人ならざぬもの
バブみ道日丿宮組
お題:薄汚いサッカー 制限時間:15分
人と機械が共存する世界に、幸せはあるのだろうか。
「……ぅ」
痛みは和らいできたが、足が動く気配がない。
どこかの線が切れてる。二度と歩けないかもしれない。
それでも、前へ。腕だけをつかって進む。
「や、やめろ!」
声を出す。
その声に振り返るヤンキーたち。
「なんだ、やめてほしいのか?」
ヤンキーの1人が、蹴飛ばしてた頭を踏みつける。
血だらけのそれは、彼女であったもの。
本体は、僕の隣で動きを停止してる。未だに血と特殊体液を吐き続けてる。
「人間様の世界に機械なんざ不要なんだよ」
「か、彼女は半分人間だよ!」
頭の中には人間の脳みそが入ってる。しかもそれだけで機能するようになってるから、ずっと痛みを感じ続けてる。ボクなんかよりもずっとずっと重いダメージを受けてる。
助けなきゃいけない。
「見分けなんかつくかよ。べっぴんさんは疑いしかねぇだろ?」
彼女の頭を蹴飛ばしてくヤンキーたち。
サッカーだ。
彼らにとって、彼女の頭はサッカーボールに過ぎない。
襲われたのも公園でいちゃついてたからというどうでもいい理由。
彼らには人の心がない機械なんじゃないかと思ってしまう。
「まぁ、俺も腕は機械だけどな」
外してつけてみる。
「半分以上機械なんて、ほぼ機械だろ」
それをいうなら、半分人間なんだ。
「やめろ」
サッカー場となってる公園の広場は広い。
彼女の頭があっちにいったり、こっちにいったりと追いきれない。
「なんだよ。張り合いねぇな。もっと動いてみせろよ」
彼女の本体を持つと、腕を引き抜き、足を引っ張る。
「やめろ!」
二度と連結ができなくなってしまう。
「そうだ。その眼だ。もっと本気になれ」
どうしてこいつらはここまで残虐になれるのか。理解できない。
「青き正常なる世界に、機械は不要」
人間崇拝信者だった。
嫌な連中に絡まれてしまった。
なおさら彼女を救わなくていけない。
壊されてしまえば、彼女は修復不可能になる。
「逃げて」
沈黙してた彼女の頭が声を発した。
「彼氏くん逃げちゃう? それでも俺たちはいいけどな!」
そんなことするわけがない。
「お、はやくなったな。いいぞ、こいつにもっと喋らせろ」
彼女の頭をひろうと、でこをつつく。
「ほら、喋りやがれ」
「あと2分で警察がきます」
事務的な回答を彼女が口にする。
「なんだ、通報してたのか」
頭を投げ捨てる。
「いくぞ、お前ら」
ヤンキーたちがさり、しばらくすると警察と救急車がやってきた。
これをきっかけにボクは足を機械化し、彼女は概念と化した。
人ならざぬもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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