【リクエスト派生小ネタ】結局二次元に勝るものはないのです。

これは、「逆ハー補正とか現実では要らないんで二次元に行きたいです」な彼女と、「ハーレムとか画面の向こうで充分満喫してるんで現実ではちょっと」な彼が、乱立するリアル恋愛フラグを折るために「(偽装)恋人できましたー」と周囲に報告したら何故かカオスな修羅場が形成された、その後の彼らの他愛ない日常会話の一片である。


+ + + + + +




「イベントに適切な人数って、あるよな」


「いきなり何」


「いや今三角関係フラグを全立てして順次イベントを見てるところなんだが」


「イベント回収周回なの?」


「さすがに1週目で全三角関係イベント制覇は無理だった。で、だ」


「うん」


「例えばこの三角関係イベント、主人公対攻略対象二人だろ」


「そうだね。三角関係だからね」


「これがさ、主人公対攻略対象三人以上になると、なんつーかハードル上がるだろ?」


「萌えの?」


「萌えの」


「まあ、なんていうか、萌え以前に修羅場度上がるよね」


「だからさ、適切な人数ってあると思うんだよ。やっぱ三人以上ってねぇよな。好意でも敵意でも」


「……さっきから思ってたけどなんであえて封じられし記憶を掘り起こすようなこと考えてるの? ばかなのしぬの?」


「なんでちょっと中二病風。しょーがねぇだろ連想しちゃったんだから」


「やっとアレを過去として処理できるようになってきたのにわざわざ思い出すようなこというなんて気遣いが足りないと思います」


「俺だって好きで思い出してるわけじゃねぇよ。それだけ深く記憶に刻まれたってことだろ」


「心の傷の間違いじゃないの」


「そこまで現実に比重置いてない」


「それもどうよと思うけど言い分がわかっちゃう自分もどうだろう」


「さすが。以心伝心?」


「何か微妙に違う気がする」


「にしても、あの場のカオスっぷりを思い返すに、お助けキャラ登場が無かったらどうなってただろうな」


「まだ引っ張るのこの話題」


「とか言いつつ付き合ってくれるんだろ、『カノジョさん』?」


「読んでるのひと段落したところだから別にいいけど。オハナシするなら飲み物が欲しいところですね『カレシさん』?」


「紅茶でいい? 余りものだがクッキーも出して進ぜよう」


「わーいやったー。心置きなく御馳走になれるという点において君がいてよかったなって思うよ。フラグにも好感度上げにもならないって素晴らしい」


「たかる気満々か。というかメリットそれだけか」


「たかるだなんて人聞きの悪い。主に虫除け(弱)として大活躍だよ彼氏様々だよ」


「(弱)ってなんだ(弱)って」


「だってどっちかっていうとVSフラグとかそっちの方に大活躍なんだもん……」


「それはまあ、俺にはどうしようもないな」


「偽装恋人登場でフラグが折れるような生易しい世界じゃなかったのは大誤算だったね」


「そうなんだよなー。目論見が甘かったのは認めるけど、この世界やっぱオカシイだろ」


「今更じゃない?」


「確かに今更だけど。よく考えてみろよ。俺たちが、まあなんかよくわからないが今世やたら人に好かれるようになったことを前提にしてもだ、普通あんなカオスにはならないだろ」


「まあ、なんか気付いたら予想より大人数が集まってたよね。その割に深刻な修羅場にならなかったけど」


「俺たちにその気もなく、気を持たせるような言動をしたかといえば首を傾げる状況で、だ。あれだけの人数が集まるのも謎だが、もっと言えば、集まった奴らの意識も変だったと思わないか」


「意識?」


「俺たちに好意を寄せてくるのは、まあいい。リアルハーレム――あんたの場合は逆ハーレムか。そういう補正っぽいのを今世では何故か得てると考えるしかないしな。でもさ、なんかあいつら……妙にドロドロしてなかったよな?」


「健全ってこと?」


「そう言い換えてもいい。俺もあんたも、それぞれに好意を持ってる人間からしたら言わばポッと出の人間なわけだし、多少は反発があると予想してたわけだが、ちょっと違かったろ」


「あのカオス修羅場が形成されたってことは、一応反発があったってことになるんじゃないの?」


「冷静に考えてだ。あれ反発だと思えるか?」


「……無理だね」


「だろ?」


「なんか……変にさっぱりしてたよね? あっさり目に身を引く派と、それでも好きでいるのは自由だろう派ばっかりだったし」


「後者が9割なのは誤算だったけどな。フツー……いやフツーを語れるほど他人に好意を寄せてもらった経験はないけど、オカシイだろ」


「つまり、もっとドロドロした修羅場になるはずだろうと」


「恋は脳内麻薬による錯覚だのなんだの言うけど、つまり思い込んでるわけじゃん。特に俺らの場合は、その勘違いを加速させられてるようなもんだと思うわけだ。そんな状態で、あんな変な修羅場になるか?」


「確かに、もうちょっと……過激派が出てもおかしくはないよね」


「穏当な表現だな」


「不穏当にしてどうするの」


「その後のお助けキャラ登場、かーらーの、事態の一旦の収束の流れを考えるとさぁ……アレ、分岐イベントの一環っぽくねぇ?」


「分岐イベント……だと……」


「いきなりどうしたその反応(リアクション)」


「現実を直視したくないもので」


「逃避の結果かよ。直視してくれないと俺がぼっちになるからやめてください」


「えー。だってもうこれ以上現実直視して絶望を感じたくない」


「そのわりに口調軽いな」


「重くしたら事態が深刻っぽくなるじゃん」


「深刻じゃないのか」


「そこまで現実に追い詰められてない」


「二次充できるし?」


「二次充できるし。同士もいるしね」


「そうだな。一人じゃないって素晴らしいな」


「たとえあのカオス修羅場を契機に新たなステージへと移行していたとしても私は二次充を諦めない」


「そうだな。諦めると希望も絶望もなく無の境地で生きるしかないしな」


「よくわかっていらっしゃる。さすが同士。悟りは拓けそうにないし拓く気もないのでこれからもよろしく」


「二次充ができないと死活問題なのはこっちも同じだしな。末永くよろしく、共犯者サマ?」



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