第123話 姉との再会
「う…」
不意に私は目が覚めた。
「エルザッ?!目が覚めたのね?!」
突然声が聞こえた。その声には聞き覚えがある。
まさか…?
すると私の眼前に見覚えのある懐かしい顔が覗き込んできた。
「久しぶりね。エルザ…」
「お、お姉さま…」
慌てて身体を起こそうとすると、お姉さまが引き止めた。
「いいのよ、無理して起きないで。貴女は体調が良くないのだから」
「ええ…ありがとう…」
姉に言われて再び身体を横たえ、私は辺りを見渡した。高い天井に白い壁…。
「お姉さま、ここはどこなのかしら?」
「ここは礼拝堂の中にある休憩室よ」
「休憩室…」
「貴女はフィリップの棺に花を供えてすぐに気を失ってしまったのよ?だから慌ててここに皆で運んだの」
「そう言えば…そうだったかも…」
ポツリと呟き、改めて私は姉を見た。
姉は黒いドレスを着ている。
「お姉さま、式に参列していたの?」
「ええ、そうよ。一番後ろの席に座っていたわ」
「そうだったの…全然気付かなかったわ…」
「仕方ないわよ。礼拝堂には大勢人が集まっていたし…。それに貴女は周りを見ている程心に余裕が無かったでしょう」
「ええ。確かに余裕は無かったわ…ところでフィリップのお葬式はどうなったの?」
自分がどの位、気を失っていたのかも見当が付かなかった。
「もう…礼拝堂での式は終わったのよ。参列者達はアンバー家のお墓に馬車で向ったわ」
「え…?そ、そうなの?なら私も…」
「駄目よ、エルザ」
ソファベッドから起き上がろうとすると、再び姉に引き止められた。
「お姉さま、でも…」
「エルザ、本当なら貴女はまだ起き上がってはいけない身体なのよ?3日前に赤ちゃんを産んだばかりなのでしょう?」
「そ、そうだわ…ルークは今どこに…」
「大丈夫よ、ルークならここにいるわ」
よく見ると、姉の側にはクーファンが置かれていた。中にはルークが眠っている。
「ルーク…」
「お母様は皆と一緒にお墓へ行ったわ。ルークは授乳が必要だから連れて行かなかったのよ。フフフ…でも、本当に可愛いわね。エルザにもフィリップにも良く似ているわ…」
そして姉はルークを愛し気に見つめた。
「お姉さま…そう言えば、大丈夫だったの?」
淡々と話す姉の様子が少し気がかりだった。
「え?何が?」
「お父様やお母様…それにアンバー家の人達から何か言われなかった?」
「ええ…特に何も言われなかったわ。何しろ今はこういう事態だから」
「そうよね…」
姉は私を心配させない為に嘘をついているのかもしれない。
参列客の一番後ろに座っていたのも、フィリップのお墓までいかなかったのも…責められたから行かなかったのかもしれない。
「お姉さまは1人でここまで来たの?相手の方は…?」
「彼は来ていないわ。私が1人でここまで来たのよ」
その時…。
ルークがぐずりだし…力のない声で泣き始めた。
「ホンギャ〜ホンギャ〜…」
「あら、あらルーク。お腹が空いたのかしら?今、ママのところへ行きましょうね?」
お姉さまがルークの寝かされたクーファンを運んできてくれた。そして私が起き上がるのを手伝ってくれた。
「ありがとう、お姉さま」
ルークを胸に抱き上げ、前をはだけて含ませるとルークはすぐにコクンコクンと飲み始めた。
「フフフ…本当に可愛いわね…」
「ええ…」
ミルクを飲んでいるルークを見ていると再び目頭が熱くなってきた。
フィリップ…貴方がここにいれば、どんなにか良かったのに…と―。
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