なにがあろうと駆け抜けて
シヨゥ
第1話
「終わらないことはない。そう自分に言い聞かせて、その終わりに向かって最短でたどり着くよう突き進むしかないだろうな」
そう言って男は刀についた血を振り払う。
「怖いは怖い。だが怖いからと言って背を向けて逃げ出して、逃げ切れる保証はない。それなら助からなくてもやるだけやった達成感を抱えて俺は倒れたい。あとは」
男は刀を肩に担ぐ。
「倒れるまでにどれだけ足掻けたか。それが俺の人生の成果だと考えているかな。まあとりあえず細かいこと考えずに走れ、斬れ、張れ。倒れなければ奴らを突っ切り追われる立場になろうよ。そんじゃあまあそろそろ駆けようか」
前に倒れるよう男が走り出す。それに従い50人余りが駆けだす。眼前には何十倍とも、何百倍とも見える軍勢が迫っていた。
「死ねや!」
「「応!」」
男の咆哮に応える声が上がった。走る勢いそのままに次々と軍勢に突っ込んでいく。彼らはまるでひとつの鏃のように深く深く突き進んでいった。敵は逃げ惑い、隊列は千々に乱れる。
「行けや! 行けや!」
鏃の先端で男は走り、斬り、張り倒す。すでに刀の刃は欠け、背が伸び、さながら棍棒を振り回す鬼のようだ。男は傷つきはすれども倒れはせず、またひとりまたひとり消えていく仲間を置き去りにしてただ前に進む。そしてあろうことか軍勢を突っ切ってしまった。その後ろに従うのはもはや10人もいない。
「進め!」
男はその刀で進む先を指し示す。すると男を先頭に縦一列に並び、それまでとは打って変わり粛々と戦場を駆け抜けていった。取り残された軍勢は追っ手を差し向ける余力もなくただその場にたたずむだけであった。
なにがあろうと駆け抜けて シヨゥ @Shiyoxu
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