第14話 VSバルモン
身の丈2メートル70㎝の大男。
その拳は火竜をも殴り殺す。
魔法も、技術も関係ない。
ただ、ひたすら暴力につぐ暴力…それで無敵と呼ばれる最強と言われる男。
四天王の一人 破壊のバルモン。
数多くの勇者や英雄が戦うも1度の敗北も無い。
殆どの勇者や英雄はバルモンを避けて魔王に挑んだ。
その動かない事実が…『魔王より強い』『真の魔王』と呼ばれる所以。
そして人類最強である勇者の中でバルモンに戦いを挑んだ者は全員が死んだ。
ある者は首を千切られ鎖で城門に括りつけられていた。
聖女はバラバラにされ手足が千切られ胴体の上に首が置いてあった。
勇者の中の勇者と言われたロトマも頭をトマトの様に潰され死んで居た。
純粋な人類の敵…それがバルモン。
バルモンが戦いを欲する時…それは都市が壊滅し全滅する。
騎士団…魔術大隊…そんな物じゃ此奴は止まらない。
リヒトになった俺が戦う相手には此奴がふさわしい。
負けて当たり前…最強の魔族に戦いを挑み…死ぬ。
それが良い。
勇者パーティは解散。
だが、彼女達にはジョブがある。
勇者が死んだとき…ともに授かった3人のジョブは変わり、その後の生活が出来るように『通常のジョブ』になる。
その後の生活は…考える必要は無いな。
◆◆◆
俺はバルモンを探した。
探すのは難しくない。
情報は何処にでも飛ぶ、逃げる為に。
「お前がバルモンだな!」
凄いな…城塞都市ギルメガが滅ぼされていた。
生き残りは居るのかも知れないが、最早廃墟だ。
「ほう、俺と知って声を掛けてくる人間が居るとはな、何者だ!」
「俺の名はリヒト…勇者リヒトだ」
「ほう…勇者か、楽しめると良いな…何処からでも掛かってくるが…貴様、いきなり斬ってくる等」
「甘い、甘いー-っ魔族と人間に語り等要らない、ただ殺しあうそれだけだ…」
顔色が変わった。
それで良い…さぁ殺しに来い。
「ふわぁはははははっ気に入った、その通りだ」
バルモンが殴りかかる。
俺は『空歩』というスキルを使い空を歩くようによけ頭を聖剣で斬りにかかった。
聖剣とバルモンの角がぶつかる。
まさか、聖剣ですら角が折れないのか。
「聖剣ですら斬れぬのか」
「魔族の角は力の象徴、その程度の力量では斬れぬわ」
確かに恐ろしく固く斬れないな。
「ならば、これを受けてみるが良い…これが勇者リヒトが使う究極の奥義光の翼だぁぁぁぁー――っ」
聖剣から左右7本ずつ14本の翼を持つ光の鳥がバルモンに襲い掛かる。
これがリヒトの持つ、最強の技だ。
だが…流石はバルモン。
避けもしない。
「確かに、凄い技だが…俺には通じないな」
ぶつかった光の鳥が消えるまでバルモンは受け続けた。
やがて光は消えて光の鳥は消えた。
これで終わりだ。
もうやれることは無い…後は死ぬだけ。
そうすれば…俺はきっとバルモンになる。
そうすれば『リヒトは死んだ事になる』
勇者としての名誉は守った…俺を殺したんだ、これで良いだろう。
エルザ、クラリス、リタ…お前達はもう戦う事は無い。
ただの村人だ…大好きなリヒトは魔族に殺されたのに、戦いもしなかった不名誉を押し付けた…だが『命は助けてやった』『戦わない人生はやった』
これらは復讐でもあり『幼馴染への思い』でもある。
自分でも最早気持ちは解らない。
だが…それもこれで終わる。
「後は接近戦しかないな」
「ほう…俺と接近戦、面白い奴め」
遊んでいる…避けもしない。
「聖剣でも皮一つ斬れないのか…」
「気が済んだか…それじゃこちらから行くぞ」
只の正拳突き…だが掠っただけで腕が千切れた。
前世で言うならシャチとそのエサのアザラシの子供。
その位差がある。
これで死ねる…
「さぁ、バルモン俺を殺すが良い…」
「貴様、何者だ、人間じゃないな」
「俺は人間だ」
「何処の世界に一瞬で手が生え変わる人間がいるんだ」
何故だ…
俺はリヒト相手に簡単に殺された。
牛鬼には確かに再生能力もあったと伝聞がある。
何故…いまその能力が…解らない。
そんな能力があるなら、あの時死ぬわけが無い。
「それでも俺は人間だー-っ」
頭の中が真っ赤になった。
周りが見えない。
痛い、痛い、痛い…
ただ、ただ赤い…赤い光景だけが映し出される。
何も見えない、赤い、赤い…ただ赤い空間に俺はただ1人いる。
痛みを感じると俺はその方向に攻撃を仕掛けた。
ドスドスドス…ただ殴り返す…誰を。
恐らくバルモン。
見えない、ただただ…赤い。
手が痛いから聖剣でなく素手で殴っている気がする。
痛みはどんどん小さくなり…今では全然痛くない。
ドスドスがぺちぺちに変わっていく。
もう…何もしてこない。
ふと俺は意識が遠くなり眠くなってきた。
『この化け物がー――っ何が人間だ』
その声が聞こえた時…俺は眠さが増し…意識を手放した。
◆◆◆
どの位寝てたのか…
少し肌寒い…月が出ている。
もう夜か…
ぴちゃっ…
ん? 俺は何を持っているんだ。
生暖かい…そして大きい。
俺の手が握っていたのは…バルモンの首だった。
リヒトの首じゃない…バルモンの首。
「嘘だぁぁぁぁぁー――――――っ」
俺は死ぬはずだったのに…何でこうなったんだー――っ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます