青春と魔法のランプ

しののめしのめ

第1話 ひねくれ者と魔法のランプ

 ぼっちを拗らせ早7年。最近流行りのラノベの様に急に美少女達からチヤホヤされる訳もなく。妹はいれど、仲も良くなく、ただただ無駄な毎日を過ごすのみ。そんな俺は今日も、呼び出しをくらっていた。

「いい加減勉強したらどうなんだ?」

 そう話す担任の顔なんてものは見もせず、ただひたすらに画面の中の美少女を覗いていた。俺は二次元美少女を見ながら

「俺が勉強したらよゆーで1位とっちゃって目立っちまうじゃないですか」

 と、アホなことをぬかしていた。

「いいか?お前はいつもいつも赤点赤点、補習補習で行く大学がこのままじゃ危ういんだぞ?もっと危機感を持たんか…」

 担任は呆れ気味にそう言った。まぁ1年もこんな奴の担任をしていれば呆れもするだろう。

「安心してください、高卒ニートになるんで」

 俺はキメ顔でそう言ってやった。ふっ…決まったぜ。

「そーかそーか…じゃ、退学でいいんだな?」

 凄い話の飛躍っぷりだ。

「はい、いいっすよお疲れ様でした」

 別に退学だろうと構わない。中卒ニートで生活保護を貰って暮らすのも悪くない。寝て起きてを一生繰り返すだけなんてめんどくさくなくて素晴らしい。時に話は変わるが、病気や事故などで寝たきりになってしまった人を見て「変わってあげたいくらいです」なんて綺麗事を言う偽善者共がいるだろう。(それを世間では本音と建前って言うらしい)親族や恋人であるなら本音なのかもしれない。だけど赤の他人が言うのだ。アイツらはそんな事を微塵も思ってない。本当は自分じゃなくて良かった。と思っている。だが俺は違う。俺みたいな社会不適合者が不自由なく動けてるよりも働きたくても働けなくなってしまった人が動ける方が何倍もいい。俺は別に生きてても死んでるようなもんだし、これから国に社会に貢献できるわけでもない。だから働きたい!社会に貢献したい!って思ってる奴が動けたほうが社会の為になる。要は俺は本気で変わってあげたいと思ってるってことだ。まぁ、前置きはこの辺にして、俺は綺麗事、偽善者だらけの社会に出たくない。みんなやりたくないことをやりたいやりたい言っている。そんな嘘だらけの世界に出たいわけがない。だから中卒で構わない。

「そうか…本当に退学するんだな」

 俺はヘラヘラしながら答える。

「はい。いっすよ」

「はぁ…なら最後に毎日のお前の昼食スポットである旧倉庫、あそこの片付けをして来い。欲しいもんは持って帰ってくれて構わん。あそこはもう取り壊すからな」

 取り壊すなら俺が片付ける意味なんてないのではと思ったが、旧倉庫にはお世話になった。

「分かりました」

 俺はそう返事をすると、生徒指導室を出ていった。





「相変わらず汚ぇな」

 俺は旧倉庫に着くとそんなことを1人ごちた。旧倉庫と言うだけあって木造建築である。天井は穴まみれで、雨で腐った木がたくさん床に落ちている。中に入ると真っ暗で何も見えない。俺はスマホのライトを付ける。知ってはいたが、ここで災害でもあったのかと思うほど汚い。俺が昼食を食べる場所なのである程度は片付けているが、それでも焼け石に水だ。

「片付けるってなにをどうすればいんだよ」

 昼食を食べるために片付けたといっても物を退かして座れる場所を作っただけなので本格的に片付けるとなるとどうしていいか分からない。

「まぁどうせ退学だし、金になりそうなもんだけ貰っていくか」

 家に帰れば両親に確実にブチ切れられるのは確定している。もしかしたら勘当されるかもしれない。万が一を考えてお金は大切なのだ。

 キラン

 今なにか光ったような気がした。光がした方向へ近づいてみる。スマホで照らすとそこには、アラジンと魔法のランプに出てくるような、Theランプが置いてあった。色は褪せているが金色でもうほんとTheランプである。語彙力がなくなるほどの衝撃。これは高く売れそうだと思った。だがしかし、こんな物めったに触る機会もない。しかもアラジンと魔法のランプのランプっぽいときた。となると導き出される答えは1つ!

 せっかくだし擦ってみる。となる!

「ま、出るわけないんだけど」

 まさか自分がこんなにガキだったとは思わなかったが、まぁいい。

「ねぇ」

 これが俺の最初で最後の思い出だ。

「ねぇってば」

 これで俺の学校生活も終わり。さっきは強がったけど、青春したかったなぁ…

「ねぇ!ねぇって言ってるでしょ!!」

「なんださっきから人が感傷に浸ってるところにうるさい…」

「な」

 そこには長い白髪を腰まで伸ばした、スマホでしか見たことないような俺好みの美少女がランプから繋がった状態で浮いていた。まるでランプの魔人の様に。

「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 俺は16年間で出したことのない大声で叫んでしまっていた。

「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ってうっさいな!話しかけてるじゃん!そんな驚くことないじゃん!」

「そうは言ってもお前、浮いてるじゃん!非現実じゃん!ここまで冷静さが失われたのははじめてだよ!ヤンキーにゴキブリ15匹放たれた教室に閉じ込められたときの方が冷静でいられたは!」

「何それかわいそ…でもイジメられてそ〜…」

 うるさい、ほっとけ。なんて失礼なやつだ。

「んで、なんでお前は出てきたんだよ?まさか俺が擦ったから?なんか願いでも叶えてくれんの?」

 まぁ十中八九そうだろう。要はランプの魔人って訳だ。

「おっ、最近の若者は物分りが早くていいねぇ。前のあの〜誰だっけ?ア…アサシン?あの人は物分り悪くてねぇ何回言っても理解して貰えなかったんだから」

 アラジンと言いたいんだろうか。そのままじゃ暗殺者じゃん…つかあれ実話だったのかよ。

「んで?願いは?」

 願い…か。どうせ生きてても死んでるようなもんだし金があってもやりたいこともない。愛が欲しいなんて言っても創られた愛なんてものは虚しいだけだ。だから、

「特になんもない」

「え〜なに?無欲系語ってんの?ならもっとイケメンになってからやりなさいな」

 なんだこいつ。急に俺のことディスりはじめたぞ??しかも何そのドヤ顔。なんも決まってねーからな?

「え〜もうなんでもいいから早く決めてよ〜私願い叶えないとこの中に戻れないんだから〜!」

「お前の事情なんてもんは知らん。無いもんはない。諦めろ」

「は!?呼び出しておいてサイテーなんだけど!!私を快適なランプ生活に戻してよ!高校生なんだからおっぱい揉ませろとかでいいでしょ〜!もうウソでもなんでもいいからはやく願いを言って!」

「おまっ、高校生舐めんな!男子高校生がおっぱいの事しか考えてないとか思うなよ?男子高校生ってのはな!ほら、もっと、あれだよ、ほら、…クルマエビの事とか考えてんだよ!!」

「なんでエビなの!?怖いんだけど!?」

 しかし無いものは無いからなぁ…ウソねぇ。ウソかぁ。

「お前時間も戻せたりすんの?」

「え?もっちろん!ランプの魔人はなんでもできるわ!」

「じゃあ俺の願いは―」

 俺が願いを口にした瞬間辺りが目を瞑らなければいけないほどに光り輝きはじめた。

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