今日のお昼頃のことだ。私は会社に退職願を提出した。
上司も予想していたのだろう、特に驚いた様子もなく受理されて、二つ三つ、当たり障りのない会話をした。
いざ辞める日が決まると笑顔が親しげになるのは、もう内部の人間ではなく、外部のものだと判断しているからかもしれない。
慣れない定時退社となった帰り道は、新鮮ではあるが、どこか頼りなくもある。就職のために地元を離れたときと同じで、地に足がついていない感じだ。
生活を支えていた仕事を手放したのだから当たり前といえばそうなのだが、加えて落ち着かないのは、罪悪感のせいかもしれない。
途中で辞めるのが良いことだとは、両親も学校も、ついでに言うとお天道さまも教えてはくれなかった。
私が仕事を辞めると決めた日も太陽は律義に東の空から昇ってきたし、残業して夜中に帰った日も、太陽がきちんと西へ帰っていったことを月が教えてくれた。
同じことを続けるだけの仕事は、さぞ大変なことだろう。
今日はお先に失礼しますね、と目線を上げて夕陽に話しかける。
毎日えらいね、と笑顔で伝える。
空は、先ほどよりもさらに赤みを帯びていた。
照れているのかな。それか月と交代する前に、夕陽はもうお酒を飲み始めているのかもしれない。
朝陽が赤みを帯びているのも、きっと、毎日が二日酔いだからだ。そんな風に考えると、これからは太陽とも仲良くできそうな気がする。
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