病院
キザなRye
全編
「
「先生、朱音は大丈夫なんですか。」
[ええ、大事には至っていません。今晩は付き添ってあげてください。]
♪ピーピー
[心拍停止?!]
「あ、僕の着信音です。」
[間違えるような着信音にしないでくださいよ。]
「もしもし、妻は大丈夫でした。はい、18時頃にウォーターバスが止まると思うので試薬入れて吸光度測って貰っても大丈夫ですか。そうです、はい、お願いします。」
[お仕事のお電話ですか。]
「そうなんです。研究の佳境で。」
[普段にされているんですか。]
「答える必要ありますか。」
[相当尖ってますね。研究の佳境だとは教えてくれたのに。]
「初めて言われました。」
♪ピーピー
[また着信ね、こちとらドキドキするから。]
「もしもし、炎色反応の実験をした痕跡のある道具が起きっぱなしでしかも火が付きっぱなし?誰がやったか見つけて強く叱っといてください。はい、お願いします。」
「ほらだめだろ、火付けっぱなしで来るのは。火事でも起こしたいのか。」
「ごめんなさい、妻のために急いでて。」
「それなら仕方ないか。」
[いや、仕方なくないだろ。]
「えっ?」
[ごめんなさい、つい。]
「困りますよね、火を付けっぱなしで放置するなんて。」
[あれ、話の流れ的には犯人分かってましたよね。]
「いや、全然。チャッカマンの火が付けっぱなしでしかも机に塩化リチウムと塩化銅と塩化アンモニウムが置いてあったらしいんです。」
[絶対そこまで言ってませんでしたよね、しかも関係ないのあるし。]
「関係ないの……あっ、メタンフェタミンですか?」
[え、何を思いだした?絶対覚醒剤使用者ですよね。]
「そんなことないですよ、だって僕が使ってるのトルエンとかメタノールとか酢酸エチルの混合物ですもん。」
[薬物乱用者には変わりなかったらしい。だってそれシンナーだもん。隠さないんだね。ってか、研究している人が有機溶剤の乱用者になるの、毒劇法学んでるよね。]
[というかチャッカマンの火が付きっぱなしって言わなかった?!どういうこと?この人いらないところで能力開花してるね。]
「そうですよね、妻が目覚ましちゃいますもんね。」
[誰に話しかけてるんですか。]
「看護師さんですよ。話しかけてくれてるじゃないですか。」
[幻覚症状まで起こってるし。相当末期だね。]
「妻、末期なんですか。」
[大丈夫です。ただの貧血ですから。]
「じゃあ、甘汞を摂取させてください。」
[いくら自己決定権があってもそれは無理です。ほんとにこの人理系なのか。甘汞って塩化水銀(Ⅰ)だよね、劇物だよ。殺そうとしてる……?!しかも貧血で摂取するの鉄だよね。一般常識もなっていない。]
♪ピーピー
[若干慣れたけどやっぱりこの着信音良くないよ。]
「もしもし。他の机に違う薬品もあった……。何の薬品が?硝酸とフェノールとグリセリンか……誰がやったのか見つけてきちんと指導してください。」
「ごめんなさい、ごめんなさい。急いで出てきたのでそのままにしてしまいました。」
[うん、爆発物作ろうとしたよね。ニトログリセリンとピクリン酸。この人、ただ人ではないよね。今ものすごく怖い。]
「妻の狭心症の治療のためにニトログリセリンを作ろうと。」
[結構心優しそうだな。]
「ついでにピクリン酸も。」
[ついでの感覚でピクリン酸は作るな。]
「妻のためって言い訳じゃだめですかね。」
[私に聞かないでください。それと狭心症の持病をお持ちなんですね、朱音さん。]
「全然。今日、呼ばれて必要かなって。」
[呼ばれてから作り出したの?しかも勝手に妻を狭心症にしてるし。]
[お薬はきちんとした製薬会社から提供を受けているので大丈夫ですよ。それと正式に認められた会社からでないと取引でいないんですよ。]
「僕言ってませんでしたっけ?ここの病院と取引している製薬会社の製造担当です。」
[今、製薬会社の信用はなくなったな。シンナー中毒の人がいる会社はろくでもないな。]
「通常の製造方法で作ったんですが受け取っていただけないんですか。」
[普段から実験室で作られてるんですか。]
「ええ、ニトログリセリンは僕が一人で実験室で作ってます。」
[それはそれで凄すぎる。週に百キロは入荷してるからね。この人だけで作ってるの凄い心配だけど。]
[吸光度とか言っていたのは?]
「暇つぶしです。」
[製薬会社にあるか普通。というか医療関係ならその着信音はやめろや。]
♪ピーピー
〈先生、朱音さんが急変しました。〉
[今度は本物か。佐藤さん心肺蘇生、鈴木さん電気ショック。]
「焦ってやんの。僕が作った音声なのに。」
[おい、ほんとにやめろ。]
病院 キザなRye @yosukew1616
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