざけた力で、戦った事すら無いってのに。


 もうどうにでもなれ、使い方を知らない訳じゃないんだ。

 使える物は何だって使ってやる。


「シャープ・ペイン・シール!」


 俺の呼び声に応え、鞄に入っていた文具、シャープペンシルが空中に漂う。


 シャープペンシルを射出し、スライムを貫くが、あまり効いていない様だ。


「軌道修正、一発でダメなら、あらゆる角度から串刺しにすれば少しは!」


 手帳を取り出し、スライムの姿を描き、無数のシャープペンシルを描き足していく。


 一本一本の軌道をスライムに繋ぎ、手帳を閉じて発動準備が完了。


 描いたシャープペンシルが具現化し、スライムを取り囲んだ。


「スライムに物理は殆ど効果がないよ! やるなら属性を付与しなきゃ!」


 それをお前が言うか。

 メイスで直接殴って粉砕していたクレリックが。


 だが、確かにその情報はありがたい。


 俺は絵の才能こそ無いが、簡単な物であれば描くことが出来る。

 例えばマッチ棒とか。


 マッチ棒を一本描くと、それと同じ物が手帳から取り出せる。

 先程スライムを描いたページを破り、火を付ける。


 すると、具現化されたシャープペンシルに火が付き、属性が付与された筈だ。


 それを一気に射出し、スライムを燃やし尽くす。


 スライムが熱で膨張してきた。


 爆発する!?


 真っ白な下敷きを取り出し、その下敷きに文字を書き込む。


「材質変化・鉄、百枚複製。適当に書いたけどこれで防げるよな!?」


 文字を書き込んだ下敷きを放り投げ、材質が変化した後、百枚分複製され、俺達三人を鉄の下敷きで包み込む。


 スライムの大爆発に耐える事が出来た。




 これが俺が転生した時に与えられた力。

 文房具を自在に操り、書き込んだ物をその通りに書き換える事が出来る。


 この力、はっきり言ってやりたい放題だ。

 文房具とか言う生易しい物じゃない。


 こんな力を悪用すれば、文を書き込んで好き放題暴れる愚か者になってしまう。

 文暴愚ぶんぼうぐとも呼ぶべきこの力、慎重に扱わなければ。

 それにしても、この力を与えた神様に言いたい事がある。


「ペンは剣よりも強しって、そういう意味じゃないからな!?」

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