だれる
公立高校の机というのは基本的に古い。塗装がないというか木面が直に出ているというか、とにかく梅雨みたいな湿気がある日になると触るとベタベタする。
云年と使われ続けた汚れが炙りでるように湧き出し、ティッシュで拭くと変色するほど。
それもあってかは知らないが、年を経るごとに梅雨というものが嫌いになっていく。
そしてそれは部活でも変わらず。
「あ〜〜」
星奈と二人で部室に行くと、先輩は扇風機の前で小学生みたいなことをしてた。
「こんにちは」
荷物を置いて僕らも先輩の隣に居座った。もともと華道部だった部室の名残なのかは分からないが部室の一部は畳で一部活にしてはかなり広いと思う。
「おい、ここは私の領地だぞ」
「僕らにも分けてください」
暑すぎてもはや何もしたくない。べたーっと川の字で寝転がっていると幸を迎えに行った裕也らが来た。
「お前ら、活動しろよ」
「クーラーつける許可貰ってきたよ」
遅かったのはクーラーの申請をしに行っていたかららしい。いつもなら7月にならないとクーラーをつけてくれない学校だけど、最近は色々と生徒にも優しくなって部活のクーラーも申請制度に変わっている。これが使えるのはやはり文化部の一番の特権と言ってもいい。
まるで新鮮な風が吹くかのように冷たい風が室温を下げていく。扇風機があることでそのまわりは早く、みるみるうちに部屋が涼しくなった。
「よし、今日は遊ぼう」
「練習じゃないんですか」
先輩の一言に思わず言葉が出た。まるで練習始めかのような掛け声だったから危うく聞き逃すところだった。
「今日は気分じゃない。ボードゲームをするべきだね」
「俺は練習がしたい」
その言葉に真っ向から反対したのは裕也だった。彼は妙に真面目な面があるので仕方なくはある。
「じゃあお前抜きな」
「やろっか」
幸はもはや諦めたようで、畳の間にある棚からゲームを持ってくる。
「人生ゲームか」
日本一ベタなボードゲーム。ルール説明などほぼいらない単純が故の運ゲー。プレイ時間的にもほんとに今日はゲームしかする気がないみたいだ。
「じゃあ、裕也はそっちで練習ってことで。うちらは遊んでるんだからあんま音出すなよ」
あっちにいけ、と腕をはらいながら着々とゲームの準備を始める2人。スタート位置にはもちろん4台の車しかなく、強く断る理由もなかった僕らは丸テーブルに座る。
「じゃあ順番はルーレットの目が大きい人からで」
裕也はその場に立ち尽くして何も話さない。しばらくして痺れを切らしたのか、頭をぐしゃぐしゃと掻きむしって
「あーもう!分かったよ。俺もやる。やるから用意しろ」
「素直じゃないんだからなぁ」
まんまと先輩の策にハマる裕也。まぁ一人で練習してても楽しくないからね。
「うるさい。これで負かしたらちゃんと練習始めてもらうからな」
「はいはい。じゃ、順番決めからで」
残念ながら僕はびりスタートです。まぁこのゲーム順番は関係ないからいいけどね。
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