異世界アイドル成長奇譚〜あいろま〜

七篠愛

おはよう、異世界

その日は祐希ゆうきにとってなんてことない最高の1日になる予定だったのだ。気になっていたカフェに行って、大好きなアプリのイベントに参加して。それから舞台と過去ストーリーが展開されることが決まって、とにかく好きなものだけを詰め込んだ、しかも朗報だらけの最高の1日。それがどうしたことか。3か月ほど前から決まっていた予定が急に変更になってしまったのだ。


ユーザーが待ち望んでいたイベントは関東某都市で行われた。アプリ開始から幾年。発表された際には友人であるコーチン軍曹ー優美ゆみとはしゃいだものだ。とにもかくにも戦うアイドルを全面に押し出した微妙なそのゲームは祐希たちの心を捉えて離さなかった。

「いや〜リリース当初はどんな酷いアプリかと思ったけど、勧めてくれた友人には感謝しないとね〜。」

「ほんっとにそうだね。」

優美の言葉に深く頷く。数度目かに乗った電車の発車アナウンスは友人との楽しいおしゃべりの前にはBGMでしかない。

「でも、過去ストーリー追加発表は驚いたよね!」

「わかる〜!でもこれで本編でメインヒーローが憧れたさあの人がわかる訳でしょ?」

ああでもないこうでもないとストーリーの予測を立てる中で祐希はふと瞼が重たくなってくるのを感じた。

「眠そうだね〜?起こしてあげるから寝てていいよ。」

友人の優しい一言を最後に祐希のまぶたの帳は完全に落ちた。


それから・・・・・・目を覚ましても完全に視界は遮断されていたのだ。

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