嫌いな自分

あいくま

モヤモヤ

 ある日の朝。いつも通りの時間に登校し、友達と話していた。今日は1限から生命科学か。思いな。寝れないな。色々と愚痴り、けらけらと笑いながら、特に何もなく過ぎていく時間。そんな時ふと目が合ったあの子。ぱっと見とてもきれいに見えた。あれ?もしかして......いやいや、そんなわけないか。見ているのは友達の△△君だよな。性格もいいし。なにより、かっこいい。男子から見てもそう思うのだから。その後も他愛無い話は続いていく。そうこうしてるうちに予鈴が鳴った。そそくさと席に着き、頭を切り替える。膨大な情報が流れていたせいもあったのだろうか。講義を聞いているうちにあの子のことは忘れてしまっていた。

 1限も終わり、教室を移動して、次は2限。日本文学だ。理系の身にとっては、なんの縁もゆかりもない。というか、なんで理系の学部に行ってまで文学を学ばなきゃいけないんだよ。面倒くさ。心の中で愚痴りつつ自分の席を探す。実を言うと、日本文学は選択科目なのでいつもの講義とは席が違う。広い教室の中、迷いつつもやっと見つけて着席。今にも飛んでいきそうな意識を捕まえつつ、ふと隣を見てみる。あ、朝見たあの子だ。スマホ触ってる。なにしてるんだろ。ケースおしゃれだな。話しかけてみたいな。なんて声かけようか。休み時間はあと10分。そろそろ話しかけないと時間が無くなってしまう。でも、どうしても、【さいごのいっぽ】が踏み出せない。何故なら......

 話しかけたらどう思われるんだろう。びっくりされかな。もしかしたら、キモイとか思われるかも。不機嫌になるかも。話せたとしても、その後なんか言われないかな。陰で愚痴られて、あらぬ噂広められて、軽蔑の目で見られるのかもしれない。そんなの、耐えられない。モヤモヤした正体不明の何かが頭の中を回っている。

 こんなの考えすぎだ。そんなことあるわけないじゃないか。アニメの世界の陰キャじゃないんだから。そう自分に言い聞かせ、声をかけようとする。

『っ......!』

『キーンコーンカーンコーン』

『じゃあ、授業始めるから。席についてねー。』

無情にも予鈴が鳴る。行き場を失った音をしまい込もうとする。だが、そんなことはできるはずもない。喉に詰まった何かを感じながら、授業が始まっていく。。まただ。いつもこんなことをいつになったらこんな自分から卒業できるのだろうか。いや、無理なんだろうな。一生。考えれば考えるほど、自分が嫌になっていく。どうしてこの一歩が踏み出せないのだろう。

 講義中はずっと上の空だった。全く集中できず、ぼーっとしていたのが大半だったのだろう。なにも印象に残らなかった授業を終えて、移動する。再び友達と合流し、昼食を食べに行く。複雑な気持ちを抱えながら過ごしていた。3限、4限と過ぎていく時間。目の前の景色が目まぐるしく変わる中、頭の中のモヤモヤだけがいつまでも残り続けた。寝れば忘れるだろう。いつもそうだし。しかし、翌日になっても、得体のしれない何かがおもしの様に残っていた。

 こんな自分いらないな。とっとと消えてしまえばいいのに。それか、どこかへ捨てられたらいいのにな。

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嫌いな自分 あいくま @yuuki_zekken

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