第六話 模倣

僕は屋敷にある書物を読み漁っていたら錬金術について分かったことがいくつかある。


・詠唱が一切要らないと言うこと。


・合金等を調合し、自在に形を形成出来ること。 また、鍛冶師とは違い形を形成するだけなので物の強度や鋭利さなどは鍛冶師の専門分野である。


・薬師の天職と似た様なポーションなどの調合も可能であると言う事。


・錬金術は火、水、土、風の四大属性や、無属性といった属性には当てはまらないこと。


・錬金術は体内魔力ではなく空気中の魔素まそを利用して行う為、魔力枯渇が一切起きない。


今ある書物ではこのくらいしか分からなかったが、魔法と錬金術の共通点があるのですこしおさらいしておく。


共通点があるということは同じような事が可能なのではないかと模索してみる。


人が魔力や魔素等使用し何かを媒介にし任意的に起こしうる現象であること。

これにより僕は錬金術による魔法を模倣が出来る可能性を考えてみた。


僕はその日から魔法の自主練習に錬金術による魔法模倣の研究を取り入れてみることにした。


結果から言うと、簡単に出来たんだ。


そう、指先から小さな火の玉を低速で打ち出すことの出来るプチファイアを模倣できたのだ


夢の男の記憶の中にあった可燃物と酸素が、何かしらの影響で熱をもらうことにより、発火を起こすと言うもの。

存外イケた。 なんなら青い炎が出た。 青い炎の温度は約千七百度〜千九百度程度なので、かなりの高威力だ。


実験に金属製の的を使ったらプチファイアの模倣でさえ、一部溶けていたので初級以降の魔法を模倣したらどうなってしまうのか...。 また加減が出来るのか試して行く必要がある。


青い高温のプチファイア...。 誰も見たことがないはずだ。


このまま上手くいけば特級魔法師も追い越せる戦力を手に入れられるかもしれない。

そうすれば皆を見返せるかもしれない...。 そんなことを思いながら毎日鍛錬するのであった。


その後一週間が経過したある日。


午後になり魔法の講師であるライラ・フォン・メーティル様がいらっしゃった。


「今日は初級魔法を見せますので、ゆっくり練習していきましょう」

渡りに船だ! これでより研究が捗る!


「最初に見せますのは、ファイアボール。 こちらは少々爆発しますので少し離れてご覧ください。 炎よ、爆ぜろ」


言われた通りに離れていたので無害だが若干爆風が来る。

ほんとに爆発した 多分これなら野獣くらいなら丸焦げになるだろう


「次にウィンドカッターで行きます。 こちらはイメージがし難いので少々骨が折れました。 風の刃よ、切り裂け」


結構、厚みのある木製の的が真っ二つになる 実戦で使えば少々恐ろしいかもしれない。

殺傷能力が比較的高い魔法だな。


「一気にやっても覚えきれないと思うので、今日は以上になります。 イメージのしやすい魔法から練習していきましょう。 どれがイメージしやすかったですか?」


「はい、ファイアボールがイメージしやすかったです。 それと何故、水属性の魔法はお使いになられなかったのですか?」


僕は疑問に思ったことを素直に聞いてみる事にした。


「私の家系では代々水魔法が苦手で、せいぜい使えても初級までなのですが...私は水属性をほとんど扱えず...」


「これは...。 大変失礼しました...」


僕は聞いてはいけないことを聞いてしまったかもしれない。


「大丈夫ですよ。 周知の事実ですので」


優しく微笑んでくれたメーティル先生は本当に優しく、本当の家族のような温かさを確かに感じ取れたのだった。

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