突然隣の美少女が歌いだしたら、俺がメジャーデビューって?

水巻

卒業イベント

 南の方で、そろそろ桜の便りも聞かれる季節、首都近郊ではまだまだ肌寒い日が続いていた。

 大都市郊外に大きな敷地を誇る、小学部からの一貫制学院、私立猿田毘古学院でも卒業式のシーズンを迎えていた。

 卒業に関連した様々な行事が行われていたが、高等部の最後で最大、最上級生出演イベントの開始を目前に熱気を孕んだ空気に包まれていた。


 イベントホールに向かって、卒業生と思しき数名が連れ立って歩いていた。先頭は顔立ちは整っているが、やや野性的な雰囲気を持った男子学生、周りはその取り巻きのようだった。


「いやあ、今年のファイナルライブはカッツさん達Bb4で決まりだと思ってたのに、ほんと残念っすよ。」


「おう、まあな。俺も出てやっても良いかと思ってたんだが、ローセンスなパンピには俺たちの音楽は刺さらないからな。」


 高等部卒業に関連した最終イベント『ファイナルライブ』は卒業生の中から出演者が選ばれる。自分たちも卒業生であるロック系の四人組バンド、Bb4のボーカルを務めるカッツは取り巻きの追従に対して余裕の回答を返していたが、内心では不満と怒りが膨らんでおり、表情でも隠しきれてはいなかった。

 

 ここ猿田毘古学院は芸術を信奉した学院運営で知られており、芸術関連への手厚い支援があることでも有名であった。芸能界、アーティスト活動にも理解があり、芸能活動をする学生に対し様々なプログラムを設けて学生活動との両立ができるよう支援していた。それを期待した、芸術活動志望、タレント、アーティストが多く在籍し、芸能事務所からも信頼されていた。

 その卒業イベント。プロをも唸らせる出し物が揃うとして、業界からも注目されており、一般にも開放されるなど、地域の一大イベントと言って良い規模になっている。その中での最終で最大イベント。それが全在校生からの投票で出演者が決まるファイナルライブだった。


 その栄えあるイベントに出られない悔しさを隠して(?)会話していたカッツ達に割り込んできたものがいた。


「あはは。カッツたちも頑張ってると思うけどさ。もう少し真摯マジに音楽と向き合わないと、ファンは増えないんじゃないかな。」


「なっ。オマエ、蒼空ソラか!役者のタマゴが偉そうに音楽ロックを語ってんじゃねえぞ。オマエこそファイナルライブに関係ないだろ、部外者なんだから余計な評論してんじゃねぇよ!」


 ふいに後ろから朗らかだが少し揶揄するような声で少年が話しかけてきた。

 彼は龍野蒼空タツノソラ。元々アイドル候補生で事務所入りしたが、ある事を契機にお偉いさんと交渉して役者に方向転換。最近になって幾つかの話題作に脇役ながらも出演を勝ち取り、存在感を示して玄人目線での評価が高まっている、決してタマゴとは言えない若手俳優だった。


「それが部外者でもないんだなぁ。ちょっとライブの手伝い頼まれてるんで、今から準備に行くんだよね。」


「な!?」


「え!?蒼空ソラさん、ライブ出るんすか!?なら、誰が今年の『ザ・ファイナル』か知ってんすか?」


 悔しさと戸惑いで言葉にならないカッツを横に置いて、その取り巻きが手のひら返すように興味津々に今年のファイナルステージ出演者に関する質問をぶつけていた。その事に更にカッツはイラつきを増していたが、取り巻きは気付かない。憐れ。


「さあね。僕は演出の一部として頼まれてるだけだから。出演者のことは知らないよ。それじゃあね!」


 悪戯っぽく目を煌めかせ、意味深な言葉を言い置いて去っていった。


◇◇◇


ライブ開催まであと少しの会場近く。二人の少年少女が走って・・・いや、一人は走らされていた。


「ほら、早くしないとファイナルライブ始まっちゃうよ!」


「ちょっと…そんなに引っ張らないでも」


「お祖父ちゃんから、良い席譲って貰ったんだから遅れる訳にいかないの!」


 前を走っているのはセミロングの髪を撥ねさせて、制服を翻しながら元気な様子で目を引く美少女だった。手を引かれて走らされてる方、全体的に地味目な男子生徒は躓きながらついて行くのもやっとという雰囲気だった。

 ホールに入ったところでやっとスピードは遅くなったが、手はまだ繋いだままだ。


(手、話してくれないかな?あぁでも転ばなくて助かったのか)


と男子生徒が考えつつホール内を速歩きで進んでいると既に着席してた生徒、カッツから声を書けられた。


「あ、スズ!何急いでる…て、まだ、そんな奴のこと構ってるのか?オレの隣の席、空いてるから一緒にライブ見ないか?」


 明らかに隣の席は埋まっているのだが。恐らく隣に座ってる取り巻きの席は空いてることになったのだろう。先程の仕返しか、憐れ。


「隣、空いてるように見えないけど?でもお生憎様。ちゃんと席はあるから大丈夫よ、さ、行こ!ショウ!」


「チッ!おいカケル、いつまでも鈴に付きまとって、足引っ張ってんじゃねーよ。オマエは才能が『欠ケ』てんだから、俺たちとはステージが違うんだからな。」


「あ、ああ。わかって…」


「何よ、ステージって。意味分かんない。それに才能なら誰よりもショウが一番なんだから。行こっ!」


「あ、スズ!お前まだそんな事を、おい、待てよ…」


 既にカッツの声は聞こえないとばかりに、スズは、前の方に歩き出していった。


 御園鈴ミソノスズは国民的な美少女の集まるコンテストに最年少ながら最優秀に選ばれ、一躍注目を浴びた。

 その後一旦活動が見られなかったが、一転女優としての才能を開花して再登場。真面目に役に取り組む姿勢で知られており、既にこの歳にして映画での主演を張るなど、若手では最注目の存在になっていた。


「ねえ、リン、カッツ放っといて良かったの?」


「良いのよ。アイツはあの変なプライドの高さが治らないと、本物には成長出来ないってお祖父ちゃんが言ってたし。私もそう思うわ。周りを気にしすぎなのよ。」


「十分上手いと思うけどなあ。僕なんかより。」


「ショウは逆にその自己肯定の低さを治しなさいよね。…今日は荒療治よ…」 


「え?何?」


「何でもなーい、行くわよ。」


 随分と前の方に案内されたなあ、とショウこと上鳴翔カミナシカケルは若干居心地の悪さを感じながら席についた。

 リンこと御園鈴と翔は幼馴染だった。両親が生きていた頃は家族ぐるみの付き合いがあったが、中学に上がってすぐ、交通事故で翔の両親が亡くなってからは、他人に迷惑をかけないと言った翔の意思を尊重して付き合いは減っていた。

 と、言ったところで同じ学校に通ってるので、鈴が傍に居ることは変わらなかったのだが。


「そろそろ始まるわね。」


 客席の照明が落とされ、幕が上がっていった。


 果たして今年のザ・ファイナルは誰なのか?皆が固唾を呑んで待っていた。




 待つこと暫し。不意にイントロが流れ出した。まだステージの証明は暗い。しかし徐々に明るくなってきて、曲を認識した観客が色めき立つ。


「この曲は!」「キター!」「カオリン、ラナちゃん!」「これで勝つる」


 四人組の女性アイドル、フォアカラーズのファンが騒ぎ出していた。


 舞台袖からそれぞれのイメージカラーの衣装を身にまとった、可愛い四人組が登場してきた。だが歌い始めたものの、その後はいつものような流れと違い、イントロ部分からサビへと変化し、サビから最後のフレーズにかけて彼女たち四人は歌っていった。

 会場が何事とざわつき始めたところに司会の声が重なる。


「今年の最推し投票第三位はフォアカラの皆さんです。最上位には惜しくも届きませんでしたが、投票いただいた皆さんへのお礼と感謝のパフォーマンスとして出ていただきました。そしてこのあとも引き続き、ザ・ファイナル受賞者のコーラスとしても担当してもらいます。お楽しみに!」

 

 そのままフォアカラは短いながら、いつもの元気一杯、そしてみんなも元気にしてくれるような見事なパフォーマンスを見せて舞台横に下がっていった。


 続いて音楽が繋がって次のイントロへと変わる。次はやや落ち着いた綺麗なメロディーが流れていく。


「これは!?」「え、次は2位なのか?」「ななみん〜」


 清楚系グループアイドルとして人気のある出雲宮46のメンバでセンターを競う、今年の卒業生3人が出てきた。


「続いて第二位は出雲宮の3人。一位とは僅差、どちらが一位でもおかしくなかったのですが、本人達は納得の順位とのこと。投票してくれた皆さんに感謝のステージパフォーマンスです。」


 いつもとは少ない人数だが、それでも揃って綺麗でキレの良いダンスをしながら、歌を披露してフォアカラとは反対側に控えていった。


 音楽は次のイントロへと繋がるフレーズに移っている。


 「じゃあ一位は?」「後出てないのは?」「アキラ様ー!」 


 司会の声が先に響いてきた。


「今年の最推し投票第一位はこちらのアーティストです!」


 曲調が一気にアップテンポへ変わる。


「キャー!」「アキラー」「アキラ様!」


 ステージに一人の男性アーティストが現れた。全体的に落ち着いた雰囲気の黒をベースとした、しかし要所を金の縁取りで飾り、華やかさも表している衣装で出てきたのは、神明暁シンメイアキラだ。

 男性アイドルのみが所属する事務所において、またこれまでデビューはすべてグループ単位としていたはずだったが、歴史上唯一ソロでデビューしたという異色の存在。その上、デビューから全ての曲が一位を取り続けている人気も実力もトップを走っている完璧アイドルだ。


 アキラは中央に進むと徐ろに歌い始めた。会場の多くのファンから歓声と悲鳴が聞こえている中、ワンコーラス歌いきった。


「みんな、投票ありがとう。天才パフォーマーのフォアカラやアイドルのカリスマ出雲の3人と競って、自分が一位に選ばれたことに、とても、とても感謝してる。」


 いつものステージならこのままツーコーラス、最後まで歌い切るのだが、ここでマイクパフォーマンスを挟んできた。なんとなく違和感を感じていた者もいる。

 それに脇に控えた二組はザ・ファイナルのコーラスをすると言っていた筈だが、今のところ歌ってる雰囲気はなかった。

 続けてアキラは話し続けている。


「でも、ザ・ファイナルってその年の猿田の卒業生で一番人気のあるアーティストが歌うべきだと俺は思うんだ。」


 カッツの取り巻きたちが、この話から都合の良い解釈で、明後日とんでもないの話をし始めていた。


「カッツさん、これはアキラさんが実力を認めてるカッツさん達Bb4に譲る流れじゃないっすか?」


「お、おう。まあアキラからどうしても、って言うならしょうがない…」


 現実は無情なもので、もちろんカッツに譲られるはずもなく、全く違う話へと続けられていた。


「ここで司会から補足させていただきます。今回の投票、自由記入欄に皆さんから同じような要望が多く書かれていました。」


 アキラの曲のリズミカルな間奏が流れる中、淡々と司会が話す。


「それは、『もし、あのアーティストが、猿田生だったなら是非一票入れて、実物を見たかった』、と。」


 会場には困惑と、ある種の期待の空気が流れ始めている。

 アキラがそれに続ける。


「そういうことだ。実は俺たち一位から三位に選ばれた皆でも、同じアーティストのライブを望んでいるって事で一致したからな。

 まあ、アイツの歌になら俺もコーラスで参加するか。」


「え?」「誰のこと?」「トップの3組は知ってるってこと?」


 カッツは、知らないと言うことだった。


 「それでは今年のザ・ファイナルをお呼びします。対象では無いにも関わらず投票された直接票に加え、コメントも集計すると実に得票率6割を超えた大本命。これまで素顔がまったく明らかにされなかった幻のユニット、『soaring』の皆様お願いします!!」



 『soaring』



 それは今年の始めから動画サイトで急激に人気が出てきた、男女ユニットと思われるアーティストだ。

 詳細が伏せられたままなのに、その人気、再生数は凄まじく、勢いを無視できなかった国民的年末音楽番組にも、異例ながら顔出しせずシルエットと声だけでゲスト出場したアーティストだった。

 女性の透き通った高い声も素晴らしいが、圧巻は男性ボーカルのハイトーンボイス。高く綺麗な音階であるのに圧倒的な声量で迫力があり、またそこから一転、切なげに儚い表現も秀逸で、心の奥まで響き同年代のアーティストでは怪物的な人気を誇っていた。

 年末でもその正体は全く明かされず、年齢だけが公表。シルエットとして映し出された映像は確かに少年少女のようで、多くの芸能人が居るここ、猿田毘古学院の生徒では?とも言われたが、皆、該当者に心当たりが無く真相は明かされぬままだった。


 短いイントロから女性ボーカルが静かに始まった。しかしステージ上にその姿は見えない。


「どこ?」「どこで歌ってるの?」


 スポットライトがしばしステージ上を彷徨った後、客席の方に向かい、最前列の少女で止まった。

 カケルは隣のリンが、立ち上がって歌い始めた事を呆然と信じられないという顔で見ていた。


(え?え?リンが歌うの?)


 リンショウをチラッと見て、歌いながらステージに向かう。スポットライトが、彼女を追いかける。


「あああ!」「リンって、御園鈴ミソノスズだったんだ!」「カワイイ声のイメージ通り!」


 歌はこの後、しばらく女性単独のボーカルが続き、その後コーラス合唱と続く流れだ。

 コーラスはもちろん、フォアカラと出雲、そしてアキラが歌っている。


「ギャー!!」「豪華すぎる」「アキラ様ー!」「なら、もう一人のボーカルは誰なんだよ!?」


 コーラスに回った各グループの推しに対して、それぞれの声援が大きくなった。一方で『soaring』のメインボーカルが出てこない事を気にする向きも出始めていた。


 コーラスが流れる中、ダンスパフォーマンスが始まる。こちらも年末の某番組ではシルエットだけだったが、要所々々でアクセントになっていたダンスだ。それがステージに実物として現れた。


「あれ!?」「ソラ様!?」「ダンスパフォーマーってソラ様なの?」


 ホール内は更に絶叫のような歓声に包まれた。

 龍野蒼空ソラは俳優として活躍しているが、元々はアイドル研修生からスタートしている。ダンス経験は十分にあり、また最近では殺陣タテにも力を入れていて、身体のキレは更に上がっていた。

 このダンスも最初は友達のボイトレに付き合っていて、暇だったので踊っていたのが始まりだった。今では専属みたいな扱いになっているが。


(それもアイツの自信回復トレーニングのためだったんだけどなぁ)


 もう諦めの境地で苦笑いである。


「ソラ様とリン様でsoaringなの?」「え?でもメインvoは誰?ソラ様が歌も?」「ソラって俳優じゃなかったのか?ダンス、キレ過ぎオニ上手いんですけど!」


 コーラスが続く中、ホールは更なる興奮と期待にどんどん上昇アガって行った。


 コーラスとダンスが続く中でリンは、ステージからまた客席に降り始めた。スポットライトも追いかけているので、客席も注目している。


「カッツさん、遂に出番ですよ!ほら、リンさんが来ますよ!」


「あ!?オレが!?イヤそんなはずは…」


 彼らは平常運転だった。


 リンはもちろん、カッツ達には近寄らず、ショウの下に歩いて行き、その腕を掴んで、ステージに引っ張って行った。


(えええええ!!嘘でしょ!)


 ショウのキョドり具合にはまったく頓着せず、リンはグイグイとステージに上げていき、遂には中央に立たせた。


「いや、リン、無理だって。こんな注目された場に出るなんて…」


「何言ってるの。かおりや、ななみ、アキラ達からも認められてるのよ!今までの練習は何のため?覚悟を決めなさい!」


 マイクには入らないように小声で叱るという器用な真似で会話していた。


「おいおい、欠ケルが何、出しゃばってんだ。」


 カッツのヤジに対して一部の生徒からも戸惑いや不満の声が聞こえてきた。


「なんだあの陰キャは?」「あれ、スズ様のストーカーじゃないか。」「場違いなヤツキタ。」


 不穏な空気が広がりかける。未だ翔は及び腰だった。


「両親との夢は、どうするの?このままで叶うと思うほど惚けてないわよね。」


 段々と鈴の言葉も強くなってきた。鈴はポケットからヘアバンドを取り出すと、翔の頭に付けて前髪を全部後ろに流すような位置にセットし、力強く背中を叩きながら叫んだ。


「Be proud!  Don't look back! It's SHOW-time!」


「!!」


 それは翔が、本気で歌うときのルーティーンだった。前髪を上げ、視界をクリアにし、背筋を(強制的にだが)伸ばし、両親と練習ボイトレを始めた時からの掛け声を掛けられる。


 それで翔のスイッチが入った。


 ちょうどコーラスパートが終わる時。

 あれほどざわめいていた客席も一瞬の静寂に包まれる。歓声も、ヤジも、どよめきも、何もかもが、何かを期待するかのごとく静まり返った。


 そして、ついに


 ファイナル・ライブに


 ザ・ファイナルに相応しい


 ショウの声が弾けた。


『Ahhhhhhhhhh』


 「これは!?」「キレイ」「この声は!!」「マジsoaring!?」


 翔は自分のパートを続ける。


『自分の感じる色彩いろで、紡ぐ二人の人生セカイ


 そこにリンもハモりながら入る。


『進む、前に、進む、果てに、辿り着いた願った未来』


 一緒に歌い出すと、紛うことなきsoaringのサウンドだった。もう誰も疑う余地のないクオリティで、そのまま最後まで二人で歌い切る。もちろんコーラスは一位〜三位の豪華メンバーだ。


 「マ、マジなのか?」「声は本物よ」「ショウ様!リン様!」


 ショウが歌い、リン歌いハモり蒼空ソラが舞った。その時背後の照明が客席に向かって一斉に照射らされた。あたかも三人が影絵のように見えるように。


「あ!」

「ああ!」

「あああああ!」


 年末の映像とイメージが合致し、客席の皆が確信した。本物soaringだと。


 それからは客席は歓声一色となった。その後、続けて計三曲を歌いきってステージの幕は降りた。

 客席からはざわめきとアンコールの声が聞こえていたが、司会からは終わりを告げるアナウンスが無情にも告げられていた。


◇◇◇


「これで自分の実力と世間の評価を理解わかってくれたかな?」


 舞台裏では鈴がニコニコしながら翔へと話しかけていた。


「え…でも、年末のあれだって、身内用の動画撮影だって言ってたじゃん。蒼空ソラだってノリで踊っただけだって言ってたのに…。それにしては気合入った格好だったような。」


「これで深雪さんも、堂々とマネージャー業務ができるわね。変な誤魔化しも要らなくなったわ。」


「あー、えー、え?深雪さんって、鈴の第二マネージャーじゃないの?ついでだからって僕も車に乗っけてくれてるんじゃ?」


 色々と心当たりがある翔だった。


◇◇◇


 この春、『soaring』は正式にメジャーデビューを果たし、シングル、アルバムのヒットランキングを席巻していった。翌年、ソロシンガーとしてもショウは活動を始め、作詞、作曲とマルチな才能を開花させていく。


 一時代を作り出した伝説が始まったのは、学園の卒業イベントホール、その客席からだった。

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