第10話

            十

 ウチに帰った俺は、険しい顔で朝食を取っていた。べつに料理が不味かった訳じゃない。陽子さんが用意してくれる朝食は最高だ。最高なのだが、塩素酸カリウムが分からん。朝食の後、美歩ちゃんの集団登校を見送ってから、彼女の机に行ってみた。「りか」の教科書を開いてみる。やはり、小一の教科書には塩素酸カリウムも硫黄も載っていない。七画以上の漢字が含まれるからだろうか……。

 陽子さんの台所の横の本棚を覗いてみた。うーん。やはり、薬物辞典とか、化学薬品に関する書物は無い。ま、お弁当屋さんの奥さんがそんな本を買い揃えていたら恐いもんな。当然か。こっちの本には……載ってないなあ。「ママの手料理ブック。一工夫で美味しさ百倍」には塩素酸カリウムも硫黄も載ってはいなかった。どうやら容疑者に直接尋ねるしかなさそうだ。強敵だが、仕方あるまい。俺の話術で犯人から直接聞き出すか。

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