たんぽぽ

私は先輩が好き。


最初見たときは、凛々しくて、のみこまれた。

黒くピシッとした袴、胸当てにキッとあてられた弦、白い襟に綺麗な首筋、整った可愛らしい横顔、長いまつ毛に鋭い眼差し。


パ ンッ 「よぉおおおし」


先輩の矢が的に当たった。それと同時に、私も射抜かれた気がした。



「ん〜。なかなか上手くいかないね。あれ……おかしいなぁ。筈がはまんない」

初見とは裏腹に、先輩はおっちょこちょい。少し不器用でのほほんとしている。射場に立つと大きく見えるのに、実際は私より小柄。でも、そこも含めて好き。


「先輩、ボンドつけすぎちゃったんですかね。」

「そうかも。ごめんね。乾くの待とうか……」

今すぐ抱きしめて大丈夫ですっていいたい。頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でたい。そういう思いをグッとこらえる。


「あ!乾くまでちょっとここにいて、待ってて!あ、甘いの大丈夫?」

「大丈夫ですけど……」

返事をする間もなく走る先輩。行っちゃった。頭撫でればよかった。


「おまたせ!お詫びのココア。ホットとアイスと迷ったんだけど……」


可愛い。可愛すぎる。私の右手は先輩の頭の上にあった。


ぽんぽん


「ん!?え?」


「あ、先輩の頭に綿毛があって。先輩、可愛いですね。」


春が来たお知らせのようだった。





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