第5話 最後の絞り込み


「真ん中よりは右側から聞こえたと思う。」


「遠野さんは?いつもスマホいじってるし」


「授業中も死角見つけて上手くスマホ触ってるよね」


なんとなくギャルだからという印象のせいか、着信音を鳴らしてても納得の人選ではあった。

でも紗良は手を横に振って否定する。


「いや、あの手のタイプはむしろ普段から警戒してるから

むしろ音に関してはすごい気をつけてると思うよ?」


「一度隠した水城さんは?」


「画面見られたくなかったんじゃない?

ホーム画面の写真、彼氏とのツーショットだから。」


なるほど、だとしたら見せたくないのもあり得るのか…。


「休み時間、小山さんと角田さんと普通に音出して動画見てたけど…この辺は?」


「小山さんとか推薦貰えなくなってからヤケだよね、あんなに真面目だったのに。」


「まぁ推薦取り消しがなければリスクは減るよね…」


「そこをいくと真野君もそうか。」


やはり、推薦というリスクは大きい。

この辺りの人たちがリスクマネージメントをしていないとは思えない。


「でもさっき矢田君の席占領して、矢田君と苅田君にアドバイスしてたよ?

本当に推薦ダメだったの?」


「きっと夢を託したんだよ、矢田君確か推薦とったし。」


へー、そうなんだ…でもアドバイスする意味とかやっぱ意味わかんないけど。


「根本君は?」


「ないない、スマホで遊ぶより勉強するタイプじゃん。」


「今時珍しいアナログ人間だよね」


ワハハと笑い合っていると、流石に少しうるさすぎたのか先生に「静かにしなさい」と怒られてしまった。


私たちが話している間に周りもチェックする人数が絞られていた。

音はやはり右側列から聞こえたという話に進んでいたらしく、左2列はチェックから除外された。


そして、紗良が容疑から外れてガッツポーズを作って喜んでいるのが見えた。


これで容疑者は、真野君、八田君、小山さん、角田さん、田中君、飯塚さん、杉田君、根本君、水城さん、遠野さん、苅田君の11人。


それでもまだごねるのは杉田君。

杉田君はダメおしでもう一つ絞る項目を提案した。


「先生、さっきの着信じゃなくて『chat』っていうアプリの通知音です!

『chat』というアプリを入れていないと鳴りません!」


その言葉に該当者がハッとする。


「Lphonの『chat』アプリだけだよね、あの音出るの」


「だから俺聞いたことなかったんだ、入れてねーもん。」


「皆『LINK』使ってるから『chat』使ってる人って少ないんじゃないかな?」


小山さん、八田君、水城さんがその意見に同調した。

先生も本当にいい加減に犯人を探したいらしく、大きなため息を吐くと


「仕方ない…これ以上は時間がないから、該当者はスマホの画面を先生に見せなさい。アプリを確認できた人だけ着信履歴を確認します。」


ということで先生が折れた。

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