【小ネタ】梅雨の日の二人。

LINEとかなんかそれ系で話してる梅雨の一幕。大体ただのコイビト同士っぽい。

折に触れてTwitterで嬉しいお言葉をくださる方に捧げます。


+ + + + + +


「どうしよう……傘忘れた……」


「ああ、降り出したもんな。でも帰るまでに止むかもだし、そんな絶望的な雰囲気漂わせるほどのことじゃなくねぇ?」


「君のところでは二人で下校イベントが起きないとは言わせない」


「ああ、そういう……いやでもあれランダムだろ。ダッシュで帰ればなんとかなるんじゃ」


「『たまたま』『運悪く』『うっかり』が起こったらイベントの予兆だって経験が言ってる」


「教科書忘れたーとか? 辞書忘れたーとか?」


「それ。いつも鞄に入れてる折りたたみ傘を出した日に限って降水確率を裏切って雨が降り出したとか、もうこれ完全にイベントの前振りとしか思えない」


「イヤな経験値積んでんな……」


「私だって積みたくなかったよ……この予感が外れてくれればと切に願ってるよ……。いっそ早退しようかな」


「それはそれで別のイベントフラグになりそうな気もする」


「ですよねー。どうしよう詰んだ。相合傘イベントだけは避けたかったのに」


「梅雨入る前からいつでも鞄に折りたたみ傘常備してたのそれが理由か」


「そうだよ念には念を入れてたんだよ! なのに一度のうっかりが悪魔のような確率でイベントを運んでくるっていう現実がひどい」


「……なんでそこで『彼氏』に頼るって発想が出ないんだあんた」


「( ゜д゜)ハッ!」


「www 焦りすぎだろwww」


「返す言葉もない……。え、でも頼っていいの?」


「当たり前。っつーかそういうときのための俺だろ」


「やだ格好いい惚れる」


「褒めても何も出ないぞ。帰り、いつものゲーム屋寄るけどいいよな?」


「全然オッケーっていうかむしろ私も行きたかったし行くつもりだった。雨が降るまでは」


「じゃあ問題ないな。ただ問題はあんたの学校の方が早く授業が終わるってことだが」


「君の移動の時間もあるしね。図書室とかで時間潰すとかする」


「了解。近くまで来たら連絡するわ」


「よろしくお願いします……!」


「持ちつ持たれつだからあんま気にすんなよー」



+ + + + + +



 ……これで一件落着、とうっかり楽観視した二人は知らなかった。

 図書室での時間潰しが新たなるイベントのフラグになることも、終礼が済むや否やダッシュで帰ったことが面倒な疑惑と嫉妬イベントの種になることも――逃れたはずの相合傘イベントが双方に別の形で立ちはだかる未来も。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る