クラブカーストハイスクール
ににつぎ
第1章 明乃森高等学校退学編
1話 閉ざされた日
宮城県仙台市にある明乃森高等学校。
スポーツ、学業共に力を入れている私立のマンモス高校だ。多くの部活動が関東大会、全国大会で結果を残している。
1ヶ月前、主人公の一色颯佑がその学校に通っていた。
一色颯佑は明乃森高等学校の硬式野球部に所属し、1年生ながら背番号1を背負い、エースとして、チームを引っ張ってきた。
しかし、とある事件がきっかけで明乃森高等学校の硬式野球部を退部し、この学校を去ることになった。
終業式当日。この日をもって、一色はこの学校を去る。
一色は硬式野球部の部室の前へとやってくる。
とある待ち合わせのために、部室の前に来たのだが……
腕時計の針は集合時間の20分前……少し早く来すぎたか……
何もしないのも暇だし、……グラウンドでもみることにするか……
と一色は硬式野球部がかつて練習場所として使用していたとされるグラウンドへと向かうことにした。
グラウンドの様子はというと、なんというか、とても静かだった。
本来ならこの時間は野球部員の活気に溢れているのだが……
硬式野球部は活動停止中だからな……
と一色はグラウンドを見ながらそう思いつつも、誰もいないグラウンドに足を踏み入れ、マウンドへと立っていった。
一色は大きく息を吐く。
どうしてこうなったんだろうな……
静かなグラウンドのマウンド上で、一色は悲しんでいた。
時系列は、一色が転校するきっかけになった日に遡る。
明乃森高校1年2組の教室内。
一色は、4時限目の現代社会の授業を受け終わり、お昼休みに入っていた。
そして、一色の周りには2人の男子がいた。
その3人とは卓球部の武良貴斗、男バスの神崎工である。
「中学の時さ、公民って授業あったじゃん。あれさ、あの教科書に出てくるあおいちゃんとりこちゃんって子、可愛かったなぁ……って思ってたんだよね。」
と一色が友人の神崎、武良に話しかけた。
「俺はりこちゃん派だな。ツインテ美少女は最高だろ。」
と武良が話に乗ってくる。
「俺はどっちかって言うと、あおいちゃん派なんだよなぁ……もちろん、りこちゃんって子も可愛いんだけどね。だけど、あおいちゃんは、ちょっと中性っぽさが出てていいんだよね」
と一色は言うと、
「わかるわぁ……あおいちゃん、可愛かったよなぁ……ボーイッシュ女子はタイプなんですわ」
と神崎も話に乗ってくる。
「なるほど、だから神崎の彼女、ボーイッシュ女子なのね」
「そういうことよ!」
と一色が納得すると、神崎がウキウキしながら言う。神崎は、今会話している3人の中で唯一の彼女持ちである。
「彼女って、女バスの宮橋だろ? イチャイチャしやがって羨ましいぜ!」
と武良は嫉妬していた。
すると、
「直人くん!! 一緒にお昼食べよ!!」
と神崎の彼女である宮橋明美が笑顔でやってきた。
「ということで、じゃ!俺は明美ちゃんとお昼食べてくるんで!」
と言い、神崎は去っていった。
「明美ちゃんにあーーーんしてもらうんだろ!!羨ましい!!
俺も彼女にあーーーーんしてもらいたい!!」
と武良は闘志を燃やしていた。一色は武良の発言に苦笑いをしていた。
「そういや、一色の高校って選抜甲子園に出場するんだよな」
と武良は話題を変えてきた。
「なんだよ、いきなり……ま、そうだけど……どうして今、選抜甲子園の話を……」
と一色はサバサバした様子で言った。
そう、明乃森高等学校硬式野球部は、5年ぶり3度目の選抜甲子園出場を決めたのだ。ちなみに、硬式野球部は過去に春夏通じて9度、甲子園に出場している。
今年の選抜甲子園で10回目の甲子園の舞台である。
「硬式野球部が選抜甲子園出ることをふと思い出してさ、ふと、本屋さんに立ち寄ってさ、探したんだよ。選抜甲子園について書かれている雑誌を」
「そ、そうなのか……」
「で、ある雑誌を見つけてさ、これ」
「これは……」
と一色が目にしたのは、『Vやねん!高校野球!』という雑誌。
その雑誌の表紙には「選抜甲子園で活躍が期待される1年生特集!」と書かれていた。
「この雑誌をパラパラとめくったらよ。一色、お前のインタビュー記事が載っていたんだよ!!雑誌に載るってめっちゃ凄くね!?一色!?しかし、一色ってチームのエースだったんだな」
と武良は一色を褒めた。
「そ、それはどうも……」
「は、反応薄いな……もっと喜べよ……遠慮してるのか?」
「い、いや、そんなわけでは……」
「甲子園に何度も出場する強豪校でエース張れるとか、簡単なことではないんだぞ。胸張ってもいいだろ」
と遠慮してる一色に対して、武良はガツンと言う。
「うん、ありがとう」
と一色は武良の言葉が刺さったのか、嬉しそうに言った。
「で、一色の記事を読んだんだが……」
と武良が前置きをした後、
「なんだ?これ?」
と一色のインタビュー記事を、一色に見せる。
そこには、一色のプロフィール欄が書かれていた。趣味の欄には「ライトノベル・漫画を読むこと・アニメを観ること」と書かれていた。そして、その欄には続きが書かれており、好きな作品「ようこそ実力至上主義の教室へ」、好きなキャラクター「軽井沢恵」と書かれていた。
「お前……軽井沢恵が好きだったのな」
「うん、そうだよ」
「お前、心変わり早くないか。加藤恵、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣、アスナ……
好きなキャラにおいて、数々の名前を挙げてきたお前だけど……
次は軽井沢恵かい!!」
「心変わりではない。推しを絞っていないだけ。つまり2次元のハーレムってやつです」
「2次元のハーレム?意味が分からねぇ……」
と一色の発言に武良は完全に戸惑っていた。
「しかし……好きなキャラで美少女系挙げる勇気よ……しかもこれ、野球雑誌だろ。
浮きまくりじゃねえか……」
「大丈夫だ」
「ほんとかよ……」
と一色は堂々としていたが、武良は少しではあるが心配になっていた。
「ま、ここで話すのも何だし、昼飯買いに行くか」
「そうだね」
と武良と一色は昼飯を買うため、売店へと向かっていった。
「そういやさ……知ってるか? 最近、この高校で事件が起きているって……」
「え? 事件って何? 俺まったく知らないんだけど……」
と、武良が、さっきとは打って変わって、ある事件について深刻そうに話すので、
事件について知らない一色は、どんな事件が気になっていた。
すると、武良が
「明乃森高校女子高校生私物盗難事件」
と口を開いた。
「今、山翔海高校に在学する女子高生の間で被害が多発していてね。
女子高生の下着や制服、体操服が相次いで盗まれているんだよな。実際、クラスでも被害を受けている生徒がいるんだよね。最近だと、明美ちゃんとかな……」
「宮橋さん?マジで?」
と武良の発言に一色が驚く。
「……ところで、その犯人は?」
「まだ犯人捕まってないんだよな」
「マジで?」
「早く犯人捕まえてほしいんだがな……」
「許せないな。女子高生の私物を盗むとか、とんだ卑劣な行為……」
「俺も同意見だ」
と、一色と武良は話ながらスタスタと歩く。野球雑誌の話とは打って変わって、重い雰囲気になっていた。
すると、重たい雰囲気の中、チャイムが鳴った。
呼び出し?誰が?一色が疑問に思っていた。
「1年2組の一色颯佑くん。職員室まで」
と校内放送が流れた。
「え? 俺?」
と一色は驚いていたようだ。
俺なんか悪いことしたっけなぁ……
「一色呼び出しってどういうことだ……」
「いっておくけど、俺は悪さした覚えはないぞ……ま、野球関連のことだとは思うけど……」
と一色は少し楽観的に考えていた。
「と、とりあえず、職員室行ってくるわ」
「お、おい、一色の分は買ったきた方がいいか?」
「大丈夫」
と一色は言い残し、武良と別れて、職員室へと向かった。
一色は職員室へと向かうと、職員室のドアの目の前には、担任の小松先生が立っていた。
「小松先生、今来ました」
「一色くん、あなたに大事な話があってきたの」
「……俺に何の用っすか?」
「ついてきて」
と一色は小松先生にそう言われたので、小松先生の後をついていくことにした。
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