第三話 兄からの仕打ち
あの話し合いから数日が経ったある日こと。
深夜に急激な頭痛と内臓が飛び出してしまいそうな程の吐き気で目が覚めてしまう。
「ぐっ...なんだこれ...」
声を溢しても誰も居ない。
そのはずだった。
「テイル、お前随分としぶといな。 ソレは遅効性の毒だ。 じきにお前は死ぬ」
兄のサイドが部屋の片隅に居るのだ。
「どう...し...そんなことを!」
僕は精いっぱいの声を振り絞り兄上に投げかける。
「そんなもの、お前が目障りだったからに決まっているだろう? 剣は僕と同等、おまけに魔法の芽まであるときた、万が一父上がお前を認めてしまったら僕はどうなる?」
兄上は淡々と答える。 そこに優しさなど一ミリも無いように見えた。
兄上はどうして変わってしまったのか?
まだ幼かった頃の兄上はとても優しく聡明な人だったのに。
「ぐっ...くっ...」
僕は精一杯反論しようとするが苦しくて何もできない。
兄上...。 どうして...。
「まぁいいだろう、きっともう聞こえてもないだろうからゆっくりと眠るがいいさ。 くくく...」
そう言うと兄上は部屋を後にした。
「うわあああああああああああああ!!!」
兄上が部屋を出た瞬間に力いっぱいに叫ぶ。
喉をかき鳴らし。 肺を振り絞る。
叫べば人が来るはずなのに誰も来ない。
これは明らかにおかしい。
防音の結界魔法か、使用人達も僕を見捨てたか今は定かではない。
遠のく意識、かすれゆく視界
どうして僕だけ? どうして僕ばかり? という感情だけが湧いてきた。
正直に言って僕はもう限界だった。
このまま死んでしまうのかな...。
どんどん薄れていく意識の中、僕は…。
サイドの自室にて
「これで邪魔者は居なくなると思うと自然と笑顔が零れ落ちてきてしまうものですね? 父上、セバス」
「あぁ、そうだな。 これでやっとお前に跡を継がせることが出来る」
下卑た笑みを浮かべているのはなんとテイルの実の父親でであるアレクである。
「えぇ、私もかねてより聡明なサイド坊ちゃまが跡取りになることを望んでおりました」
セバスが続いた。
「セバスよ、これで生き残ることはないのだろうな?」
アレクは念入りにテイルが死ぬのかを確認している。
「えぇ、万が一生き残れても後遺症でまともな生活は出来なくなるかと思いますが...。 例え毒で生き残ったとしても、後に...」
「それはいい! 最後まで苦しんで死ぬのなら最高ではないか! くはは!」
「父上...僕の最愛の弟が「不幸な事故」で亡くなってしまうのですよ。 笑ってしまうのは些か不謹慎ですよ…くふふ」
二人はテイルが死ぬことを大層心待ちにしている様であった。
そして、それを後目に、また、彼らに同調するかの如く執事長のセバスは何かを企む様に不敵に笑うのであった。
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