神様のいたずら

「初めまして、専門生2年の山岸 清(やまぎし せい)です。今日から2人の教育係なのでよろしくお願いします。」


ついに今日から研究生として働くのだ。無気力でしかない。仕方が無いので、とりあえずこなしていくと……。


「屋良くん!そこはこうだよ!?違うよ!!」

「すみません !!」


山岸さんの強めの声が響いた。

(屋良って不器用なのか?)

そう思いながら作業を進める。


「また、そこはこうだよ!屋良くん違うよ。」

「すみません。」


屋良の方が気合いはあるがミス連発である。神様はなんて不幸なんだと思いながらも、僕はそつなくこなす。といっても掃除の順序や整理整頓が最初の仕事だから簡単だ。でも、屋良は上手くいかない。次の仕事は、生徒との会話だ。


「屋良くん最初は不安でしたけど、会話は得意そうで何よりですよ」

「はははは、それは大変だね」


山岸さんと誰かが話している。ふと屋良の方を見ると、笑顔で会話している屋良いる。不器用ながらも人格はとても良い奴なのだと思った。それに比べ僕は、そつなくこなしてはいるがやる気はない。なんだか屋良に申し訳ない気持ちになった。


「お疲れ様、これからそれぞれの家で全体学習会があると思うから忘れないでね。さようなら。」


山岸さんの合図でさよならをすると屋良が話しかけてきた。


「ねぇ、竹中くん。俺さ。いっぱい今日ミスっちゃったんだ。」

そう失敗談を清々しく話す。そして、


「失敗は成功のもとだからもっと頑張んないとね!それでさ、竹中くんはすごいよね!なんでも出来るんだね!」

そんなことはないが、そう言われると嬉しい自分がいた。何よりキラキラした屋良を見ながら話せない自分が恥ずかしかった。


「竹中くんはさ、なんでこの仕事えらんだの?」


辺りが真っ白になった。心臓がバクバクとして今にも吐き出しそうだった。


「ごめん、聞いちゃいけない話だったよね。ごめんね。俺、お家あっちだから、またあしたね。」


そう言って屋良は帰って行った。

僕はただただ恥ずかしく、この後の学習会も休みたい気分だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ライフ or ワーク たぬまる @suzutamaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ