第2話 19歳(私)と14歳(彼)

それから私は学校に行っては摩耗し、家に帰っては彼に癒されるという日々を送っていった。正直学校に行くのが億劫なる事は何度もあったけど自分が行かないと自分の為に時間を使ってくれている真ちゃんの努力が無駄になると思い立ち止まった足を一歩を前へと踏み出した。


 きっとこの頃にはもう彼のことを好きになっていたんだと思う。しかし私はそれに気づく事なく時は過ぎて行った。そしてとある日に私が部屋で転びかけた時の事。咄嗟に彼が私の腕を掴んむも間に合わず二人とも転んでしまった。


「ごめ~ん。ちょっと慌てちゃ…た…」


目を開いた私の瞳には彼の顔が視界一杯に映っていた。目と鼻の先くらいのあと少しで唇が触れ合ってしまいそうなほどに近い距離。直ぐに状況を理解できず思考が停止していたが彼の吐いた息が頬に当たり彼との近さを実感して初めて自分の今の状態を把握した。


すると頬がカアァッと熱くなるのを感じた。頼っていても彼をまだ弟のように認識している部分が強すぎて気付くことのなかった感情をようやく自覚したのだった。


しかし初めは受け入れられなかった。彼が自分にとってかけがえのない存在ではあったが姉としての体裁とでもいうべきか、よくわからない一線が自分の中にがあり、一緒に暮らしている内に好きになってはいけないと無意識の内にストッパーを掛けていたのたしていたのかもしれない。


けれどある日曜日、真ちゃんが女の子と一緒に出掛けているのをその目見してしまった時、嫌でも受け入れざる負えなくなった。


彼が同い年の女の子とフードエリアで一緒に居る所を目撃した時にとてもつもない嫌悪感が全身に走った。同時に一つの言葉がふと湧いた。


『どうして?』


何に対して浮かんだ言葉なのかすら理解していなかったが自分の中で強くその言葉が浮かんできた。まるで彼氏に浮気でもされかのかのような胸の貫く痛みが自身を襲った。


一種の防衛本能として『何かの勘違い』『きっと別人』などと訳の分からない、誰に対してかもわからない言い訳が頭に浮かぶが目の前にいる男性は同居している笠松真悟に間違いなかった。


その後家に帰って来た彼からなるべく普段通りそれとなく聞いてみたところ学校で色々と手伝ってもらった俺にスイーツを奢っていただけで別に付き合っているわけでないことが判明した。


その時は私は『本当の弟みたいに大事に思っていた慎ちゃんがなんか他の女の子に取られたみたいで少し寂しかった』と冗談交じりに言ってのけたが心の内は彼が誰かと付き合っていない事実に心の底から安堵し、涙がこぼれたりその気持ちを悟られないようにするので必死だった。


この出来事によって私は彼の事を異性として好きであるという事実を間違いようがないほど突きつけられた。


それから彼とどう接したらいいのかわからなかったり、心の整理がつかなかったりで少し距離を空けようとした。だが既に依存といっていいレベルで彼にどっぷり浸かってしまっていた私は僅か一日で断念した。そして現在の自分の生活が如何に彼を頼って成立し、彼無しでは成り立たなくなってしまっているかを痛感したのだった。




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